みなさんこんにちは、本サイト・建築LIFEを運営している「たけ」です。
今回は、広島県の有名建築物20選をご紹介します。
広島県には、谷尻誠や三分一博志、安藤忠雄といった有名建築家が設計した建築物が数多く存在しています。
本記事では、それら建築物の特徴をわかりやすく解説しているので、広島県を観光する際には是非本記事を参考にしてみてください。
では早速本題に入ります。
広島県の有名建築物20選【谷尻誠・三分一博志・安藤忠雄など】
1.宮島弥山展望休憩所【三分一博志】

宮島弥山展望休憩所は、世界遺産「厳島神社」を有する宮島の弥山山頂に建つ「展望台」と「休憩所」という機能をあわせもった施設である。
建築の設計は、山口県出身の建築家「三分一博志」が担当。
三分一博志はこの建築で、神聖な山岳信仰の場でもあった弥山における「座」の重要性に着目した。
そこで、2階部分には靴を脱ぎ、座って瀬戸内の景色を眺められる空間を作り出し、座るという行為を引き出せるように、頭近くまで伸びる深い庇を設けている。
この構成によって、宮島という神聖な地域にふさわしい落ち着きのある建築が完成した。
2.おりづるタワー【三分一博志】

おりづるタワーは、広島・原爆ドームの真向かいに建つオフィスビルである。
建築の設計は、山口県出身の建築家「三分一博志」が担当。
建築最大の特徴は、屋上に設けられた展望台で、この空間は原爆ドームを始めとして広島の街並みを一望できる空間になっている。
さらに、この展望台部分の「天井」と「床」にはわずかな勾配が設けられており、この勾配によって展望台へ流れてくる風のスピードが上がり、来場者がより広島の風を感じられるような構成となっている。
三分一博志は「地球の一部となる建築」という一貫したテーマを基に、様々な建築の設計を行っていることで知られているが、おりづるタワーでも「風」という地球の要素をうまく利用することで「地球の一部となる建築」を実現している。
3.Wood Egg お好み焼館【三分一博志】

Wood Egg お好み焼館は、広島を代表する食品メーカー「オタフクソース」の本社ビル兼、お好み焼きに関する展示などを行う施設として建設された建築物である。
建築の設計は、山口県出身の建築家「三分一博志」が担当。
「自然との調和」というクライアントの思想をもとにして、全面が約1万枚の「木製ルーバー」で覆われた構成を作り出した三分一博志。
この構成によって、四季を通じて太陽光を自由自在に調整できる「万葉の森」のような空間を作り出した。
さらにこの建物、実は高さが29mもあり、周囲の建物が比較的低層なことも相まって、その珍しい形態と素材感は一層際立ち、この地域のシンボル的存在にもなっている。
4.三原市芸術文化センター【槇文彦】

