村野藤吾とは?

- 1891 佐賀県に生まれる
- 1910 小倉工業学校(現小倉工業高校)機械科を卒業
- 1910 八幡製鐵所に入社
- 1913 早稲田大学理工学部電気工学科入学
- 1915 同大学の建築学科に転学
- 1918 渡辺節建築事務所入社
- 1929 村野建築事務所設立
- 1949 村野・森建築事務所に改称
- 1984 死去
村野藤吾は、昭和期に数多くの名作を手掛けた、日本を代表する建築家である。
代表作としては「世界平和記念聖堂」「日本生命日比谷ビル」「丸栄本館」などが挙げられる。
また、ホテル・市役所・教会・美術館など幅広い建築を設計している村野藤吾ではあるが、特に「商業建築」に関しては、今の建築界に多大なる影響を与えている。
今回は、日本建築界の重鎮「村野藤吾」の建築作品14選をご紹介したいと思います。
【代表作】建築家村野藤吾の建築作品14選
1.世界平和記念聖堂




- 住所:広島県広島市中区幟町4-42
- 竣工:1954年
- 用途:教会
- URL:公式ページ
世界平和記念聖堂は、被爆地である広島県広島市に「平和のシンボル」として建設されたカトリック教会の施設である。
建築としては、三廊式バシリカの教会堂となっており、古代ローマを思わせる荘厳な空間構成が印象的だが、細部を見てみると「枯山水」「鳥居」などといった、日本的な要素が取り込まれている。
また、この建築は建設されるまでの経緯が面白い。
実は、この教会を建設するにあたっては日本最大規模のコンペが行われ、そこには丹下健三や前川國男、菊竹清訓といった名だたる建築家たちが参加し、村野藤吾はその審査員を担当していた。
しかし、コンペは「1等なし」という結果に終わり、その後、審査員であった村野藤吾自身がこの建築を設計することになったのである。(もちろん批判などがあり、設計料は受け取らなかったそう)
コンペの詳しい経緯については、Wikipediaに載っているのご覧ください。
2.旧・新歌舞伎座(現存せず)




- 住所:(旧)大阪市中央区難波四丁目3番25号
- 開館:1958年
- 用途:劇場
旧・新歌舞伎座は、1958年・大阪市中央区難波に開場した劇場建築である。
現在も新歌舞伎座は存在するが、それは2代目であり、村野藤吾が設計した初代新歌舞伎座は2015年に解体されている。
建築としては、唐破風(日本の城郭建築などにみられる頭部に丸みを持った造形)が連続する荘厳な外観が特徴的であった。
旧・新歌舞伎座が建っていた敷地には現在、高層ホテル建築が「隈研吾」設計で建設されたが、その低層部はかつての新歌舞伎座の外観が見事に再現されている。
3.日本生命日比谷ビル(日生劇場)








- 住所:東京都千代田区有楽町1-1-1
- 竣工:1963年
- 用途:オフィスビル・劇場
日本生命日比谷ビルは、日比谷公園沿いに建つ、オフィスや劇場などからなる複合施設である。
村野藤吾の代表作として知られ、1964年には「日本建築学会賞作品賞」を受賞している。
建築としては、花崗岩で仕上げたられた外観が荘厳な雰囲気を醸し出す「古典主義的な建築」となっているが、竣工当時はモダニズム建築が主流であったため、それなりの批判もあったそう。
それでも、前述した通り、村野藤吾はこの建築で日本建築学会賞を受賞しているので、さすがとしかいいようがない。
4.旧・兵庫県立美術館








- 住所:兵庫県神戸市灘区原田通
- 開館:1970年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
旧・兵庫県立美術館は、村野藤吾が初めて手掛けた美術館建築である。
現在、兵庫県立美術館の機能は、安藤忠雄が設計し2001年に竣工した新しい施設に移っているが、2023年現在でもこの施設は「兵庫県立美術館 原田の森ギャラリー」と名前を変え存在している。
建築としては、真っ白なボリュームが柱で持ち上げられ、まるで浮遊しているかのような重厚ながらも軽快さをあわせもった外観が特徴的。
極限まで無駄を排したような純粋な形態を持ちつつ、どこか豊かさを感じる空間がつくられている。
5.丸栄本館(現存せず)




- 住所:愛知県名古屋市中区栄
- 竣工:1953年
- 用途:商業施設
村野藤吾は商業建築をいくつも手掛けているが、その中でも建築界に多大なる影響を与えたと言われるのがこの「丸栄本館」である。
この建築は、百貨店三星の建物に増築する形で1953建設され、その後も複数回の増築を繰り返して成長していったという歴史を持つ。
さらに、百貨店建築としては全国で初めて「日本建築学会賞作品賞」を1954年に受賞しているという点においても、村野藤吾の代表作といえよう。
建築としては、一つの建物でも「モザイクタイル」や「縦格子デザイン」など、多様なファサードを持った外観が特徴的で、増改築を繰り返してきた歴史がそのまま外壁に現れている。
2018年に解体されてしまった丸栄本館だが、その際には日本建築学会賞が取り壊し中止を求める要請書を出すなど、異例の事態となった。
6.西山記念会館(現存せず)




- 住所:兵庫県神戸市中央区脇浜町
- 竣工:1975年
- 用途:記念館・ホール
西山記念会館は、川崎製鉄初代社長・西山弥太郎の顕彰を主目的として建設された、記念室や多目的ホールなどからなる複合施設である。
この施設の平面は三角形となっており、それぞれの頂点部分は「強固なRC造のコア」、残りの部分は「フレキシブルな鉄骨造」でできている。
さらに、RC造のコア部分の壁面は、滑らかな曲面となっており、その微妙な曲面が建築に豊かな表情をもたらしている。
7.橿原神宮前駅




