レム・コールハース(OMA)とは?
レム・コールハースの経歴
- 1944年 オランダ・ロッテルダムに生まれる
- 1962年 ジャーナリスト・映画脚本家として活動
- 1968年 ロンドンのAAスクール入学
- 1975年 OMA設立
- 1978年 『錯乱のニューヨーク』出版
- 1995年 『S,M,L,XL』出版
- 2000年 プリツカー賞受賞
- 2004年 RIBAゴールドメダル受賞
レム・コールハースは、ロッテルダム・ニューヨーク・北京・香港の4つの大都市に事務所を構える世界的建築設計事務所「OMA」を統括する世界的建築家である。
オランダ・ロッテルダムで生まれたレム・コールハース。
ハイスクール卒業後すぐは、父親の影響もありジャーナリスト・脚本家としての道を歩んでいたが、24歳の時に建築家という仕事に興味を持ち、ロンドンの私立建築学校「AAスクール」に突如入学。
その後、地元ロッテルダムに建築設計事務所「OMA」を設立し、建築家としての道を歩み始めた。
1978年に出版した『錯乱のニューヨーク』では、マンハッタニズムという独自の建築論を展開し建築界に衝撃を与え、その後1995年に出版された『S,M,L,XL』でも、OMAの過去20年活動を時系列ではなくスケールに従って並べるという革新的な体系手法を確立し、建築理論家としてその名を建築界に轟かせた。
また、コールハースは独自の理論を実作でも展開しており、代表作である「中国中央電視台本部ビル」や「シアトル中央図書館」など、様式や固定概念にとらわれない前衛的な作品を数多く残している。
レム・コールハース(OMA)の代表作品6選
1.中国中央電視台本部ビル
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:中国・北京
- 竣工:2008年
- 用途:テレビ局本部
- URL:建築詳細ページ
中国中央電視台(CCTV)本部ビルは、中国国営の公共放送テレビ局「中国中央電視台(CCTV)」の本部ビルとして2008年に完成した高層オフィスビル建築である。
建築全体は、2棟の傾斜したタワーが上部と下部で連結し、クランク状の無限ループを形成。周囲のビル建築とは一線を画すアイコニックな外観を呈している。
さらに、建物の表面には不規則なグリッドが表出しているのが見て取れるが、これは建物表面に伝わる力の流れを表現したトラスの骨組みとなっており、荷重が大きい部分ほどグリッドの幅が狭くなっている。
この世界的にも類を見ない前衛的な建築作品は、中国国内でも賛否両論を生んでいるらしいが、レム・コールハース(OMA)の設計スタイルを顕著に表した作品として高い評価を得ている。
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2.シアトル中央図書館
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:アメリカ・シアトル
- 竣工:2004年
- 用途:図書館
- URL:建築詳細ページ
シアトル中央図書館は、海・山脈・森などの大自然に囲まれるアメリカ・ワシントン州最大の都市「シアトル」に建つ図書館建築である。
建物全体は、ガラスの被膜で覆われた多面体によって構成されており、直方体のビルが立ち並ぶシアトルの街の中でも一際存在感を放っている。
また、シアトル中央図書館には閉架書庫が存在せず、すべての書籍を「ブック・スパイラル」と呼ばれる特殊な開架書庫に収蔵している。
このブック・スパイラルでは、アメリカのデューイ十進分類法に基づいて000~999に分類された本が、螺旋状に連続する4層の書架空間に順番に並べられるという、非常に単純明快な体系方法が確立されている。
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3.クンストハル美術館
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:オランダ・ロッテルダム
- 竣工:1992年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
クンストハル美術館(別名:ロッテルダム芸術ホール)は、世界屈指の湾港都市として知られるオランダ・ロッテルダムに建つ美術館建築である。
この美術館最大の特徴は、なんといっても「傾斜するスラブ」にある。
通路に傾斜を持たせスロープにするという設計手法はいろんな建築で採用されている。しかし、クンストハル美術館のように、スラブ(床)全体に傾斜を持たせた建築はいまだかつて存在しなかった。
外観だけ見るとまるでモダニズム建築のような箱型をしているのにもかかわらず、建物内部にはモダニズムの均質空間とはかけ離れた、傾斜する空間が生み出されているのである。
このモダニズムを批判するような建築作品は、世界に衝撃を与えた。
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4.ガレージ現代美術館
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:ロシア・モスクワ
- 竣工:2015年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
ガレージ現代美術館は、ロシアの現代美術作品を展示するための施設として、2008年首都モスクワに設立された美術館である。
元々は既存のバスガレージを改築して開館した美術館であるが、2015年にモスクワのゴーリキー公園内に建っていた廃墟を改築し、そこに美術館機能を移転している。
OMAは、20年以上放置されていたコンクリート造の廃墟を、既存構造を生かしながらも建物全体に半透明の被膜をかぶせることで、現代美術館へと生まれ変わらせている。
現代的なファサードながらも、内部には過去の記憶(廃墟の記憶)を残した魅力的な建築作品となっている。
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5.カーサ・ダ・ムジカ
- 設計:レム・コールハース
- 住所:ポルトガル・ポルト
- 竣工:2005年
- 用途;コンサートホール
- URL:建築詳細ページ
カーサ・デ・ムジカは、街全体が世界遺産にも登録されているポルトガルの都市「ポルト」の中心地に建つコンサートホール建築である。
カーサ・デ・ムジカの建設にあたっては、国際的な建築事務所5社による非公開コンペが行われ、そのコンペを勝ち抜いたレム・コールハース率いる「OMA」が設計を担当した。
建築は、まるで大きな岩石のような多面体の構成が特徴となっており、コンクリート打ち放しの仕上げがより一層の重厚感を建築に付与している。
また、あえて建物を敷地の中央にポツリと孤立させ、その周囲に広場を展開することによって、シンボル性や視認性を高めている点も高く評価されている。
さらに、この特徴的な多面体による形態は、内部に多様な空間を生み出し、まるで冒険するかのような魅力的な空間体験を来館者に提供している。
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6.ネクサスワールド(レム棟・コールハース棟)
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:福岡県福岡市東区香椎浜
- 竣工:1991年
- 用途:集合住宅
ネクサスワールドは、福岡県福岡市に建つ集合住宅群を示す名称である。
この集合住宅群を構成する複数の棟は、磯崎新の全体コーディネートの下で、6人の世界的建築家によってそれぞれ設計されており、建築界を挙げた一大プロジェクトとして話題になった。
- ネクサスワールドプロジェクトに参加した建築家
- レム・コールハース
- スティーヴン・ホール
- 石山修武
- マーク・マック
- クリスチャン・ド・ポルザンパルク
- オスカー・トゥスケ
その中でも、レム・コールハースが設計を担当した「レム棟」と「コールハース棟」の2棟は、1992年の日本建築学会作品賞を受賞し、国内外から高い評価を得ている。
レム棟とコールハース棟は、2階部分の黒い石垣のように仕上げられた重厚感のあるファサードが特徴となっているが、これは将来ネクサスワールドの中心に立つ予定であったツインタワービル(設計:磯崎新)の基壇部との連続を意識したものである。(実際ツインタワービルは規模を縮小して建てられた)
さらに、ツインタワーや街からの視線を意識してファサードは閉鎖的にまとめられたレム棟・コールハース棟だが、その代わりに各住戸に1階から3階まで貫通する中庭が設けられている。