三原市芸術文化センターは、広島県三原市に建つ多目的ホールである。
市民公募によってつけられた愛称「ポポロ」として市民に親しまれている。
建築の設計は、日本を代表する建築家「槇文彦」が担当。
この建築は、地域住民によって頻繁に利用されている宮浦公園内に建てられるという事もあり、槇文彦は、公園に遊びに来た人でも気軽に利用できるような劇場とはどうあるべきかを考えたという。
結果的に、公園に面した位置にデッキテラスやホワイエ(たまり場)空間を設けることで、地域住民の居場所となる多目的ホールをつくり上げた。
5.宮島口旅客ターミナル【乾久美子】
宮島口旅客ターミナルは、世界遺産「宮島(厳島)」に向かうフェリーの発着所となるターミナル建築である。
建築の設計は、横浜国立大学大学院(Y-GSA)で教授を務める建築家「乾久美子」が担当。
スギ板で仕上げされた「大屋根」とその大屋根を支える純白の「鉄骨柱」が印象的な空間を作り出している。
そして、大屋根の下は「半屋外空間」となっており、白い柱の間から海や街の風景が覗き込む。
また、大屋根の下には周囲の街にある「まんじゅう屋」や「食べ物屋」の建物の大きさを踏襲した「箱状の空間」を入れ子状に配置しており、街並みの連続をより一層感じられるようなにぎやかな空間が作り出されている。
6.ONOMICHI U2【谷尻誠】
ONOMICHI U2は、日本初のサイクリスト向けに特化した複合商業施設である。
併設されているホテルでは、全室自転車が持ち込み可能で、壁にはサイクルハンガーが設置されているという、サイクリストからするとこれ以上にない充実したホテルとなっている。
建築の設計は、広島県出身の建築家「谷尻誠」が行った。
本施設は、もともと倉庫として利用されていた建物を、構造体はそのまま残しつつ内部を改装することによって商業施設へと転用している。
具体的には、既存の鉄筋コンクリート造の柱の間に、新たな鉄骨造の小さな建物をいくつも作ることで、倉庫の中に尾道特有の小さな街並み風景を再現した建築物となっている。
7.メインダイニング エレテギア【中村拓志】
メインダイニング エレテギアは、広島県尾道市にあるリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」のメインダイニングが入った建物である。
建築の設計は、隈研吾事務所出身の建築家「中村拓志」が担当。
この建築では、ガラス以外の壁を設けないことで周辺の自然豊かな風景を内部でも堪能できるようになっている。
日本は地震が多い国なので、通常は耐震壁などの水平荷重を負担できる構造物を設置しなければならないのだが、この建築では壁がない分の地震力の負担は、柱を「細い2本の鉄骨とそれをつなぐ短い横材」で構成することで水平荷重に対応できる構造体へと変化させている。
さらに、鉄骨やガラス張りの冷たい印象を、屋根の木組みによってやさしい温かみのある空間に変化させているのも魅力的な建築物である。
8.Ribbon Chapel【中村拓志】

Ribbon Chapelは、広島県尾道市にあるリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」の施設として建設された、主に結婚式などを行う礼拝堂建築である。
建築の設計は、隈研吾事務所出身の建築家「中村拓志」が担当。
この建築は、二つの螺旋階段が複雑に絡みあった構成が印象的な外観を形成しているが、中村拓志曰く、これは結び合う行為を空間化したものであるそうだ。
このチャペルでは、祭壇への経路が、新郎と新婦がそれぞれ別の階段を上っていき、頂上で出会う構成となっている。
こんな魅力的な空間で結婚式を挙げられたら幸せだろう。
9.広島平和記念資料館【丹下健三】
広島平和記念資料館は、1945年8月6日に世界で初めて原子爆弾による被害を受けた広島県広島市に、世界恒久平和の実現を目的とした建設された資料館である。
建築の設計は日本建築界の巨匠「丹下健三」が行い、彼の代表作としても名高い建築物となっている。
本施設が建つ広島平和記念公園内には他にも、国際会議場や記念碑など様々な建築物が建てられており、それらを総称して「広島ピースセンター」ともいう。
広島ピースセンター内にある建物や慰霊碑などは、隣接する原爆ドームへとつながる景観軸に沿って配置されている。
そして資料館では、景観軸に沿った配置を最大限に生かすために、地上部分を壁のない柱だけでできた「ピロティ空間」とすることで、資料館越しに原爆ドームが望める構成になっている。
建築詳細ページ

10.世界平和記念聖堂【村野藤吾】

世界平和記念聖堂は、被爆地である広島県広島市に「平和のシンボル」として建設されたカトリック教会の施設である。
建築の設計は、昭和期を代表する建築家「村野藤吾」が担当。
建築としては、三廊式バシリカの教会堂となっており、古代ローマを思わせる荘厳な空間構成が印象的だが、細部を見てみると「枯山水」「鳥居」などといった、日本的な要素が取り込まれている。
また、この建築は建設されるまでの経緯が面白い。
実は、この教会を建設するにあたっては日本最大規模のコンペが行われ、そこには丹下健三や前川國男、菊竹清訓といった名だたる建築家たちが参加し、村野藤吾はその審査員を担当していた。
しかし、コンペは「1等なし」という結果に終わり、その後、審査員であった村野藤吾自身がこの建築を設計することになったのである。(もちろん批判などがあり、設計料は受け取らなかったそう)
コンペの詳しい経緯については、Wikipediaに掲載されている。
11.広島市民球場【仙田満】
広島市民球場は「広島東洋カープ」が本拠地として使用している野球場である。
正式名称は、「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」とやや長いが、略称は「マツダスタジアム」として親しまれている。
建築の設計は、児童向け施設を数多く手がける建築家「仙田満」が担当。
建築としては、日本では珍しい「左右非対称型のフィールド」を採用。(メジャーでは一般的)
これは「観客が観戦しやすい座席配置」や「多様な観戦シート」を作り出すためにとられた構成であり、仙田満らしく、人に寄り添った建築となっているわけである。
12.広島市現代美術館【黒川紀章】

