【建築特徴】イリノイ工科大学・クラウンホール|ミース

photo by Arturo Duarte Jr./CC BY-SA 3.0
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イリノイ工科大学・クラウンホールとは?

photo by Joe Ravi/CC BY-SA 3.0
  • 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
  • 住所:アメリカ・イリノイ州・シカゴ
  • 竣工:1956年
  • 用途:大学施設(建築学科のスタジオ)

アメリカ合衆国イリノイ州・シカゴの中央部に位置する、私立の理工系研究大学「イリノイ工科大学」。

このイリノイ工科大学のキャンパス内には、建築学科のスタジオとして建設された「クラウンホール」という近代建築が存在している。

クラウンホールを設計したのは、近代建築三大巨匠のひとりとして知られる建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」である。

ミースは、ナチスの独裁政権から逃れるためアメリカに亡命した後、イリノイ工科大学・建築学科の主任教授に就任。加えて、同大学のキャンパス全体計画を担当している。

そのため、イリノイ工科大学内にはミースが設計した建物が複数存在するのだが、その建築群の中でも特に高い評価を得ているのが、このクラウンホールなのである。

イリノイ工科大学・クラウンホールの建築的特徴

イリノイ工科大学・建築学科のスタジオ施設

ニューヨーク・ロサンゼルスに次ぎ、アメリカ第3位の人口を誇る巨大都市・シカゴ。

摩天楼発祥の地としても知られる最先端の街シカゴには、私立の理工系研究大学「イリノイ工科大学」のキャンパスが存在している。

そして、そのキャンパス内には1956年、建築学科のスタジオとして「クラウンホール」という建物が竣工

このクラウンホールの設計を担当したのが、近代建築三大巨匠のひとり「ミース・ファン・デル・ローエ」なのである。

ミース後期の代表作

ミースはドイツで生まれた建築家だが、ナチス・ドイツの独裁政権から逃れるため、1937年にアメリカへ亡命。その後は、1969年にこの世を去るまで、アメリカ・シカゴを拠点に設計活動を行っている。

そして、アメリカへ亡命してから数年後、ミースはイリノイ工科大学・建築学科の主任教授に就任。

その就任に伴い、同大学のキャンパス全体計画も担当することになった。

そのため、イリノイ工科大学のキャンパス内には、ミースが手がけた建築作品が数多く残されているのだが、その建築群の中でも特に高い評価を得ているのが「クラウンホール」なのである。

ユニバーサル・スペースを最も端的に表した建築

photo by Timothy Brown/CC BY 2.0

ミースが提唱した建築思想「ユニバーサル・スペース」。

ユニバーサル・スペースとは、床・天井・柱・壁という最小限の要素だけで構成された空間のことを示し、無駄な要素を極限まで排除した均質的な空間であるため、どのような用途にも対応できるという特性を持っている。

このユニバーサル・スペースという概念は、主に高層建築を中心に普及し、今や高層建築設計の前提条件のようなものにもなっている。

そして、このユニバーサル・スペースという概念をもっとも端的に表した建築作品が、このクラウンホールだと言われている。

この評判の通り、クラウンホールの内部空間には、無駄な要素がほとんど見られないどころか、柱や梁といった構造要素の姿も見えない。

これはなぜかというと、完璧なユニバーサル・スペースを実現するために、ミースは構造要素を外に投げ出したからなのである。

外に投げ出された構造体

photo by JeremyA/CC BY-SA 2.5

クラウンホールの外観を見てみると、屋根の上部に4か所ほど、突起物が飛び出しているのが見て取れる。

実はこの突起物は「梁」。

通常は屋根の下に設けられる梁を、ミースは屋根の上に設置することによって、内部空間から徹底的に無駄な要素を排除しているのである。

そして、梁の両側には、同じ幅の柱も連続しており、その柱も外側に投げ出されている。

1.83m持ち上げられた床面

photo by Arturo Duarte Jr./CC BY-SA 3.0

クラウンホールは2層の建物なのだが、上階の床面は1.83mほど、地上から持ち上げられている

この構成を見て、ミースの代表作「ファンズワース邸」を想起するのは私だけではないだろう。

ファンズワース邸が地上から持ち上げられていた理由は、洪水から建物を守るためであったが、クラウンホールでは下階(半地下)に光をもたらすために建物の床面を持ち上げている。

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