みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。
今回は、安藤忠雄の実質的デビュー作にして代表作でもある「住吉の長屋」の建築的特徴について解説していきたいと思います。
安藤忠雄を語る上では欠かせない建築作品です。
是非最後までご覧ください。
住吉の長屋の概要

- 設計:安藤忠雄
- 住所:大阪市住吉区
- 竣工:1976年2月
- 用途:専用住宅
- 構造:鉄筋コンクリート造
- 高さ:5.8m
- 階数:地上2階
- 施工:まこと建設
住吉の長屋とは、大阪に建つ建築家安藤忠雄氏の実質的なデビュー作となった住宅作品である。
内部・外部ともにコンクリート打ち放しでできている上、狭い敷地にも関わらずその1/3を中庭にしているなど、異質な構成が随所にみられる建築作品だ。
この作品で安藤忠雄は「日本建築学会作品賞」を受賞。
安藤忠雄の原点ともなる住宅作品だといえよう。
設計者:安藤忠雄とは?
- 1941 大阪市港区に生まれる
- 1969 安藤忠雄建築研究所設立
- 1976 日本建築学会賞を受賞
- 1989 ハーバード大学客員教授
- 1997 東京大学教授に就任
- 2012 国立競技場 審査委員長
建築に関わる者であれば、一度は耳にしたことがあるだろう建築家安藤忠雄。
安藤氏は大学には行かず独学で建築を学び、日本のみならず世界でも活躍されている特異な経歴の持ち主である。
代表作としては、「光の教会」「表参道ヒルズ」などが挙げられ、コンクリート打ち放しの建築が象徴的である。
建築の特徴
コンクリート打ち放しの外観

住吉の長屋が他の住宅と明らかに違う点は、コンクリート打ち放しによる構成である。
普通この規模の住宅では木造住宅となることが多い。
しかし住吉の長屋では、安藤忠雄氏は自身の象徴であるコンクリートによる構成をとり、さらにそれを前面に現わしている。
この敷地周辺は一般的な木造住宅が多いため、実際に住吉の長屋を目にすると、突如として現れるコンクリートの箱に圧倒されました!!
このコンクリート打ち放しによる構成は、断熱材が挟まれていないため、夏は暑く冬は寒いという、過酷な熱環境である。
しかし、クライアントは、これらのことも含めてこの作品が気に入っているそう。
長屋の改築

設計当初、この敷地の周辺は、昔ながらの老朽化した長屋が並んでいた。そのような場所にある、3軒長屋の真ん中を1軒切り取って、この住吉の長屋が完成した。

長屋とは、この写真のように複数の住戸が横に連続し、それぞれの壁が共有されている建物形態のことを言う。
共同住宅(マンション・アパート)との違いは、エントランスや階段といった共有部分がなく、すべての住戸に道路から直接アクセスできるという点。
しかし、長屋には様々なデメリットもある。
- 壁を共有しているため開口部が少なく、採光や通風が悪い
- 前面が道路であるため騒音などがすごい
- 隣の話し声などが聞こえる
これらの長屋特有のデメリット解決しつつ、可能な限り豊かな住宅をつくろうとして建てられたのが、この住吉の長屋である。
壁に出入口以外の開口部がない

photo by Professional archi /CC 表示-継承 3.0/変更なし
住吉の長屋は、壁に出入口以外の開口部がほとんどないという特徴もある。
この構成になった理由としては、この後紹介する内部構成と密接な関わりがあるため、深くは述べませんが、ずいぶんと外に対して閉鎖的なようにも見えてしまいます。
しかし、これは長屋という住宅形態の環境改善に努めた結果による構成となっているようです。
内側もコンクリート打ち放し
外観のコンクリート打ち放しによる異彩感は、わかっていいただけたと思うが、このコンクリートは内部空間にまで及んでいる。
この厳しい条件の影響もあり、コンクリ―打ち放しの内観となったわけであるが、実は仕上げには細かいこだわりも見える。
例えば、人間の生活に近い床面は自然石で覆っていたり、もっと身近な家具などには木材を使用したりと、随所に住み手のための工夫もみられる。
建物中央の中庭

この住宅の最大の特徴となるのが、内部の中庭空間である。
ただでさえ狭い敷地を3分割し、その中央部を2層吹き抜けの中庭としている。
しかし、安藤忠雄氏は、このような中庭があることによって、狭い住宅に無限の小宇宙が作り出されると考えていたようだ。
さらに、長屋の環境改善の面で見ても、この構成はかなり効果的である。
- 開口部が少なく、採光や通風が悪い
- 前面が道路であるため騒音などがすごい
- 隣の話し声などが聞こえる
壁の開口部をなくし、中庭から採光・通風をとることで、車の騒音や隣の家の話し声などを最低限に抑えられる。
これらの、様々な条件を考慮し、突き詰めていった結果による構成が中央に中庭を設けるというものであった。
雨の日になると、中庭を傘をさして通らないとトイレに行けないなどの大きな問題点もあった。
それでも、安藤忠雄氏は、機能性や利便性を犠牲にしてでも、普段の生活で享受できる自然の豊かさなどを優先して、中庭を設けた。
ちなみに、吉田五十八賞という建築賞の最終審査で訪れた建築家村野藤吾氏は、冗談交じりで住吉の長屋に対してこのように述べている。

住み手に賞を与えるべきだ!!
安藤忠雄の作品集

今回はこれで以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。