広島市現代美術館は、国内外の現代美術作品を数多く取り扱う、広島県の緑豊かな比治山公園内に建つ公立美術館である。
建築の設計は、国立新美術館や名古屋市美術館など、日本各地で数多くの芸術文化施設を手掛ける「黒川紀章」が担当。
本建築最大の特徴は「過去と現在」「日本と西欧」という対立する要素の融合がなされていることである。
過去と現在の融合としては、外壁が「自然石→磨き石→タイル→アルミ」と、使われている素材が過去から現代のものへと移り変わっている。
一方で、日本と西欧の融合に関しては、屋根は日本の伝統的な切妻屋根による構成であるのに対して、柱や円形の広場は古代ヨーロッパのような形式を採用している。
13.広島西消防署【山本理顕】

広島西消防署は、従来の消防署機能だけでなく「多目的体育訓練場」や「消防音楽隊の訓練場」など、様々な機能を複合した消防所施設である。
建築は、数多くの学校施設を手掛けることで知られる建築家「山本理顕」が設計を担当。
この施設の面白い点は、消防署を徹底的に街に開いている点である。
実際、この施設はいつでもだれでも訪れることができ、消防隊員が訓練している様子を見学することができるようになっている。
さらに、そのような開放的な施設であることを加味して、建築も建物全体が「ガラスのルーバー」によって覆われており、内部のアクティビティが外部からでも見えるよな開放的な構成となっている。
14.道の駅びんご府中【シーラカンスK&H】

道の駅びんご府中は、広島県府中市の市街地にあるレストラン・交流スペース・アンテナショップなどからなる道の駅だ。
建築は、東京大学原広司研究室に所属していた工藤和美と堀場弘による建築家ユニット「シーラカンスK&H」が設計を担当。
本施設は、鉄骨柱とラチストラスによる「黒いフレーム」と「木の屋根」によって全体像が構成されているが、そこに屋内空間と半屋外空間を入り混じらせることで、街に開かれた道の駅を作り出している。
またこの建築の面白いところは、空間ボリューム的には分棟型にしているにもかかわらず、黒いフレーム自体はどこかしらで連続しており、一体的な構造になっているという点である。
上の写真でも、建物本体や屋根は離れているのに、黒いフレームだけがつながっているのが見て取れるだろう。
15.新白島駅【C+A】
新白島駅は「JR西日本・山陽新幹線」と「広島高速交通・アストラムライン」が交わる結節点に建設された駅舎である。
建築は、東京大学原広司研究室に所属していた小嶋一浩と赤松佳珠子による設計事務所「C+A(CAt)」が設計を担当。
建築は、地上と地下が混在したプラットフォーム・コンコース空間を、白く塗装された円筒型のシェルが包み込むうような全体構成となっており、駅舎とは思えないようなシンボリックな外観を形成している。
また、円筒型のシェルには至る所に円形のトップライトが設けられており、内部空間に明るい光を取り入れると共に、美術館のような魅力的な内部空間を作り出している。
横浜に横須賀美術館という山本理顕が設計した美術館があるが、真白島駅はこの美術館に似ている。
16.トレッタみよし【ナフ・アーキテクト&デザイン】

