広島平和記念資料館とは?

広島平和記念資料館は、1945年8月6日に世界で初めて原子爆弾による被害を受けた広島に建つ、世界恒久平和の実現を目的とした施設である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家丹下健三。
原爆ドーム・慰霊碑・資料館をひとつの軸線上に沿って配置し、その一連の流れを視覚化するために、資料館に大きなピロティを設け視線を通している。
また、広島平和記念資料館は2006年に重要文化財に指定され話題となった。
そんな、広島平和記念資料館の建築的特徴をご紹介します!!
丹下健三とは?
- 1913 大阪府堺市に生まれる
- 1938 東京帝国大学工学部建築科卒業
- 1938 前川國男建築事務所入所
- 1941 東京帝国大学大学院入学
- 1946「丹下研究室」を作る
- 1951 CIAM参加
- 1987 プリツカー賞受賞
- 2005 3月22日死去(91歳)
丹下健三は、日本のモダニズム建築の基礎を作り上げた人物である。
さらに、「世界のタンゲ」とも呼ばれていたように、世界的にも活躍された建築家であった。
代表作としては、「東京カテドラル」や「国立代々木競技場」などが挙げられ、大規模で国家的な建築を多く手がけたことでも知られている。
建築の特徴

広島平和記念資料館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 爆心地につくられた「広島ピースセンター」
- 景観軸に沿った配置
- 視線を通すピロティ
- 「社会的人間の尺度」用いたスケール
- 本館と東館による構成
- テーマに沿った展示空間
爆心地につくられた「広島ピースセンター」

原子爆弾の爆心地は、川と大きな道路に囲われ、三角形の形状をした中島地区という場所であった。
上の写真は、被爆前の中島地区の模型であるが、建物がたくさん並んだ繁華街であったことがわかる。
この地域一帯には現在、広島平和記念資料館や慰霊碑、平和記念公園などが存在し、これらは総称して「広島ピースセンター」と呼ばれている。
景観軸に沿った配置

広島ピースセンターを構成する建物や慰霊碑などは、ある景観軸に沿って配置されている。
その景観軸とは、幅が100mに及ぶ平和大通りに直行し、原爆ドームを通る軸線のこと。
この軸線上に、資料館、慰霊碑、原爆ドームを順に配置している。
視線を通すピロティ

資料館から原爆ドームまで伸びる景観軸に沿った配置を視覚化するために、資料館の下部分は大きなピロティ空間となっている。
上の写真を見ると、一番奥に原爆ドームが見え、ピロティ空間が歴史への門のようになっていることがわかる。
「社会的人間の尺度」用いたスケール

広島平和記念資料館は、「社会的人間の尺度(≒神の尺度)」を基本としているため、スケール感が大きい建築となっている。
そのためピロティの高さも約5m程とかなり大きなスケールとなっている。
この「人間の尺度」を超えた大きな建築には、、、
「戦後当時の焦土化した都市をよみがえらせるには小さな、力のない建築ではダメだ」
という丹下健三の強い思いが込められているそう。
本館と東館による構成

photo by John feather /CC 表示-継承 2.5

photo by Taisyo /C 表示-継承 3.0
広島平和記念資料館は、本館と東館からなり、この二つの館は渡り廊下で結ばれている。
また、西側には東館と形状がそっくりな「広島国際会議場」が存在し、この会議場も含めた3つの棟が一体となった建築として設計されている。
被爆の惨状を記録した展示空間


資料館では、被爆者の遺品や被爆の惨状をあらわした写真・資料などを収集すると同時に、その悲惨な過去を風化させないために、展示なども行っている。
また、被爆者による被爆体験講話会なども開催。
本館では、細長い建物形状を生かし、「8月6日の被害」「放射線による被害」「生きる」などのテーマに沿って順番に展示がなされている。
建築概要
- 所在地:広島市中区中島町
- 竣工 :1955年
- 用途 :展示室、ギャラリーなど
- 構造 :鉄筋コンクリート造
- 階数 :地上2階 一部中3階(本館)
- 高さ :16.8m
- 設計 :丹下健三
- 施工 :大林組
施設概要
- Tel :082-241-4004
- 開館時間:8:30-19:00(月により多少前後)
- 休館日 :12月30日及び31日など
- アクセス:JR広島駅から路線バスで約20分
- URL :広島平和記念資料館 (hpmmuseum.jp)
- 料金 :
大人 | 高校生 | 中学生以下 |
200円 | 100円 | 無料 |
最後に・・・
以上が広島平和記念資料館の特徴でした。
世界で始めて原子爆弾による被害が生じた過去を持つ広島に、最もふさわしい配置・構成をした建築であったと思います。
広島ピースセンターを訪れる際は、景観軸などを意識して観光してみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。