法隆寺宝物館とは?

法隆寺宝物館は、上野公園内にある日本最古の博物館「東京国立博物館」の5つある館のうちの一つである。
設計を務めたのは、モダニズム建築で有名な建築家谷口吉生。
- 崇高な収蔵物に対する畏敬の念
- 周辺の自然を尊重
この二つをテーマに、東京にあるとは思えないような静寂・秩序・品格を持った博物館が完成している。

そんな、法隆寺宝物館の特徴をご紹介します!!
谷口吉生とは?
- 1960 慶應義塾大学卒業
- 1964 ハーバード大学大学院修了
- 1965 丹下健三研究室所属
- 1983 谷口建築設計研究所所長
- 2021 文化功労者
谷口吉生は日本を代表する建築家であり、父谷口吉郎も昭和期を代表する建築家として知られている。
代表作としては、「ニューヨーク近代美術館MoMA」「豊田市美術館」「法隆寺宝物館」などが挙げられる。
谷口吉生氏の作品は、水平・垂直ラインの美しいものが多く、モダニズム建築を彷彿とさせるスタイルは国内外から高く評価されている。

このシンプルなスタイルが影響してか、谷口氏はあまりコンペに参加しないことでも有名である。
しかし、珍しくコンペに参加して勝ち取った「ニューヨーク近代美術館MoMA」でも、その洗練されたスタイルを貫いているところがかっこいい。
建築の特徴

法隆寺宝物館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 日本最古の博物館「東京国立博物館」
- 日本を感じる空間構成
- 建物前面に広がる水盤
- 光のあふれるエントランスホール
- 光を抑えた展示室
日本最古の博物館「東京国立博物館」

photo by Wiiii/CC 表示-継承 3.0
歴史のある上野の「東京国立博物館」は、5つの展示館・資料館からなり、多くの国宝や重要文化財を収蔵している。
- 本館(渡辺仁)
- 表慶館(片山東熊)
- 東洋館(谷口吉郎)
- 平成館(安井建築設計事務所)
- 法隆寺宝物館(谷口吉生)
また、名称の前に地名が冠されていることからわかるように、国立博物館は東京の他にも、「京都」「奈良」「九州」に存在する。
日本を感じさせる空間構成
法隆寺から皇室に献納された約300件に及ぶ「法隆寺献納宝物」を保存・展示するために開館した法隆寺宝物館。
法隆寺という日本伝統の建造物を意識して、法隆寺宝物館でも日本を感じさせる工夫がいくつもなされている。
アシンメトリーの構成

法隆寺宝物館の建物は、次の三つの要素からなる。
- 展示室や収蔵庫が入る「石の箱」
- エントランスやロビーが入る「ガラスの箱」
- ステンレス製の「門構え」
これら3つの要素が上下左右に少しずつズレながら配置されているため、アシンメトリーの外観が形成されている。
昔から自然を敬愛する日本人にとって、自然環境と同じアシンメトリーの構成は、日本人が「美」を感じる対象となっている。
屈曲したアプローチ空間

西欧の人々は、建物まで一直線に続く大きなアプローチ空間に美を感じるのに対して、日本人は屈曲したアプローチ空間に美を感じると言われている。
これも、自然を好む日本人ならではの美意識である。
この日本人特有の美意識が法隆寺宝物館でも再現されている。
和を感じるファサード

建物正面の大きなガラスカーテンウォールには、縦格子を入れることで、日本伝統の障子を感じさせるという工夫がなされている。
これにより、鉄や石で囲われた空間でも感覚的には和を感じる不思議な空間が形成されている。
建物前面に広がる水盤

法隆寺宝物館の前面には水盤が設置されており、右端には御影石張りの通路が渡されている。
この水に囲われたアプローチ空間を通ることで、日々の喧騒から気持ちを入れ替えるとともに、静寂や癒しを与える役割も担っている。
光のあふれるエントランスホール
「ガラス張りの壁」と「石張りの壁」に囲われたエントランスホールは、天井が高いこともあり光であふれる開放的な空間がつくられている。
さらに、天井の一部にはトップライトが設けられており、明るさを強調。
石張りの壁には、柔らかい色合いが特徴的なドイツ産の「ライムストーン(石灰石)」を使用しているため、明るさに柔らかさも加わっている。
光を抑えた展示室

光のあふれるエントランスホールとは対照的に、展示室は光が抑えられた暗い空間になっている。
その暗い空間の中で、やさしい光に照らされた銅製の仏像が浮かび上がるという、光の演出がなされている。
この光の演出によって、コンセプトである「崇高な収蔵物に対する畏敬の念」がまさに表現されている。
建築の特徴
- 所在地:東京都台東区上野公園
- 竣工 :1999年3月
- 用途 :博物館
- 構造 :RC造、S造
- 高さ :19.95m
- 階数 :地下1階 地上4階
- 設計 :谷口建築設計研究所
- 施工 :大林組
- 構造 :構造計画研究所
- 設備 :森村設計
施設概要
- Tel :050-5541-8600
- 営業時間:9時30分~17時00分
- 休館日 :月曜日、年末年始など
- URL :https://www.tnm.jp/
- アクセス:JR上野駅公園口から徒歩10分
- 料金 :一般 1,000円、大学生 500円
最後に・・・
以上が東京国立博物館の特徴でした。
谷口吉生建築らしい水平垂直ラインの強調された外観と、日本を感じさせる空間構成が魅力的な建築になっていたと思います。

是非一度、東京国立博物館を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。