安藤忠雄とは?
- 1941 大阪市に生まれる
- 1969 安藤忠雄建築研究所設立
- 1976 住吉の長屋で日本建築学会賞受賞
- 1989 ハーバード大学客員教授
- 1997 東京大学工学部建築学科教授
建築に関わる者であれば、知らない人はいないであろう世界的建築家・安藤忠雄。
元プロボクサー、独学で建築を学んだこと、関西人らしい性格など、人間としても魅力的な経歴の持ち主である。
代表作としては「住吉の長屋」「光の教会」「表参道ヒルズ」などが挙げられ、コンクリート建築の名手としても名高い。
今回は、そんな安藤忠雄の建築作品20選をご紹介したいと思います。
安藤忠雄の建築作品20選【代表作~出世作まで】
1.住吉の長屋【大阪府】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:大阪市住吉区
- 竣工:1976年2月
- 用途:個人住宅
- URL:建築詳細ページ
安藤忠雄さんのデビュー作にして代表作である住吉の長屋。この住宅で初めて日本建築学会賞作品賞を受賞した。
建築の最大の特徴は、コンクリート打ち放しによるクールな外観である。
さらに外部空間を通らないと建物内の移動ができない構成は批判も多いが、それを犠牲にしてでも中庭を設けるという意思の力を感じる建築である。
そのため、この建築は構成を見るだけでも、美しいコンクリートや前例のない空間構成など安藤さんの建築への考え方、人となりがわかる建築になっている。
建築詳細ページ

2.光の教会【大阪府】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:大阪府茨木市春日丘
- 竣工:1989年4月
- 用途:教会
- URL:建築詳細ページ
光の教会は「究極のローコスト建築」といわれるほど低予算でつくられている。
最大の特徴は、正面壁にあけられた十字型の窓であり、ここから太陽光が入り光の十字架が浮かび上がるようになっている。
低予算であるからこそ、無駄のない洗練された空間がつくられている。
建築詳細ページ

3.李禹煥美術館【香川県】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:香川県香川郡直島
- 竣工:2010年6月
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
李禹煥美術館は、香川県の「直島」に建つ美術館である。
李禹煥は1936年に韓国で生まれた彫刻家で、1960~70年代にかけて日本で流行した「もの派」という現代美術の先駆者として知られる。
アートの島として知られる「直島」に建つ美術館で、地中に埋め込まれた構成、水平垂直の伸び、アプローチ空間の演出などが魅力的な建築である。
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4.秋田県立美術館【秋田県】
- 設計:安藤忠雄
- 竣工:2012年
- 用途:美術館
- 住所:秋田県秋田市中通1
- URL:建築詳細ページ
秋田県立美術館は、秋田市の千秋公園内にある旧秋田県立美術館(平野政吉美術館)を前身とする、公立美術館である。
本施設は、旧秋田県立美術館のある「千秋公園」と対面する位置に建てられており、2階のラウンジ空間からは「水庭」越しに旧美術館が望める空間構成となっている。
また、この建築最大の特徴でもある「水庭のあるラウンジ空間」は、水庭に面する開口部の高さを極限まで低くすることによって、視覚情報を制限し、対面の千秋公園の自然や旧美術館をより身近に感じられるようになっている。
安藤忠雄の空間づくりのうまさが際立つ建築作品である。
建築詳細ページ

5.21_21 DESIGN SIGHT【東京都】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:東京都港区赤坂
- 竣工:2007年2月
- 用途:デザイン文化交流施設
- URL:建築詳細ページ
この建築は、港区のオフィスビル街に建つ、デザイン専門施設である。
用途としてはデザインに関する企画展、リサーチ、ものづくりを複合的に行う場である。
特徴的な屋根は、1枚の鉄板によって構成されており、この鉄板屋根のモチーフは「1枚の布」である。
布が人間のフォルムに合わせて形を変え服となる。このように、1枚の鉄板がデザイン空間を包み込み、個性をつくっていく。このようなプロセスで設計されたのが 21_21 DESIGN SIGHT である。
建築詳細ページ

