すみだ北斎美術館とは?

すみだ北斎美術館は、江戸時代後期の浮世絵師「葛飾北斎」の作品を保存・展示している美術館である。
設計を務めたのは、国内外で活躍する建築家妹島和世。
「新しい風景をつくる美術館」
このコンセプトを基に、周辺の街並みと調和しながらも、象徴性のある建築物がつくり出されている。
妹島和世とは?
- 1956 茨城県日立市に生まれる
- 1979 日本女子大学卒業
- 1981 伊東豊雄建築設計事務所入所
- 1987 妹島和世建築設計事務所設立
- 1995 西沢立衛とSANAAを設立
- 1998 日本建築学会賞受賞
- 2006 日本建築学会賞2度目受賞
- 2010 プリツカー賞受賞
妹島和世は、2010年に建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞した建築家である。
代表作としては、「金沢21世紀美術館」「ルーブル・ランス」「日立駅」などが挙げられる。
また、妹島和世は同じく建築家である西沢立衛と建築家ユニット「SANAA」を結成して、世界中で活躍していることでも有名である。
建築の特徴

すみだ北斎美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 街のスケールとの調和
- 街との接点をつくるスリット状の開口
- 「裏」をなくすアプローチ空間
- 周辺環境を映し出す「アルミパネル」
- 消える建築
街のスケールとの調和

すみだ北斎美術館の敷地周辺には、大小さまざまなヴォリュームの建物が立ち並んでいる。
この街並みのスケール感に合わせるべく、すみだ北斎美術館はいくつかの小さなヴォリュームに分けられ、それらが曖昧に集まって全体を構成している。
さらに、ヴォリュームの所々は傾斜しており、これによりスリット状の繊細な開口部が生まれている。
街と美術館の接点をつくる「スリット」


ヴォリュームのズレによって生まれたスリット状の開口部。
これらの開口部は、内部からはスカイツリーや街並みなどの風景が望め、外部からは美術館内部の様子がうかがえる。
つまり、美術館と街を接続する役割をスリットが果たしているということである。
「裏」をなくすアプローチ空間


さらに、このスリットは1階部分ではアプローチ空間を形成している。
2枚目の写真を見ると、1階部分には四方にアプローチ空間が存在し、それらが中心部分で交わっていることがわかる。
この構成によって建物に「裏」というものがなくなり、街に対して寛容的な美術館となる。
周辺環境を映し出す「アルミパネル」

美術作品を外部環境から保護するために、すみだ北斎美術館はスリット部分以外に開口部はほとんど設けられていない。
この構成によって生まれた面積の大きい外壁部には、全面的に「アルミパネル」が設置されている。
このアルミパネルは淡く反射する鏡面となっているため、周辺環境がパネルに映り込み、街並みに美術館が溶け込むようになっている。
消える建築

すみだ北斎美術館のすぐ近くで上を見上げると、このような風景を見ることができる。
外壁のアルミパネルに空の青色が映り込み、一瞬美術館が消えたように(=街に溶け込んだように)見える。
このステルス性こそ、アルミパネルを大胆に使用することのメリットであろう。
建築概要
- 所在地:東京都墨田区
- 竣工 :2016年4月
- 用途 :美術館
- 構造 :RC造 S造
- 階数 :地下1階 地上4階 塔屋1階
- 設計 :妹島和世建築設計事務所
- 施工 :大林・東武谷内田建設共同企業体
- 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
- 設備 :森村設計
- URL :https://hokusai-museum.jp/modules/Page/pages/view/605
最後に・・・
以上がすみだ北斎美術館の特徴でした。
街並みに美術館が溶け込むようにするための工夫が随所に見られながらも、象徴性も併せ持つ魅力的な建築になっていたと思います。

是非一度、すみだ北斎美術館に訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。