- 設計:ナフ・アーキテクト&デザイン
- 住所:広島県三次市東酒屋町
- 竣工:2015年
- 用途:物品販売業を営む店舗
- URL:公式ページ
トレッタみよしは、広島県三次市にある直販所・飲食施設・パン工房など複数の機能が複合された、交流施設である。
本建築は、中薗哲也+中佐昭夫による建築家ユニット「ナフ・アーキテクト&デザイン」が設計を担当。
枝葉が重なり合うイメージで組み合わされた「木の大屋根」と、鉛直力と水平力を両方負担する「スギ丸太材を用いた組柱」によって、親しみやすい温もりのある空間が形成されている。
このスギ丸太を用いた組柱は「木花」と名付けられており、普通の1本の柱にはない、思わず触ってみたくなるような親しみやすい構造材となっている。
17.ガンツウ【堀部安嗣】

- 設計:堀部安嗣建築設計事務所
- 住所:広島県尾道市浦崎町
- 竣工:2017年
- 用途:客船
- URL:公式ページ
ガンツウとは本来、瀬戸内海でとれる小さなイシガニの呼び名である。
しかし、ここで言うガンツウは、尾道を拠点に宿泊型クルーズを行っている「客船」のことを指す。イシガニのように親しまれる客船になってほしいという願いを込めてこの名称が与えられたそうだ。
ガンツウは客船であるが、設計を行ったのは京都芸術大学で教授を務める建築家「堀部安嗣」である。
堀部安嗣は「瀬戸内海との調和」を最優先事項としてこの客船を設計している。
具体的には、舟の上部に瀬戸内海沿岸に広がる街並みと調和するような「切妻屋根」を乗っけたり、船体をシルバーで塗装することで周囲の景観に溶け込むようにしたりと、素材や形態による瀬戸内海との調和を試みている。
18.千光寺頂上展望台【AS】

- 設計:AS
- 住所:広島県尾道市東土堂町
- 竣工:2022年
- 用途:展望台・ロープウェイ駅舎
- URL:建築詳細ページ
千光寺頂上展望台は、広島県尾道市にある千光寺山の山頂に建つ展望台施設である。
本建築は、青木淳と品川雅俊による建築事務所「AS」が設計を担当。
建築全体は、全長63mの直線状の「展望デッキ」と、きれいな曲線を描く「螺旋階段」、展望デッキの端に設けられた「エレベーター」という3つの要素で構成されており、美しい尾道の街並みを眺めながら魅力的な空間体験ができる施設となっている。
千光寺の山頂へは、尾道特有の坂道を登ってくるか、バリアフリー化されたロープウェイで登ってくるかの2択なのだが、この展望デッキではその選択肢を「螺旋階段」と「エレベーター」という2つの要素に落とし込み、千光寺の体験を写し取ったかのような空間体験を作り出している。
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19.尾道市立美術館【安藤忠雄】

尾道市立美術館は、尾道にゆかりのある画家の作品を中心に収蔵・展示等を行う公立美術館である。
建築の設計は、世界的建築家「安藤忠雄」が務めた。
本施設の開館は1980年だが、2003年に大規模なリニューアルを行い、その際には既存の日本伝統様式を持つ「本館」を改修しつつ、その前面に新たに「新館」を建設する形をとっている。
安藤忠雄によって新設された「新館」は、ガラスのファサードの中にコンクリートの展示室を収めた安藤忠雄らしい構成となっているが、建物上部には下から見ると切妻屋根のようにも見える庇が設置されており、周辺環境や既存棟との調和を図っていることが読み取れる。
20.ホロコースト記念館【前田圭介】

ホロコースト記念館は、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人などに対して行った大量虐殺)に関する資料の収蔵・展示等を目的として、2007年広島県福山市に建設された記念館である。
ホロコースト記念館初代館長である大塚信が、ホロコーストの生還者オットー・フランクに偶然出会ったことをきっかけに設立された博物館だ。
建築の設計は、広島県出身の建築家「前田圭介」が担当。
建築としては、閉鎖的な鋼板の壁の中に収まる展示室と、中のアクティビティが表出する開放的なガラスのファサードが絶妙な対比となっており、つい中に入ってみたくなるような求心力のある建築物となっている。
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