ピーター・ズントーとは?【人物像と代表作品5選を解説】

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目次

ピーター・ズントーとは?

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ピーター・ズントーの経歴

  • 1943年 スイス・バーゼルに生まれる
  • 1958年 家具職人として修業
  • 1963年 バーゼルの造形学校で学ぶ
  • 1968年 グラウビュンデン州の歴史的建造物保存局に勤務
  • 1979年 事務所設立
  • 2009年 プリツカー賞受賞
  • 2013年 RIBAゴールドゴールドメダル受賞

ピーター・ズントーは、父の影響で家具職人として修業を積んだのちに、造形学校で建築を学び、2009年には建築界のノーベル賞と言われる「プリツカー賞」を受賞するまでに至った世界的建築家である。

ピーター・ズントーの設計スタイルは、普遍的なモダニズム建築に、地域固有の場所性(風土)を融合した「地域主義(リージョナリズム)」として位置づけられることが多い。

そして、ズントー建築の場所性は、建築を構成する自然的な「素材」選びよって支えられているといえよう。

そんなズントーの代表作品には、方舟のような教会建築「聖ベネディクト教会」や、洞窟のような温泉施設「テルメ・ヴァルス」などが挙げられる。

ピーター・ズントーの代表作品5選

1.聖ベネディクト教会

photo by Adrian Michael/CC 表示-継承 3.0
  • 設計:ピーター・ズントー
  • 住所:スイス・スンヴィッツ
  • 竣工:1989年
  • 用途:教会
  • URL:建築詳細ページ

聖ベネディクト教会は、山々に囲まれたスイスの小さな村・スンヴィッツに位置する、キリスト教の教会建築である。

傾斜地に建てられたこの小さな教会は、先端の尖った楕円形平面をしており、その平面から立ち上げられた滑らかな形態は、まるで方舟のような美しさを呈している。

そして、その方舟の壁面には、敷地周辺で伐採された木材の小さな板がうろこ状に張り付けられており、周囲の自然に溶け込むような外観を作り出している。

さらに、建物上部には、帯状のハイサイドライトも設けられており、内部空間に豊かな光をもたらす。

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2.テルメ・ヴァルス

photo by Micha L. Rieser
  • 設計:ピーター・ズントー
  • 住所:スイス・ヴァルス
  • 竣工:1996年
  • 用途:温泉施設
  • URL:建築詳細ページ

テルメ・ヴァルスは、アルプス山脈が横断するスイスの小さな村「ヴァルス」の傾斜地に建つ、洞窟のような温泉施設である。

建物全体は、幾何学的な建築ボリュームが山の斜面に埋め込まれるような形で建てられており、屋根面の緑化も相まって、周辺のランドスケープと一体になりながら静かに佇んでいる。

また、内外の壁面には地元で採掘された石材が全面的に用いられており、洞窟のような重厚感のある雰囲気を生み出している。

ピーター・ズントーの名を世界に轟かせた名建築である。

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3.ブラザー・クラウス野外礼拝堂

photo by Kenta Mabuchi/CC 表示-継承 2.0
  • 設計:ピーター・ズントー
  • 住所:ドイツ・ヴァッヘンドルフ
  • 竣工:2007年
  • 用途:礼拝堂
  • URL:建築詳細ページ

ブラザー・クラウス野外礼拝堂は、15世紀を生きたスイスの修道士「ブラザー・クラウス」を祭る礼拝堂として、2007年ドイツ西部の小さな村・ヴァッヘンドルフの外れに建てられた建築物である。

建物全体は、ミニマルな五角柱型の建築ボリュームがコンクリート打ち放しで仕上げられた構成となっており、周囲の環境に自然と溶け込むような落ち着いた外観を呈している。

一方で、ミニマルな外観とは対照的に、内部には112本の丸太をコンクリートの型枠として用いて形作られた、円錐型の礼拝空間が展開されている。

内壁面には112本の丸太の素材感がコンクリートに転写され、コンクリート建築なのに木材の温かみを感じる、魅力的な内部空間が生み出されている。

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4.ブレゲンツ美術館

photo by rufre@lenz-nenning.at/CC BY-SA 3.0 at
  • 設計:ピーター・ズントー
  • 住所:オーストリア・ブレゲンツ
  • 竣工:1997年
  • 用途:美術館

ブレゲンツ美術館は、ドイツ・オーストリア・スイスという三国の国境に位置するアルプス地方最大級の湖「ボーデン湖」のほとりに位置する美術館建築である。

この美術館には、常設のコレクションは存在しておらず、企画展に特化した美術館として知られている。

建物全体は、磨りガラスで全面が覆われた「展示棟」と、コンクリートとガラスが市松模様に配された「管理棟」の2棟で構成されている。

このように2棟に機能を分割することによって、鑑賞に特化した空間を作り、作品鑑賞に集中できる洗練された空間を生み出しているのである。

さらに、展示棟内部は、磨りガラスを透過して均質化された自然光が内部空間を優しく包み込んでおり、少し暗めの展示空間として落ち着いた雰囲気を作り出している。

5.魔女裁判の犠牲者達のための記念館

photo by Wolfmann/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:ピーター・ズントー
  • 住所:ノルウェー・バルデ
  • 竣工:2011年
  • 用途:記念館

魔女裁判の犠牲者達のための記念館は、魔女裁判(女性が魔女とされ無実の罪で処刑された事件)の犠牲者を追悼するための施設として、2011年ノルウェー最北東端の街「Vardø(バルデ)」に建てられたメモリアル施設である。

建物全体は、直方体型の骨組みの中にサーフボードのような構造体が埋め込まれた「リニアな棟」と、黒いガラスで覆われた「スクエアな棟」の2棟で構成されている。

リニアな棟の全長は約125m。内部には91人の犠牲者に関する説明文が展示され、それに対応するように91の小さな開口部と電球が説明文の横に設置されている。

一方で、スクエアな棟の中には、彫刻家ルイーズ・ブルジョワによるアート作品が展示されている。

その作品は、中央に火がたかれた鉄製の椅子が鎮座し、その周りに7枚の楕円形の鏡が設置された構成となっており、まるで無実の罪で裁かれた犠牲者たちの恐怖を表したかのような作品となっている。

ピーター・ズントーの著書

著:ペーター・ツムトア, 翻訳:鈴木 仁子
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