- 住所:奈良県橿原市久米町618
- 竣工:1940年
- 用途:駅舎
橿原神宮前駅は、その名の通り、奈良県橿原市久米町にある神社「橿原神宮」の玄関口となる駅舎建築である。
駅舎なのに、まるで神社建築を思わせるような「大屋根」を持った構成が特徴的で、周辺環境に溶け込みつつ橿原神宮の玄関口としての役割を果たす、見事な建築となっている。
また、全体像としては、日本の伝統を思わせる構成となっているが、よく見ると駅舎入り口部分には白くて太いコンクリートの柱が並んでおり、村野藤吾建築でよく見られる「古典主義」的な構成もみられる。
8.千代田生命保険本社ビル(現・目黒区総合庁舎)




- 住所:東京都目黒区上目黒二丁目19番15号
- 竣工:1966年
- 用途:本社ビル
- URL:公式ページ
千代田生命保険本社ビルは、旧千代田生命保険の本社ビルとして1966年に竣工した施設で、現在は目黒区役所として利用されている。
建築としては、建物の全面を覆う「アルミ製ルーバー」と、その内側にめぐらされた「バルコニー空間」が特徴的で、この2つの要素によって建物内部には直射日光を避けた優しい光が差し込む。
さらに、村野藤吾は「階段の魔術師」とも呼ばれるほど、彼が手がける階段には定評があり、この施設の中にも美しい曲線を持った螺旋階段が存在する。
9.渡辺翁記念会館




- 住所:秋田県秋田市雄和椿川字奥椿岱193-2
- 竣工:1937年
- 用途:文化施設
- URL:公式ページ
渡辺翁記念会館は、宇部市の発展に大きく貢献した実業家「渡辺祐策」の顕彰などを目的に建設された施設である。
村野藤吾は、宇部市で複数の建築作品を手掛けており、その第一作となったのがこの「渡辺翁記念会館」であった。
建築としては、緩やかな曲線を持った平面形態と、外壁の黒褐色タイル張りが象徴的。
村野藤吾自身は、この建築を「私の出世作」と語っていたそう。
10.読売会館




- 住所:東京都千代田区有楽町一丁目11番1号
- 竣工:1957年
- 用途:商業施設
読売会館は、東京都千代田・有楽町駅のすぐそばに建つ商業建築である。
鋭角な角を持った三角形の敷地形状に合わせて、先端が有楽町駅前高背店に向かって収束していく形態が特徴的で、今や有楽町のシンボルともなっている。
このビルには元々、百貨店の「そごう」が入居していたが、2000年にそごうが閉店して以降は、家電量販店の「ビックカメラ」が入居している。
11.宇部興産ビル




- 住所:山口県宇部市椙生町8-1
- 竣工:1983年
- 用途:ホテル 貸事務所 会議室
- URL:公式ページ
宇部興産ビルは、大手総合化学メーカー「UBE(旧:宇部興産)」が建設した、ホテル・オフィス・会議室などからなる複合施設である。
L字型に建つ高層棟(ホテル・オフィス)と、それに囲まれる低層棟(国際会議場)といった全体構成が特徴的で、低層棟の1階部分は大きなピロティ空間となっている。
また、竣工当時このピロティには「大きな噴水」が設置されていたが、現在は駐車場に改築されてしまったらしく、残念だ。
12.米子市公会堂




- 住所:鳥取県米子市角盤町2丁目61番地
- 竣工:1958年
- 用途:公会堂
- URL:公式ページ
米子市公会堂は、演劇や講演会などを行う「大ホール」や「集会場」などの機能が入った、鳥取県米子市に建つ公会堂である。
建築としては、大ホールの客席部分(2階・3階)が、入り口上部に張り出した構成や、コンクリートの柱梁がむき出しになった外観が特徴的。
1998年に現在の国土交通省が発表した「公共建築百選」に、鳥取県で唯一選ばれたという実績もあり、鳥取を代表する建築となっている。
13.八重洲ダイビル(現存せず)




- 住所:東京都中央区京橋一丁目1番1号
- 竣工:1967年
- 用途:事務所
八重洲ダイビルは、大阪建物(現・ダイビル)の東京事務所として、中央区京橋に建設されたオフィスビル。
陰影がつけられたスタイリッシュはファサードや、緑化された屋上が特徴的な建物である。
残念ながら、村野藤吾が設計した八重洲ダイビルは2023年に解体され、新しい八重洲ダイビルが2025年に竣工する予定となっている。
14.天寿園瞑想館




- 住所:新潟県新潟市清五郎字鍋潟
- 竣工:1988年
- 用途:瞑想室 ホール
- URL:公式ページ
天寿園瞑想館は、中国庭園と日本庭園からなる観光庭園「天寿園」の中に建つ、瞑想を目的とした施設である。
この建築は、村野藤吾の死後に建設され建物であるが、デザイン自体は村野藤吾が以前、別のプロジェクトで考えていたものが採用されている。
建築としては、5枚の花弁が水に浮いたような平面形状をしており、花弁の部分に「瞑想室」、5枚の花弁が集まる中央部に「ホール」が配置された構成となっている。
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今回はこれで以上になります。
今回ご紹介した建築は、村野藤吾が設計した建築のほんの一部です。
そのため、今後も随時情報を更新していきたいと思っています。
気が向いたら、また本記事をご覧ください。
ではまた。
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