みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。
今回は、東京国立博物館の一施設である「法隆寺宝物館」の建築的特徴を解説していきたいと思います。
谷口吉生の代表作です。是非最後までご覧ください。
法隆寺宝物館とは?

法隆寺宝物館は、上野公園内にある日本最古の博物館「東京国立博物館」の6つある展示館のうちの一つとして、1999年に建設された建築物である。
法隆寺から皇室に献納され、戦後国に移管された宝物300件あまりを収蔵・展示している。
建築の設計は、海外でも活躍する世界的建築家「谷口吉生」が担当。
水平垂直が強調され、魅力的なアプローチ空間が設けられた谷口吉生らしい建築作品となっている。
設計者:谷口吉生とは?
- 1960 慶應義塾大学卒業
- 1964 ハーバード大学大学院修了
- 1965 丹下健三研究室所属
- 1983 谷口建築設計研究所所長
- 2021 文化功労者
谷口吉生は日本を代表する建築家であり、父・谷口吉郎も昭和期を代表する建築家として知られている。
代表作としては、「ニューヨーク近代美術館MoMA」「豊田市美術館」「法隆寺宝物館」などが挙げられる。
谷口吉生建築は、水平・垂直ラインを強調したスタイリッシュな外観をした作品が多く、その洗練された空間構成は国内外から高い評価を得ている。
建築の特徴
日本最古の博物館「東京国立博物館」

photo by Wiiii/CC 表示-継承 3.0
歴史のある上野の「東京国立博物館」は、6つの展示館・資料館からなり、多くの国宝や重要文化財を収蔵している。
また、名称の前に地名が冠されていることからわかるように、国立博物館は東京の他にも、「京都」「奈良」「九州」に存在する。
日本を感じさせる空間構成

法隆寺から皇室に献納された約300件に及ぶ「法隆寺献納宝物」を保存・展示するために開館した法隆寺宝物館。
法隆寺という日本伝統の建造物を意識して、法隆寺宝物館でも日本を感じさせる工夫がいくつもなされている。
法隆寺宝物館の建物は、次の三つの要素からなる。
- 展示室や収蔵庫が入る「石の箱」
- エントランスやロビーが入る「ガラスの箱」
- ステンレス製の「門構え」
これら3つの要素が上下左右に少しずつズレながら配置されているため、アシンメトリーの外観が形成されている。
昔から自然を敬愛する日本人にとって、自然環境と同じアシンメトリーの構成は、日本人が「美」を感じる対象となっている。
屈曲したアプローチ空間

西欧の人々は、建物まで一直線に続く大きなアプローチ空間に美を感じるのに対して、日本人は屈曲したアプローチ空間に美を感じると言われている。
これも、自然を好む日本人ならではの美意識である。
この日本人特有の美意識が法隆寺宝物館でも再現されている。
和を感じるファサード

建物正面の大きなガラスカーテンウォールには、縦格子を入れることで、日本伝統の障子を感じさせるという工夫がなされている。
これにより、鉄や石で囲われた空間でも感覚的には和を感じる不思議な空間が形成されている。
建物前面に広がる水盤

法隆寺宝物館の前面には水盤が設置されており、右端には御影石張りの通路が渡されている。
この水に囲われたアプローチ空間を通ることで、日々の喧騒から気持ちを入れ替えるとともに、静寂や癒しを与える役割も担っている。
光のあふれるエントランスホール

「ガラス張りの壁」と「石張りの壁」に囲われたエントランスホールは、天井が高いこともあり光であふれる開放的な空間がつくられている。
さらに、天井の一部にはトップライトが設けられており、明るさを強調。
石張りの壁には、柔らかい色合いが特徴的なドイツ産の「ライムストーン(石灰石)」を使用しているため、明るさに柔らかさも加わっている。
光を抑えた展示室

光のあふれるエントランスホールとは対照的に、展示室は光が抑えられた暗い空間になっている。
その暗い空間の中で、やさしい光に照らされた銅製の仏像が浮かび上がるという、光の演出がなされている。
この光の演出によって、コンセプトである「崇高な収蔵物に対する畏敬の念」がまさに表現されている。
東京国立博物館・全6館の解説ページ

今回はこれで以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。