建築家ジャン・ヌーヴェルとは?
ジャン・ヌーヴェルの経歴
- 1945年 フランス・フュメルに生まれる
- 1970年 事務所設立
- 1971年 エコール・デ・ボザール卒業
- 2001年 RIBAゴールドメダル受賞
- 2008年 プリツカー賞受賞
- 2024年 78歳
ジャン・ヌーヴェルは、「プリツカー賞」や「RIBAゴールドメダル」といった世界的権威のある建築賞を総なめにする、フランス出身の建築家である。
フランス・パリの国立美術学校「エコール・デ・ボザール」在籍中に自身の事務所を設立し、設計活動を開始。
その後、1981年に実施された「アラブ世界研究所」の国際コンペで最優秀賞を獲得。
この作品によってジャン・ヌーヴェルの名は世界に轟くこととなる。
そんな、ジャン・ヌーヴェルの代表作には「アラブ世界研究所」はもちろんのこと、「ケ・ブランリ美術館」や「トーレ・アグバール」など、前衛的な建築作品が数多く挙げられる。
これらの作品の共通点は、ガラスと光を巧みに利用している点にある。
このことから「ジャン・ヌーヴェル=ガラスと光を巧みに扱う建築家」というイメージが建築界では浸透している。
ジャン・ヌーヴェルの代表作品8選
1.アラブ世界研究所
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:フランス・パリ
- 竣工:1987年
- 用途:美術博物館・図書館など
- URL:建築詳細ページ
アラブ世界研究所は、アラブ文化を紹介する施設として、1987年フランスパリの中央を流れるセーヌ川沿いに建てられた複合文化施設である。
まだ無名だったジャン・ヌーヴェルの名を世界的に認知させた建築作品である。
建物全体は、ファサード全面がガラスで覆われた現代的な外観を示しているが、よく見てみると南側のガラス面には特殊な模様が入っている。
この模様は、イスラム美術伝統の幾何学的形態で構成された装飾模様「アラベスク模様」をモチーフにしており、アラブ世界に関する建築という要素を反映させたデザインとなっている。
一方で、この幾何学的模様には、カメラにも用いられる「自動絞り機能」が搭載されており、太陽の動きに連動して自動的に内部に入る光の調節をしてくれるという画期的な仕組みになっている。
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2.ケ・ブランリ美術館
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:フランス・パリ
- 竣工:2006年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
ケ・ブランリ美術館は、ヨーロッパ以外の地域(アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ)の美術品や資料を展示するための施設として、2006年フランス・パリに開館した美術館である。
本美術館は、フランス・パリの象徴であるエッフェル塔の足元に計画され、建物の周囲にはフランスのランドスケープ・アーキテクト「ジル・クレモン」がデザインした庭園が広がっている。
また、建物全体は1階部分がピロティ空間として空洞化されており、人々の流れや風の流れが建物によって途切れないような構成となっている。
さらに、ケ・ブランリ美術館のファサードには多様性があり、太陽が当たる南側は鱗のようなルーバーで覆われているのに対して、北側はガラス面から複数の箱が飛び出したような異質な外観を呈している。
前衛的建築家ジャン・ヌーヴェルが手がけた建築作品の中でも、特にユニークな特徴を持つ建築物である。
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3.カタール国立博物館
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:カタール・ドーハ
- 竣工:2018年
- 用途:博物館
- URL:建築詳細ページ
カタール国立博物館は、中東の国カタールの歴史を伝えるための施設として、2018年に首都ドーハに建設された国立博物館である。
建物全体は、沿岸のような水が存在する砂漠地帯でのみでしか生まれない薔薇型の鉱物結晶「砂漠の薔薇」の形態をモチーフにデザインされており、巨大な円盤を縦横ランダムに組み合わせたような形態となっている。
また、その円盤は外形のみならず内部空間すらも形作り、世界的にも類を見ない異質な建築空間が生み出されている。
巨大な円盤が交差するこの複雑な形態の実現には、最先端の建築技術が導入されている。これも、石油や天然ガスなどの天然資源に恵まれた国・カタールだからこそ実現しえ得た建築作品なのだろう。
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4.ルーヴル・アブダビ
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:アラブ首長国連邦・アブダビ
