【建築特徴】ベルリン国立美術館・新ナショナルギャラリー|ミース

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ベルリン国立美術館・新ナショナルギャラリーとは?

photo by © Raimond Spekking/CC 表示-継承 4.0
  • 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
  • 住所:ドイツ・ベルリン
  • 竣工:1968年
  • 用途:美術館

ベルリンの中心地に、複数の棟に分散する形で存在している「ベルリン国立美術館」。

そんなベルリン国立美術館群を構成する建物の一つに『新ナショナルギャラリー』と呼ばれる近代建築が存在する。

この建物を設計したのは、近代建築三大巨匠のひとりとして知られるドイツ出身の建築「ミース・ファン・デル・ローエ」である。

新ナショナルギャラリーは、8本の十字柱、グリッド状の梁、建物全面を覆うガラス、という最小限の要素によって構成されており、モダニズムが追求したユニバーサルスペースを見事に具現化している。

また、この建築はミースが亡くなる前年に竣工したことでも知られており、彼のエッセンスが詰まった最高傑作としても名高い。

ベルリン国立美術館・新ナショナルギャラリーの建築的特徴

ベルリン国立美術館群を構成するギャラリー

photo by A.Savin/FAL

1830年に「旧博物館」としてベルリンの中心地に発足した『ベルリン国立美術館』。

以後、年々増加するコレクションに対応するため、新たな展示棟を次々と建設しながら成長してきたベルリン国立美術館は、その性質から「ベルリン国立美術館群」とも呼ばれるようになった。

そして、そのベルリン国立美術館群を構成する建物の一つに『新ナショナルギャラリー』と呼ばれる近代建築が存在。

この新ナショナルギャラリーでは、20世紀初頭の美術作品を中心に展示している。

ミース晩年の代表作

新ナショナルギャラリーを設計したのは、近代建築三大巨匠のひとりとして知られる建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」である。

彼は元々ドイツ出身の建築家であったが、ナチス・ドイツの独裁政権から逃れるため、後年はアメリカに亡命し設計活動を展開。

アメリカに亡命してからというもの、ヨーロッパでは全く設計活動を行っていなかったが、唯一晩年にあたる1968年にこの新ナショナルギャラリーの設計を担当している。

そのため、この新ナショナルギャラリーにはミースのエッセンスが結集されており、彼の晩年の代表作としても建築界では人気を博している。

最小限の要素で構成された近代建築

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新ナショナルギャラリーの構成要素を分解してみると、大きく分けて以下の3つの要素に集約される。

  • 8本の十字断面柱
  • 3.6m間隔で並べられたグリッド状の梁(屋根)
  • 建物全面を囲うガラスの壁

この3つの要素が、105m×110mの御影石張りの基壇の上に乗っかている。

この無駄を極限まで排した構成は、ミース建築および近代建築の真骨頂として知られているが、新ナショナルギャラリーは特にその洗練度が群を抜いている。

ユニバーサル・スペースを体現した空間

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ミースが提唱した建築思想の中に「ユニバーサル・スペース(均質空間)」というものが存在する。

これは、床・天井・柱・壁という最小限の要素だけで構成される空間のことで、無駄な要素がない均質的な空間であるため、どのような用途にも対応できるという特性を持っている。

そして、このユニバーサル・スペースという思想を見事に体現した建築物が、ミースの代表作「バルセロナ・パビリオン」や「シーグラム・ビルディング」であり、そしてこの「新ナショナルギャラリー」もその一つなのである。

初期作「バルセロナ・パビリオン」との類似性

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1929年に竣工したミース初期の代表作「バルセロナ・パビリオン」。

この「バルセロナ・パビリオン(1929)」と「新ナショナルギャラリー(1968)」には類似点が多数存在する。

まず、上の写真を見てわかる通り、正方形型の屋根を柱が持ち上げているという建物の全体構成がそっくりだ。そして、その正方形型屋根を支える柱はサイズ感は違うが、どちらも十字型断面をしており、さらに総数はどちらも8本である。

約40年の時を経て建てられた新ナショナルギャラリーが、ここまでバルセロナ・パビリオンの構成と似ているのである。

この事実から、ミースの思想の一貫性や、時の流れや用途の違いに左右されないミース建築の普遍性が窺い知れる。

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