ランゲン美術館とは?

ランゲン美術館は、ドイツ・デュッセルドルフ郊外の森の中に建つ現代美術館である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家「安藤忠雄」。
コンセプト「森の中に息づく美術館」
このコンセプトを基に、美術館でありながら周囲の自然を存分に感じ取れる構成が魅力的な建築となっている。
安藤忠雄とは?
- 1941 大阪市港区に生まれる
- 1969 安藤忠雄建築研究所設立
- 1976 日本建築学会賞を受賞
- 1989 ハーバード大学客員教授
- 1997 東京大学教授に就任
- 2012 国立競技場 審査委員長
建築に関わる者であれば、一度は耳にしたことがあるだろう建築家「安藤忠雄」。
安藤氏は大学には行かず独学で建築を学び、日本のみならず世界でも活躍されている特異な経歴の持ち主である。
代表作としては、「住吉の長屋」「頭大仏殿」「秋田県立美術館」などが挙げられ、コンクリート打ち放しの建築が象徴的である。
建築の特徴

ランゲン美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 近隣に建つ『インゼル・ホンブロイッヒ美術館』
- 「静」と「動」2つの空間
- 二重被膜構造の「静」の空間
- 地中に埋まる「動」の空間
- 同様の構成を持つ安藤建築
近隣に建つ『インゼル・ホンブロイッヒ美術館』

ランゲン美術館の近くには「インゼル・ホンブロイッヒ美術館」という緑に囲まれた美術館が存在している。
ここは広大な沼地に浮かぶ島全体を敷地とした美術館であり、周辺環境そのものすらも美術館とするといったコンセプトが魅力的な美術館となっている。
この美術館のオーナーであるカール・ハインリッヒ・ミュラー氏が新たに計画したのがランゲン美術館であった。
「静」と「動」2つの空間

ランゲン美術館には「東洋美術」と「現代美術」のコレクションを収蔵。
この異なる個性を持つ収蔵品に対して安藤氏は、建物を「静の空間(常設展示棟)」と「動の空間(企画展示棟)」の二つに分けることにした。
東洋美術は静の空間に、現代美術は動の空間にそれぞれ分けることで「静」と「動」の対比的な体験を一度にできる美術館となっている。
二重被膜構造の「静」の空間

東洋美術を常設展示する「静の空間」では、コンクリートの箱をガラスの被膜が覆う二重被膜構造が採用されている。
この入れ子状の構成によって生まれるガラスとコンクリートに囲われた空間は、日本の縁側のような内外を緩やかに繋ぐ緩衝領域となる。
この緩衝領域によって、建物内にいても周囲の自然を感じることができ、コンセプトである「森の中に息づく美術館」を現実のものとしている。
地中に埋まる「動」の空間

現代美術を企画展示する「動の空間」は、ボリュームのすべてが地中に埋められている。
そのうえでスカイライトなどによって内部空間に光を取り込み、劇的な動きのある空間を作り出す。
この「動の空間」の巧みな光使いこそ、安藤建築の真骨頂である。
同様の構成を持つ安藤建築

photo by Briaande/CC 表示-継承 4.0

photo by Tak1701d/CC 表示-継承 3.0
ランゲン美術館最大の特徴である二重被膜構造のデザインは、他の安藤建築でも用いられている。
その例が「フォートワース現代美術館(2002)」や「兵庫県立美術館(2001)」である。
この二つの建築は、ランゲン美術館よりも早く竣工しているものの、プロジェクトが始まったのはランゲン美術館の方が早かった。
つまり、二重被膜構造のデザインの原型となったのがランゲン美術館ということになる。
建築概要
- 所在地:ドイツ ノイス
- 竣工 :2004年7月
- 用途 :美術館
- 構造 :RC造 S造
- 階数 :地下2階 地上1階
- 設計 :安藤忠雄建築研究所
- 施工 :Florack Bauunternehmung Frenken
- 構造 :Ingenieurbüro J. Heibges
- 設備 :Ingenieurbüro Bayer
最後に・・・
以上がランゲン美術館の建築的特徴でした。
「静」と「動」の空間の対比や、二重被膜構造による緩衝領域などが魅力的な建築になっていたと思います。
是非一度、ランゲン美術館を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。