6.司馬遼太郎記念館【大阪府】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:大阪府東大阪市下小阪
- 竣工:2001年10月
- 用途:展示施設
- URL:公式ページ
この建物では、司馬遼太郎氏の頭の中を11メートルの高さの本棚によって表現している。
外観は安藤さんらしいコンクリート打ちっぱなしのかっこいいものでありますが、内部に入ると木材を使った優しい雰囲気になるという両者の対比がとても魅力的である。
また、司馬遼太郎さんが晩年まで使用していた書斎も庭から見学することができる。
このように司馬遼太郎さんの知識や経験が詰まっているのが、この司馬遼太郎記念館である。
7.兵庫県立木の殿堂【兵庫県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:兵庫県香美町村岡区和池
- 竣工:1994年4月
- 用途:展示施設
- URL:公式ページ
安藤さんの作品ではあまり見られない、外観に木材をふんだんに使った建築である。
日本伝統の木の建築の文化を海外の方にも知ってもらうという目的もあり、森の中にいるような建築を目指したそう。
しかし、私が注目したのは建物の形状である。木造建築とは思えないような曲線の外、これは安藤さんのコンクリート建築の形状に似ている。
そう考えるとこの建築は、日本伝統の木造建築と安藤さんのコンクリート建築が融合された唯一無二の建築である。
8.こども本の森中之島【大阪府】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:大阪府大阪市北区中之島
- 竣工:2019年12月
- 用途:図書館
- URL:公式ページ
この建築では、壁全体が本棚で覆われ,その中で子どもたちが様々な形で本と巡り合える、迷宮のような空間になっている。
外観は安藤建築らしいRC造であるが、内部は木を多く使用している。この内外の対比の構成は司馬遼太郎記念館の構成と似ている。
司馬遼太郎記念館が大人のための空間であるのに対して、こども本の森は子供のための空間になっているところが違いであろう。
9.兵庫県立美術館【兵庫県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:兵庫県神戸市中央区
- 竣工:2001年9月
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
この建築は石壁の基壇の上に3つの箱が乗ったような構成となっている。
この箱はマトリョーシカのようにガラスの箱の中にコンクリートの箱が収まっている。
コンクリートの中は展示室、コンクリートとガラスの間が回廊となり、外部空間と内部空間を緩やかに繋ぐ役割を回廊が果たしている。
また上記の2枚目の写真は、螺旋階段の円形テラスである。地下1階から地上2階まで、外部空間として美術館をつないでいる。
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10.真駒内滝野霊園頭大仏【北海道】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:北海道札幌市南区滝野
- 竣工:2015年12月
- 用途:礼拝施設
- URL:建築詳細ページ
真駒内滝野霊園頭大仏は、北海道札幌市「真駒内滝野霊園」内に建つ礼拝施設である。
高さ13.5mある大仏様が、コンクリートでできた「人口の丘」に覆いかぶされ、頭の先端だけが丘から飛び出している様子が特徴的な建築物となっている。
また、大仏様まで至るアプローチ空間が魅力的で、前半は外に開けた広大な道を歩いていき、途中にある水庭を回り込み、最後に約40mに及ぶ薄暗いトンネルの道を抜けると大仏様が姿を見せるという壮大な構成になっている。
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11.熊本駅【熊本県】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:熊本県熊本市西区春日
- 竣工:2019年9月
- 用途:駅舎
- URL:建築詳細ページ
かつて夏目漱石が発した「熊本は森の都だ」という言葉に影響を受け、ホーム上の屋根には合計3,000㎥にもなる木材が利用されている。
また、熊本駅の特徴的なファサードは、熊本城の石垣をモチーフにしており、きれいな曲線によって人々を迎え入れている。
さらに、熊本駅の駅前広場は東口を西沢立衛、西口を佐藤光彦が設計している。
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12.表参道ヒルズ【安藤忠雄】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:東京都渋谷区神宮前
- 竣工:2006年1月
- 用途:店舗 共同住宅
- URL:建築詳細ページ
表参道ヒルズは、日本における鉄筋コンクリート造集合住宅の先駆け的存在「同潤会青山アパート」が元々建っていた敷地に建つ、商業施設と集合住宅を併設した複合施設である。
建築全体は、表参道の象徴的存在である「ケヤキ並木」と調和を成すために、ボリュームの大半を地下に埋没し、地上部の高さをケヤキ並木と同程度に合わせている。
また、内部には、周囲にスパイラルスロープが設けられた6層吹き抜けの大空間が展開されており、このスロープの傾斜は表参道の斜路とほぼ同じ角度になっている。
つまり、施設内部に表参道の街並みを引き込んでいるのである。
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13.長良川国際会議場【岐阜県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:岐阜県岐阜市長良福光
- 竣工:1995年
- 用途:国際会議場・多目的ホール
- URL:公式ページ
長良川国際会議場は、国際会議場・多目的ホール・市民ギャラリーなど複数の機能を内包する、岐阜県岐阜市に建つ複合施設である。
建築は、国際会議場が入る卵型のボリュームを、その他の機能が入る屋上が大階段になったボリュームに貫入させたかのような構成となっており、それらがコンクリートで仕上げられ象徴的な外観を作り出している。
さらに、屋上の大階段を上った先には、4つのキューブ型のトップライトが設置されており、その下には4層吹き抜けとなった市民ギャラリーが存在し、光が降り注ぐ豊かな大空間が形成されている。
14.光の美術館【山梨県】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:山梨県北杜市長坂町
- 竣工:2011年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
光の美術館は、山梨県の芸術文化複合施設「清春芸術村」の一施設として、敷地内に建てられた美術館建築物である。
スペインの抽象画家で、ピカソの後継者とも呼ばれた「アントニ・クラーベ」の作品を常設展示している。
コンクリートでできたシンプルなボックス型の建築だが、頂点の1つが切断され、そこにガラスがはめ込まれている。そして、内部空間には照明が一切ない。開口部から入る自然光だけで空間を照らしているのである。
安藤忠雄は、代表作「光の教会」で魅力的な光の空間を演出していたが、ここでも安藤忠雄の光使いの巧みさが存分に発揮されている。
15.竜王駅【山梨県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:山梨県甲斐市竜王新町
- 竣工:2008年
- 用途:駅舎・自由通路
- URL:公式ページ
竜王駅は、山梨県甲斐市竜王新町にあるJR東日本の駅舎建築物である。
建築としては、線路によって切断された南北の街を「自由通路」によって再接続しつつ、その通路の両面をガラス張りにすることによって、周囲に広がる富士山・八ヶ岳・南アルプス連山といった豊かな景観を眺めることができる魅力的な空間を形成している。
また。駅前広場には、円や三角形などの穴が開けられた大屋根がバスロータリーなど全体を覆っており、市民が集う公共空間を形成している。
16.国際芸術センター青森【青森県】

