【建築特徴】タリアセン|フランク・ロイド・ライト

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タリアセンとは?

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  • 設計:フランク・ロイド・ライト
  • 住所:ウィスコンシン州(イースト)・アリゾナ州(ウェスト)
  • 建設:イースト1911年~、ウェスト1938年~
  • 用途:自邸・事務所・建築塾

タリアセンは、建築家フランク・ロイド・ライトの「自邸兼設計事務所」として1911年から建設が開始された建築物である。

自宅・設計事務所の他に、このタリアセンにはもう一つ「建築塾」としての機能も備わっており、ライトの弟子たちが共同生活を営みながら、建築の実践と教育を行う場にもなっていた。

そんなライトがエッセンスが詰まったこのタリアセンは、アメリカ内の2か所に存在している。

一つは、アメリカ合衆国中西部最北の地・ウィスコンシン州に建つ「タリアセン・イースト(1911年~)」。※単にタリアセンともいう。

もう一つは、アメリカ合衆国南西部のアリゾナ州に建つ「タリアセン・ウェスト(1938年~)」である。

ライトとその弟子たちは毎年2回、隊を組んでウィスコンシン州とアリゾナ州を行き来していたという。

タリアセンの建築的特徴

フランク・ロイド・ライトの自邸兼設計事務所

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近代建築の三大巨匠のひとりとして知られるアメリカの建築家「フランク・ロイド・ライト」。

そんな世界的建築家・ライトの自邸兼設計事務所として建てられた建築物が、アメリカのウィスコンシン州とアリゾナ州の2か所に存在している。

その名も「タリアセン」。

ライトはこのタリアセンで、落水荘やグッゲンハイム美術館といった代表作を設計している。

建築塾「タリアセン・フェローシップ」としての機能も

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先ほど、タリアセンは「ライトの自邸兼設計事務所である」と説明したが、実はこの2つの機能以外にも、タリアセンには「建築塾」としての機能も備わっている。

この建築塾のことを「タリアセン・フェローシップ」という。

タリアセン・フェローシップは、ライトの弟子たちが共同生活をしながら、建築の理論と実践を学ぶ場である。

つまり、フランク・ロイド・ライトという建築家が教授として在籍している建築学校のようなものなのである。

実は、このタリアセン・フェローシップは現在もライト財団の手によって存続されており、世界中からライトに憧れた建築学生たちが集まっているという。

ウィスコンシン州の「イースト」、アリゾナ州の「ウェスト」

タリアセン・イースト
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タリアセン・ウェスト

先ほども述べたが、タリアセンという名が冠された建築物は、ウィスコンシン州とアリゾナ州の2か所に存在している。

そして、その2か所は以下のように呼ばれている。

  • ウィスコンシン州:タリアセン・イースト(1911年~)
  • アリゾナ州:タリアセン・ウェスト(1938年~)

先に建設されたタリアセン・イーストは、単にタリアセンという場合もある。

ライトとその弟子たちは、この2か所に存在するタリアセンを年に2回、キャラバン(隊商)を組んで大移動していたという。

3つの施設で構成された「タリアセン・イースト」

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タリアセン・イーストは、800エーカー(約96万坪)にも及ぶ広大な敷地の中に、下記の3つの施設が分散する形で建てられている。

タリアセン・イーストの構成施設

  • タリアセン(住居)
  • ヒルサイド(ホームスクール)
  • ミッドウェイ(農業用施設)

タリアセンとヒルサイドに関しては説明不要だと思うが、「なぜ農業用施設があるの?」と気になる人も多いだろう。

先ほども述べた通り、ライトとその弟子たちは、このタリアセンに住み込みながら建築(ライトの思想)を学んでいた。

そして、ライトの思想には「プレーリースタイル(草原様式)」や「有機的建築」など、自然と建築の関係性にフォーカスしたものが多く存在する。

この2つをの要素「住み込み」と「自然と建築の関係にフォーカスした思想」を掛け合わせると、おのずと導かれるのが「自給自足」ではないだろうか。

そう、ライトとその弟子たちは、このタリアセンで自給自足的な生活を営んでいたのである。

だからこそ、農業用施設なるものが存在するのだ。

世界遺産にも認定されたライトの代表作

フランク・ロイド・ライトは、複数の前衛的な作品で近代建築界を牽引した建築家である。

そんな彼の功績の顕彰を目的として、ライトの代表作8つは「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として世界遺産に登録されている。

フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群

  • ユニティー・テンプル
  • ロビー邸
  • タリアセン・イースト
  • バーンズドール邸
  • 落水荘
  • ジェイコブス邸
  • タリアセン・ウェスト
  • グッゲンハイム美術館

上記の通り、この世界遺産の中には「タリアセン・イースト」と「タリアセン・ウェスト」が両方含まれている。

ライトの代表作と言えば、プレーリースタイルの傑作「ロビー邸」や、名作住宅「落水荘」、美術館建築の傑作「グッゲンハイム美術館」などがよく挙げられるが、タリアセンの名が挙げられることはあまりない。

しかし、2019年にこれらの代表作と共にタリアセンが世界遺産に登録されたことによって、この名作も再読されるようになったのだ。

ライトのエッセンスが詰め込まれた作品

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  • 「落水荘」最大の特徴である、水辺に飛び出したテラス。
  • 「ロビー邸」の特徴である、プレーリースタイル特有の地に這いつくばるような建築構成。
  • 「帝国ホテル」で見られる、東洋風の屋根や質感の粗い石材による装飾。

これらのライトの代表作に散りばめられた独特な構成が、タリアセンでも見られる。

つまり、タリアセンはフランク・ロイド・ライトのエッセンスを詰め込んだ建築作品なのではないだろうか。

帝国ホテルや落水荘の方がタリアセンより後に竣工している、というツッコミは置いといて、私はタリアセンにライトの思想の真髄が隠されている気がするのだ。

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