谷口吉生とは?
- 1937 東京に生まれる
- 1960 慶應義塾大学卒業
- 1964 ハーバード大学大学院修了
- 1965 丹下健三研究室所属
- 1983 谷口建築設計研究所所長
- 2021 文化功労者に選ばれる
谷口吉生は、美術館・博物館・水族館など大規模建築を数多く手がけることで知られる日本を代表する建築家である。
谷口吉生の父「谷口吉郎」も昭和期を代表する建築家として、数多くの作品を残していることでも知られている。
谷口吉生建築は、水平・垂直ラインを強調したスタイリッシュ作風が特徴的で、その洗練されたスタイルは海外からも高く評価されている。
今回は、そんなスタイリッシュな建築を数多く手がける建築家谷口吉生の代表作12選をご紹介したいと思います。
【代表作】建築家谷口吉生の建築作品12選
1.葛西臨海水族園





- 住所:東京都江戸川区臨海町6-2-2
- 竣工:1989年
- 用途:水族園
- URL:公式ページ
葛西臨海水族園は、東京都江戸川区の葛西臨海公園内に建つ、東京湾に面した水族館である。
建築最大の特徴は「建物上に広がる噴水池」とその中央に設置された「ガラスドーム」が作り出す、好奇心を刺激するような外観である。
谷口吉生氏は、東京湾に面するという特異な敷地条件を考慮して、噴水池を設けることで海と水族館の一体性を作り出しつつ、ガラスのドームという人を惹きつける要素を突出させて、印象的な水族館を作り出した。
残念ながら、現在の葛西臨海水族園は、老朽化などの原因から建て替えが決定しており、2028年にリニューアルオープンする予定だ。
もし今の葛西臨海水族園を見たことなない方は、是非リニューアル前に一度は訪れていただきたい。
2.葛西臨海公園展望広場レストハウス




- 住所:東京都江戸川区臨海町6丁目
- 竣工:1995年
- 用途:展望施設 カフェテリア
葛西臨海公園展望広場レストハウスは、葛西臨海公園内に建つ、休憩・展望を主な用途とする施設である。
建物は「幅7m・長さ75m・高さ11m」のガラスの直方体によって囲われており、葛西臨海水族園のガラスドームと共鳴し、魅力的な外観を形成している。
さらに、この建築は「動線」が魅力的。
公園の園路をそのまま延長するように、緩やかな階段とスロープをメイン動線とすることで、立体園路を作り出し、まるで空中を散歩しているかのような体験ができるようになっている。
3.豊田市美術館




- 住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
- 竣工:1995年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
豊田市美術館は、愛知県豊田市の緑に囲われた小高い丘の上にある美術館である。
谷口吉生らしい、建物の水平・垂直ラインが際立ったシンプルな構成が特徴的な美術館であり、谷口吉生の代表作としても知られる。
さらに、施設前面に広がる水盤も印象的で、水平垂直の美しい建築が映り込む様子は何とも言えない美しさがある。
豊田市美術館について詳しくは以下の記事をご覧いただきたい。




4.法隆寺宝物館




- 住所:東京都台東区上野公園13-9
- 竣工:1999年
- 用途:博物館
- URL:公式ページ
法隆寺宝物館は、上野公園内に建つ日本最古の博物館「東京国立博物館」の、5つある館のうちの一つとなる施設である。
「崇高な収蔵物に対する畏敬の念」「周辺の自然を尊重」この2つのテーマを基に、東京にあるとは思えないような静寂・秩序・品格を持った博物館が完成している。
特に魅力的なのはアプローチ空間であり、豊田市美術館と同様に、建物前面に水盤が広がっており、その上を通ってエントランスまでたどり着く順路となっている。
このアプローチによって、日常から非日常へ来場者をいざなうのである。
詳しくは以下の記事をご覧いただきたい。




5.ニューヨーク近代美術館(MoMA)




- 住所:アメリカ合衆国ニューヨーク市ウエスト53丁目11
- 竣工:2004年
- 用途:美術館
- URL:公式ページ
ニューヨーク近代美術館は、アメリカ・ニューヨークに建つ近現代美術を専門に扱う美術館である。
谷口吉生はコンペに参加しない建築家として有名であった。理由としては、自分の派手ではない作風はコンペなどでは評価されにくいためだという噂がある。
しかし、珍しくニューヨーク近代美術館のコンペには参加した谷口吉生だが、それでしっかりと設計者に選ばれる辺りは、さすがとしか言いようがない。
建築としては、谷口吉生建築らしい水平垂直ラインの際立った構成と、建物前面に広がる都市の中の広場が魅力的な建築となっている。
6.鈴木大拙館(すずきたいせつかん)