- 設計:安藤忠雄
- 住所:青森県青森市大字合子沢字
- 竣工:2001年
- 用途:集会場 旅館 作業場
- URL:公式ページ
国際芸術センター青森は、アート作品の滞在制作・展覧会・教育普及などを目的として、青森県青森市・八甲田山の麓に建てられた芸術センターである。
本施設は、馬蹄型の「中央棟」と、直線型の「宿泊棟・アトリエ棟」という計3つの棟で構成されており、それらの幾何学的形態を組み合わせるといった構成は、安藤忠雄の真骨頂でもある。
また、安藤忠雄はこの建築のテーマとして「見えない建築」というのを掲げており、それぞれの棟は可能な限り高さを抑えることで、周辺の緑豊かな景観を破壊せずに、自然と建築の共生を実現している。
17.ランゲン美術館【ドイツ】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:ドイツ ノイス
- 竣工:2004年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
ランゲン美術館は、ドイツ・デュッセルドルフ郊外の森の中に建つ現代美術館である。
本建築では、ガラスの箱の中にコンクリートの箱が入った「入れ子構造」が採用されており、2つの箱に挟まれてできた隙間空間は、日本の縁側のような内外を緩やかに繋ぐ緩衝領域となっている。
安藤忠雄はこの建築で「森の中に息づく美術館」というコンセプトを掲げているのだが、この緩衝領域こそが森と美術館を繋げる役割を果たしているのである。
ちなみに、安藤忠雄は日本でも「兵庫県立美術館」において、ガラスとコンクリートによる入れ構造の建築物を設計しているため、ランゲン美術館との違いなどにも注目してみると面白いかもしれない。
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18.地中美術館【香川県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:香川県香川郡直島町
- 竣工:2004年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
地中美術館は、アートの島として知られる瀬戸内海に浮かぶ小島「直島」に建つ美術館建築物である。
コンセプト「自然に埋没する建築」
このコンセプトを基に、もともと敷地に存在していた豊かな自然環境や風景を破壊しないように、安藤忠雄は建築の全ヴォリュームを地中に埋め込むという、とんでもない計画を立てた。
しかし、この大胆な設計によって、瀬戸内の美しい風景や環境はそのままに保存しつつ、地下空間にはその環境と一体となった魅力的な美術館が生まれている。
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19.ANDO MUSEUM【香川県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:香川県香川郡直島町
- 竣工:2013年
- 用途:ギャラリー・オフィス
- URL:建築詳細ページ
ANDO MUSEUMは、アートの島として有名な瀬戸内海の小島「直島」に建つ美術館建築物である。
「安藤忠雄のエッセンスを詰め込んだ美術館」
敷地周辺には、木造の古民家がたくさん立ち並んでおり、ANDO MUSEUM自体も外観だけ見るとそれら古民家に溶け込むような木造建築物となっている。
しかし、実際に内部に入ってみると、安藤忠雄らしいコンクリートに埋め尽くされた空間が広がっており、内外の想定外性が魅力的な美術館となっている。
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20.ヴァレーギャラリー【香川県】
- 設計:安藤忠雄
- 住所:香川県香川郡直島町
- 竣工:2020年
- 用途:ギャラリー
- URL:建築詳細ページ
ヴァレーギャラリーは、瀬戸内海に浮かぶアートの島「直島」に2022年に開館したギャラリーである。
コンセプト「建築の原点に立ち返る光」
このコンセプトを基に、若き日の安藤忠雄に絶大な影響を与えたという「ローマ・パンテオン」を彷彿とさせる、魅力的な光の空間が直島に誕生した。
ちなみに、ヴァレーギャラリー内や外の庭・池などに設置されているミラーボールは、芸術家・草間彌生による「ナルシスの庭」というアート作品である。
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今回はこれで以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。