- 竣工:2017年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
ルーヴル・アブダビは、フランスに建つ世界一有名な美術館「ルーヴル美術館」の姉妹館として、2017年アラブ首長国連邦の首都アブダビに設立された美術館である。
この美術館では、フランスを代表する13の美術館(ポンピドゥーセンターやケ・ブランリ美術館など)から300点にも及ぶ収蔵品を借り受け、さらに独自に収集した作品なども併せて多彩な展示を行っている。
アラブの歴史的な街並みにみられる箱型低層建築の集合体(55棟)が、ここでは直径180mのドーム屋根によって覆われており、一つの街のような空間を生み出している。
さらに、巨大なドームは、ステンレスの骨組みの上下に4層ずつ、幾何学的形態をしたアルミニウムのレイヤーが被せられており、計8つのレイヤーを透過して建物内部に届く光は、まるで森の中の木漏れ日のような幻想的な光へと変化する。
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5.トーレ・アグバール
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:スペイン・バルセロナ
- 竣工:2005年
- 用途:オフィス・オーディトリアムなど
- URL:建築詳細ページ
トーレ・アグバールは、アントニ・ガウディの建築作品が数多く存在することで知られるスペイン第二の都市「バルセロナ」のシンボルとして知られる超高層ビル建築である。
トーレ・アグバールという名は、スペイン語で塔を意味する「トーレ(torre)」と、バルセロナの水道会社の名称「アグバール(Agbar)」を組み合わせたものである。
そんな水道会社のオフィスビルとして建てられたトーレ・アグバールは、「水」という自然要素をモチーフとしてデザインされている。
そういわれてみると、確かにトーレ・アグバールの独特な形態は、噴水や間欠泉のようなイメージを誘発するし、不規則に仕上げられたファサード面は、風に揺らぐ水のようにも見える。
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6.電通本社ビル
- 設計:大林組+ジャン・ヌーヴェル+ジョン・ジャーディ
- 住所:東京都港区東新橋1-8-1
- 竣工:2002年10月
- 用途:オフィス・店舗など
- URL:建築詳細ページ
電通本社ビルは、日本屈指の広告代理店「電通」の本社ビルとして、2002年東京都港区東新橋に建設された超高層ビルである。
建物全体は、約213mの高さを誇る「オフィス棟」、商業施設や劇場などが入る「カレッタ汐留」、貸事務所が入る「汐留アネックスビル」、講演会などを行える「電通ホール」の4棟で構成されている。
建築の設計は、スーパーゼネコンの一角を担う「大林組」と、フランスを代表する建築家「ジャン・ヌーヴェル」、アメリカの建築家「ジョン・ジャーディ」の三者が共同で行った。
プロジェクト全体のコンセプトは「クリスタル&ロック」。
岩のように強固な地盤の上に、クリスタルのように鋭い高層棟を建てるという意図が明快に表れたコンセプトとなっている。
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7.フィルハーモニー・ド・パリ
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:フランス・パリ
- 開館:2015年
- 用途:コンサートホール・劇場など
- URL:公式ページ
フィルハーモニー・ド・パリは、フランスパリ最大の都市公園「ラ・ヴィレット公園」内に存在する文化施設である。
施設内には、大ホール・コンサートホール・劇場という3つのホール空間が展開されており、クラシック・ジャズ・ポップミュージックなど幅広い音楽のコンサートを開催できる場となっている。
建物全体は、飛ぶ鳥をモチーフにしたという34万枚の「アルミパネル」によって覆われており、時間や天気の変化によって様々な表情を作り出している。
さらに、建物の低層部には、蛇がとぐろを巻くような有機的な形態をした壁面が展開されており、その表皮はステンレス鋼で覆われており、シンボリックな外観を作り出している。
8.ガスリー・シアター
- 設計:ジャン・ヌーヴェル
- 住所:アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス
- 開館:2006年
- 用途:劇場・ホール
ガスリー・シアターは、世界第4位の長さを誇るアメリカ最大の河川「ミシシッピ川」の流域に建つ、劇場施設である。
建物全体は、ミシシッピ川に向けて大きく張り出した「ブリッジ」が特徴的な外観を形成。
さらに、そのブリッジの先端には展望デッキが設けられており、ミシシッピ川をはじめとするミネアポリスの街並みを一望できる展望スポットになっている。
またブリッジ内部には、緩やかなスロープ空間として展開されているのだが、壁面には不規則な窓が設置されており、ダイナミックな内部空間が展開されている。