- 住所:石川県金沢市本多町3-4-20
- 竣工:2011年
- 用途:博物館
- URL:公式ページ
鈴木大拙館は、金沢出身の仏教哲学者「鈴木大拙」の書籍・原稿・写真などを展示するために建てられた博物館である。
仏教哲学者の作品を展示するというかなり特殊な状況下ではあるが、日本伝統の空間構成を用いることで、作品の魅力を最大限に引き出す建築が完成している。
また、これまで何度も登場してきた「水平垂直ラインの強調」「水盤」といった谷口吉生らしさが存分に盛り込まれた建築でもある。
建築の詳細については、以下の記事をご覧ください。




7.GINZA SIX








- 住所:東京都中央区銀座6-10-1
- 竣工:2017年
- 用途:物販店舗 飲食店舗など
- URL:公式ページ
GINZA SIXとは、東京都中央区銀座にある、大型複合商業施設である。
建築最大の特徴は、ファサードの多様性であるが、これは日本伝統の「ひさし」と「のれん」をイメージして設計されている。
さらに、内部空間は4層吹き抜けの大空間があるのが特徴的で、その吹き抜けの上部には時期ごとに様々なオブジェが展示されている。
8.丸亀市猪熊弦一郎現代美術館・丸亀市立図書館




- 住所:香川県丸亀市浜町80-1
- 竣工:1991年
- 用途:美術館 図書館
- URL:公式ページ
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は、丸亀市出身の洋画家「猪熊弦一郎」の作品の展示を目的として建設された美術館である。図書館も併設している。
この美術館は、JR予讃線丸亀駅の目の前に位置しており、設計にあたっては駅との関係性が重視されている。
建築としては、駅に向かって大きな開口を持つ外構と、その内側に収められた直方体の展示空間という構成が特徴的。
さらに、この建築でもやはり谷口吉生らしい「水平垂直ライン」の美しさが際立っている。
9.加賀片山津温泉「街湯」








- 住所:石川県加賀市片山津温泉乙65-2
- 竣工:2012年
- 用途:公衆浴場
- URL:公式ページ
加賀片山津温泉「街湯」は、石川県加賀市という温泉街に建つ温泉施設である。
幅42m,高さ9.8mの2枚の鉄骨造の「ガラス壁」が特徴的。
最初の方で紹介した「葛西臨海公園展望広場レストハウス」と外観は似ているが、こちらはガラスの直方体ではなく、ガラスの壁を採用している。
個人的には、ガラスの壁の方が好みである。写真右上のガラスだけが立ち上がり、奥に空が透けて見える様子が、建築を逸脱していて面白い。
10.谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館




- 住所:石川県金沢市寺町5-1-18
- 竣工:2019年
- 用途:博物館
- URL:公式ページ
谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館は、谷口吉郎と谷口吉生という2人の建築家を顕彰することを主な目的として建設された建物である。
建築は、谷口吉生自らが設計。
建築としては、「暖色系の石で覆われた閉鎖的な箱」と「ガラスで覆われた開放的な箱」が組み合わされた構成が特徴的。
閉鎖空間では作品の保護・展示を行いつつ、開放空間では人々が集う賑わいの空間となっている。
11.つくばカピオ




- 住所:茨城県つくば市竹園1-10-1
- 竣工:1996年
- 用途:劇場 体育館
- URL:公式ページ
つくばカピオは、茨城県つくば市に建つ、劇場や体育館などが入った多目的施設である。
この建築最大の特徴は、写真左側にある、門型の構造体によって覆われた半屋外空間である。
この空間を覆う門構えは、高さ14m・幅83mの構造体となっており、魅力的な大空間を作り出している。
このような門構えは、「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」や「法隆寺宝物館」でも似たような構成が取られており、谷口吉生が好んで採用していたということがわかる。
12.資生堂アートハウス




- 住所:静岡県掛川市長谷1,120
- 竣工:1978年
- 用途:社有美術品および資料の保管と展示
- URL:公式ページ
資生堂アートハウスは、絵画や彫刻を展示する「美術部」と、日本の商業デザインの移り変わりを展示する「資料部」の2つの機能を持った施設である。
言うなれば、「美術館」と「博物館」を複合した総合展示場というわけである。
そのため、このような機能に合わせて、谷口吉生は建築を「円形」と「正方形」の建物2つで構成し、その2つの棟が滑らかに繋がるような回廊空間で結んでいる。
谷口吉生の作品集など




今回はこれで以上になります。
今回ご紹介した建築は、谷口吉生が設計した建築のほんの一部です。
そのため、今後も随時情報を更新していきたいと思っています。
気が向いたら、また本記事をご覧ください。
ではまた。
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