黒川紀章とは?
- 1934年 愛知県海部郡蟹江町にて生まれる
- 1953年 東海高等学校卒業
- 1957年 京都大学工学部建築学科卒業
- 1957年 東京大学大学院建築学専攻修士課程進学
- 在学中 黒川紀章建築都市設計事務所を設立
- 1959年 メタボリズムを提唱
- 1960年 世界デザイン会議に参加
- 2007年 東京都知事選挙、参院選に立候補
- 2007年 参院選2か月後に死去
建築家の黒川紀章さんは、日本の近代建築の基礎を作り上げた丹下健三の研究室に進学し、建築を学んだ一人であり、美術館や博物館といった建築を多く手がけている。
また、建築家の菊竹清則さん、槇文彦さんらとともに「メタボリズム・グループ」と言うものを結成し、人間の新陳代謝のように、増改築が可能な建築を追及された。
そんな建築家黒川紀章の建築作品10選をご紹介します!!
【代表作】建築家黒川紀章の建築作品10選
1.中銀カプセルタワービル


- 所在地:東京都中央区銀座
- 竣工 :1972年
- 用途 :集合住宅
- 構造 :鉄骨鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
この建築は、「メタボリズム」という建築の在り方を具現化したような作品である。
メタボリズムとは、日本語で新陳代謝を意味することから、人間が新陳代謝を繰り返して成長していくように、建築も増改築が簡単に行えるようにすることで、成長する建築を目指したものである。
このメタボリズムの考えをもとに、一つ一つのカプセルが交換可能な仕組みとして、本来なら25年に一度交換していく予定であった。
しかし、一つのみを交換することができないことや、費用などの面もあって50年ほど一度も交換されることなく、時期は未定だが解体されることが決定した。カプセルの一部は保存され、展示されるようだ。
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2.国立新美術館


- 所在地:東京都港区
- 竣工 :2006年
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄骨造,一部鉄骨鉄筋コンクリート造
この美術館のコンセプトは「森の中の美術館」である。
周辺の緑豊かな環境を生かして、館内にいてもガラスのカーテンウォールによって自然光や緑の景色を体感することができる。
美術館建築では、自然光を取り入れてしまうと作品が傷んでしまうことから、外とは隔絶された空間になりやすいが、ここでは、展示空間とオープンエリアを明確に分けることによって、自然光のあふれる美術館になっている。
また、二枚目の写真の円錐形のデザインの形態は、黒川紀章さんが好んだ形であり、上部ではレストラン・カフェなどが設置されている。
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3.広島市現代美術館


- 所在地:広島市南区比治山公園
- 竣工 :1988年
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄筋コンクリート造 一部鉄骨鉄筋コンクリート造
この建築の特徴は、過去と現在、日本と西欧の融合がなされていることである。
過去と現在の融合としては、外壁が「自然石→磨き石→タイル→アルミ」と、使われている素材が過去から現代のものへと移り変わっている。
日本と西欧の融合としては、屋根は日本の伝統的な切妻屋根による構成であるのに対して、柱や円形の広場は古代ヨーロッパのような形式になっている。
上の写真を見ると、屋根に一カ所切り込みが入っていることがわかるが、これは爆心地の方向を示している。
4.クアラルンプール国際空港


- 所在地:マレーシア国セランゴール州セパン地区
- 竣工 :1998年
- 用途 :空港
- 構造 :鉄筋コンクリート造,屋根部分鉄骨造
この空港の設計コンセプトは「森の中の空港、空港の中の森」である。
その言葉の通り空港の周りはプランテーションされたアブラヤシの森に囲まれ、さらに空港の中央にも森がつくられている。
屋根は、イスラム教の建築に見られる連続ドームを幾何学化してつくられたHPシェル構造となっている。これによって、マレーシアの伝統とハイテク技術の融合がなされている。
また、このHPシェル構造の屋根を支える柱は、国立新美術館でも見られ、黒川さんが好んだ円錐形になっているが、これは構造的にもとても合理的な形態となっている。
5.寒河江市役所庁舎


