シーグラム・ビルディングとは?
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ+フィリップ・ジョンソン
- 住所:アメリカ・ニューヨーク・マンハッタン
- 竣工:1958年
- 用途:オフィスビル
シーグラム・ビルディングは、1958年にアメリカの都市・マンハッタンに建設された、高さが約157mにも及ぶ超高層ビル建築である。
建築の設計は、近代建築三大巨匠のひとり「ミース・ファン・デル・ローエ」と、モダニズム・ポストモダンを牽引した建築家「フィリップ・ジョンソン」の2人が共同で行われた。
この建築は、モダニズムが追求した「ユニバーサルスペース」「インターナショナルスタイル」「機能主義」といった概念をほぼ完璧に具現化しており、モダニズム建築の極致とも言われている。
さらに、シーグラム・ビルディングは、現在世界各地の都市で展開されている超高層ビルのプロトタイプ(原型)になったことでも知られており、現代社会に大きな影響を与えたとされている。
シーグラム・ビルディングの建築的特徴
マンハッタンに建つ超高層ビル
都市戦略研究所によって毎年発表される「世界の都市総合力ランキング」において、毎年ロンドンに次ぎ2位の位置につけるアメリカの大都市「ニューヨーク」。
そんなニューヨークの中でも、世界屈指の金融街であるウォール街や、繁華街であるタイムズスクエアなどが存在する「マンハッタン」は、摩天楼と呼ばれる超高層ビルが立ち並び、独特な街並みを形成している。
そして、そのマンハッタンの街には、ある有名な超高層ビルが建っている。
そう、それが今回紹介する「シーグラム・ビルディング」である.
ミースとフィリップの共作
シーグラム・ビルディングは、有名な建築家2人による共作として建設された超高層ビルである。
一人は、近代建築三大巨匠のひとりとして知られる、ドイツ出身の建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」。
もう一人は、モダニズム・ポストモダンを牽引したアメリカ出身の建築家「フィリップ・ジョンソン」である。
この2人が共同で設計したシーグラム・ビルディングは、モダニズム建築の極致だと言われている。
モダニズム建築の極致
モダニズム建築(特にビル建築)の特徴を簡単に説明するとすれば、主に以下の3点が挙げられる。
- 機能主義
- ユニバーサルスペース(均質空間)
- インターナショナルスタイル(国際様式)
そして、この3つの要素を見事に具現化した作品が「シーグラム・ビルディング」というわけだ。
実際シーグラム・ビルディングは、装飾性を極限まで排した機能主義的な仕上げになっているし、内部はフレキシブルな均質空間として展開されている。
さらに、建物の形態は非常にシンプルな直方体型になっており、インターナショナルスタイルという思想を顕著に具現化していることがわかる。
超高層ビルのプロトタイプ(原型)
「正直、そこら辺にあるビルと何が違うの?」
シーグラム・ビルディングに対してこのように感じる方も多いと思う。
しかし、この反応は間違っていない。なぜなら、現在世界中の都市に立てられている超高層ビルは、大げさに言えば、このシーグラム・ビルディングをプロトタイプとして建設されているからだ。
それぐらいこのシーグラム・ビルディングは、現代社会におけるビル建築の究極形となっているわけである。
その究極形が、約65年前に建てられているというのが驚きだが。
建物前面に広がる公開空地
シーグラム・ビルディングがビル建築のプロトタイプと言われる理由の一つに「公開空地」が存在する。
ミースらは、マンハッタンのセットバック規制をクリアしつつ、国際様式・均質空間としての直方体型の建物を実現するために、建物全体を前面道路から後退させ、生まれた余白を公開空地として街に提供するという方法を採用した。
この公開空地は、その後のニューヨークの街並みに大きな影響を与えることとなる。
1961年、ニューヨーク市はゾーニング条例の大幅な改訂を行ったのだが、その条例は、公開空地を設けることを推奨するような内容となっている。
つまり、シーグラム・ビルディングのようなビルを建てることを推奨するような条例が、ニューヨーク全体に適用されたというわけである。
ブロンズとガラスで仕上げられたファサード
シーグラム・ビルディングのファサードは、ブロンズとガラス、主にこの2つの素材によって構成されている。
ちなみに、現代のガラスカーテンウォール素材の主流は、アルミとガラスの組み合わせである。
ブロンズは、アルミよりも高くつくが、その分、仕上がりの美しさは段違い。
ミースの格言の一つに『God is in the details(神は細部に宿る)』という言葉があるが、ブロンズという素材の使用は、ミースのこの思想を反映させたものなのだろう。