李禹煥美術館とは?

李禹煥美術館は、瀬戸内海に浮かぶ香川県の「直島」に建つ美術館である。

李禹煥は、1936年に韓国で生まれた彫刻家である。
1960~70年代にかけて日本で流行した「もの派」という現代美術の先駆者として知られる。
「もの派」とは、石や木、鉄板など、具体的な「もの」を作品とする現代美術の動向である。
李禹煥美術館の設計を務めたのは、コンクリート建築で有名な建築家安藤忠雄。
「地形と一体化し、自然の風景に溶け込んだ建築」
このコンセプトを基に、地形に埋め込まれた展示室をコンクリートの壁で作られたアプローチ空間でつないだ、印象的な建築が出来上がっている。

そんな、李禹煥美術館の特徴をご紹介します!!
安藤忠雄とは?
- 1941 大阪市港区に生まれる
- 1969 安藤忠雄建築研究所設立
- 1976 日本建築学会賞を受賞
- 1989 ハーバード大学客員教授
- 1997 東京大学教授に就任
- 2012 国立競技場 審査委員長
建築に関わる者であれば、一度は耳にしたことがあるだろう建築家安藤忠雄。
安藤氏は大学には行かず独学で建築を学び、日本のみならず世界でも活躍されている特異な経歴の持ち主である。
代表作としては、「頭大仏殿」「21_21DESIGN SIGHT」などが挙げられ、コンクリート打ち放しの建築が象徴的である。
建築の特徴

李禹煥美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 直島のプロジェクトとのつながり
- ゲートから繋がる直線の通路
- 正方形平面の前庭
- 前庭にある彫刻作品
- 3枚の壁に囲われたアプローチ空間
- 三角形の中庭
- 窪地に埋め込まれた3つの展示室
直島の一連プロジェクトとのつながり

この写真は、直島に埋め込まれるように建つ、安藤忠雄設計の「地中美術館」である。
瀬戸内海に浮かぶ直島では、「ベネッセハウスミュージアム(1992)」や「地中美術館(2004)」など、安藤忠雄氏による作品が過去にも数多く建設されている。
これらの施設では、直島の独特な地形や豊かな自然と一体となった建築を追求。
これらのプロジェクトの連続として計画されたのが、今回紹介する李禹煥美術館である。
ゲートから繋がる直線の通路

ゲートから李禹煥美術館へは、地形を切り込むようにコンクリートの通路が設けられている。
この通路は、李禹煥美術館の前庭まで直線状に伸びており、建物のきれいな水平ラインと共鳴したような構成となる。
正方形平面の前庭

直線状の通路を進むと、正面にコンクリートの壁がたたずむ広場にたどり着く。
この美術館前庭は、30×30m規模の正方形の平面を持ち、地面には玉石が敷き詰められている。
さらに、この前庭には独創的な李禹煥氏の彫刻作品が設置されている。
天空へと伸びる彫刻作品

前庭にある、空へとまっすぐに伸びる柱状の彫刻作品。
これは、李禹煥氏の「関係項-点線面」という作品である。
垂直に伸びた細い柱は、コンクリートの壁のきれいな水平ラインとコントラストとなり、互いの美しさを強調し合っている。
3枚の壁に囲われたアプローチ空間

前庭の正面にあるコンクリートの壁。
実はこの奥、建物ではなくアプローチのためのスロープとなっている。
3枚のコンクリートの壁が平行に並べられ、展示室への期待感が高められる。
また、この3枚の壁は奥に行くほど90㎝ずつ高くなり、正面からは壁が重なっている様子がわかる。
三角形の中庭

3枚の壁によって作られたアプローチを抜けると、三角形の平面を形作る壁で周囲を囲われた中庭空間に出る。
ここでは、高さ6.3mの壁が空を三角形型に切り取り、ありのままの自然を味わうことができる空間となっている。
ちなみに三角形は、60度、30度の鋭角を持つ直角三角形となっている。
窪地に埋め込まれた3つの展示室

この中庭を抜けてようやく、3つの展示室に入ることができる。
これらの展示室は、窪地である敷地に埋め込まれた、地下の展示室である。
トップライトなどが設けられた3つの展示室は、「スケール」「素材感」「光」がそれぞれ異なり、多様な空間を作り出している。
建築概要
- 所在地:香川県香川郡直島
- 竣工 :2010年6月
- 用途 :美術館
- 構造 :RC造
- 階数 :地下1階
- 設計 :安藤忠雄建築研究所
- 構造 :アスコラル構造研究所
- 設備 :鹿島建設
- 施工 :鹿島建設
施設概要
- Tel :087-892-3754
- 受付時間:10~18時(3~9月) 10~17時(10~2月)
- 休館日 :月曜日
- URL :https://benesse-artsite.jp/art/lee-ufan.html
- 料金 :1,050円 15歳以下無料
最後に・・・
以上が李禹煥美術館の特徴でした。
地形に埋め込まれ周囲と調和した展示室、水平ラインの際立った外観などが魅力的な建築だったと思います。

直島を訪れる際は是非、李禹煥美術館に立ち寄ってみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。