- 所在地:山形県寒河江市
- 竣工 :1967年
- 用途 :市役所
- 構造 :鉄筋コンクリート造
この建築のコンセプトは、母の胎内のような空間、すなわち「建築=母体」の関係である。
このコンセプトが顕著に現れているのが、建物中央の3層吹き抜けの空間である。この吹き抜けが母体の中のような空間を作り出している。
さらにこの建築には、「太陽の搭」をつくった岡本太郎による作品がいくつも散りばめられている。その中でも最も特徴的なのが、写真の2枚目にも映っている、3層吹き抜けの中央に配置してある「生誕」という名の照明である。
6.豊田スタジアム


- 所在地:愛知県豊田市千石町
- 竣工 :2001年
- 用途 :サッカー場
- 構造 :鉄骨造,鉄筋コンクリート造
このスタジアムの最大の特徴は、吊り構造による有機的な屋根と、屋根中央が開閉可能になっていることである。これによって、芝生に日光を当てられるようにしつつ、雨天でも試合ができる構造となっている。
また、スタジアムまで向かう豊田大橋も黒川紀章さんによる設計であり、時報に合わせて豊田大橋と豊田スタジアムが連動して碧色に染まる。
開閉式の屋根は現在、改修時にコストなどの問題から、開きっぱなしにする固定式へと変更されてしまったが、豊田スタジアムは現在でも試合会場などとして使用されている。
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7.ガスプロム・アリーナ


- 所在地:ロシア連邦レニングラード州サンクトペテルブルグ
- 竣工 :2017年
- 用途 :スタジアム
- 構造 :鉄骨造 鉄筋コンクリート造
この建築は、2017年に竣工したロシアのスタジアムである。吊り構造、開閉式屋根による構成は、一つ前に紹介した豊田スタジアムとほぼ同じである。
2007年に亡くなった黒川紀章の遺作といえる作品だ。
本来2008年に完成する予定だったが工事が大幅に遅延し、2017年にようやく完成した。
スタジアムの規模としては6万8千人程収容可能で、豊田スタジアムの4万5千人と比べると、ひと回り大きいスタジアムとなっている。
8.名古屋市美術館


- 所在地:愛知県名古屋市中区
- 竣工 :1987年
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄筋コンクリート造 一部鉄骨鉄筋コンクリート造
この建築の特徴は、前に紹介した広島市現代美術館にも見られた、過去と未来、日本と西欧の融合がなされている点である。
さらに、この建築は高さが周辺の樹木よりも低くなっているため、周辺環境と調和した建築となっている。
また、高さを抑えるために地下空間を増やしたことにより、サンクガーデンと呼ばれる、地下に自然光を取り入れるための沈み込んだ庭も設けられている。
また、アプローチ部分に設けられている格子構造は、外部空間と内部空間を緩やかに繋ぐ緩衝的な役割を果たしている。
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9.埼玉県立近代美術館

- 所在地:埼玉県浦和市
- 竣工 :1982年
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄筋コンクリート造 一部鉄骨鉄筋コンクリート造
この建築は、先ほど紹介した「名古屋市美術館」に構成が似ている。
共通している点として次のような点が挙げられる。
- 高さを15mと低く抑えることで周辺の並木道の景観を壊さないよう配慮している
- アプローチに格子構造の外部と内部の緩衝空間が存在する
- 公園と斜めにつながるサンクガーデンを設けている
また、この美術館は、黒川紀章が今後たくさん手掛けることとなる、美術館建築の最初の事例にもなっている。
10.福井県立恐竜博物館


- 所在地:福井県勝山市村岡町
- 竣工 :2000年
- 用途 :博物館
- 構造 :鉄骨鉄筋コンクリート造,鉄筋コンクリート造
この建築の特徴は、なんといっても存在感のある回転楕円体の大展示空間である。これは、恐竜の卵をイメージしたのかなと勝手に思っています。
しかし、この大胆な形態に注目が集まりやすいですが、この博物館の最大の魅力は、大展示空間までのアプローチである。
2枚目の写真にある、33mにも及ぶエスカレーターによって人々を大展示空間へ誘導している。この空間を通ることで、好奇心をさらに膨らませる構成となっている。
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今回はこれで以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。