金沢21世紀美術館とは?

金沢21世紀美術館とは、21世紀の新しいモデルとなるように設計された、石川県金沢市に建つ美術館である。
設計コンセプト「明るい開放的な美術館」
設計を務めたのは、建築家ユニット「SANAA」。
年々減少する美術館への来館者数に対して、21世紀にはどのようなことが求められているのか、美術館スタッフ・アーティストと共に三位一体となって議論した。
そんな、金沢21世紀美術館の特徴を今回ご紹介します!!
SANAAとは?
- 1995年 SANAAを設立
- 1996年 日本建築学会賞作品賞受賞
- 2006年 日本建築学会賞作品賞受賞(金沢21世紀美術館)
- 2010年 プリツカー賞受賞
SANAAとは、建築家として有名な妹島和世と西沢立衛によって設立された建築事務所である。
代表作としては、フランスにあるルーブル美術館の分館「ルーブル・ランス」や、ニューヨークにある「ニューミュージアム」などが挙げられる。
今回紹介する金沢21世紀美術館は、日本にあるSANAA建築の代表作でもあります!!
建築の特徴




金沢21世紀美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 表裏をなくす「円形の建物」と「4つのエントランス」
- 円形建物内に点在する独立した部屋
- 「交流ゾーン」と「美術館ゾーン」に分けられた内部空間
- 建物を貫く「貫通廊下」
- 光を取り入れる「中庭」
- 多種多様な恒久展示作品
- 様々なデザイナーズチェア
表裏をなくす「円形の建物」と「4つのエントランス」




金沢21世紀美術館の敷地は、全方位からアクセスできる立地条件だったため、円形の建物とすることで表裏のない建物を作り出している。
また、円形の建物に対して、4つのエントランスを設けることにより、まさに四方からアクセスできる美術館になっている。
この構成によって、だれでも気軽に立ち寄りやすくなっています!!
円形建物内に点在する独立した部屋




金沢21世紀美術館は、円形の大きな建物の中に四角い部屋がいくつも点在するような、他に類をみない構成となっている。
- 次の展示に移動する際、一度通路を挟むため、毎度気分をリセットできる。
- 通路を介した展示室の配置によって、自由な順番で作品を鑑賞できる。
「交流ゾーン」と「美術館ゾーン」に分けられた内部空間




上の図のように、金沢21世紀美術館の内部は、中央の「交流ゾーン」と、外周部の「美術館ゾーン」に分けられている。
この両者は、開閉可能なアクリル扉によって分けられているが、それらを開放すると建物全体が一つの大きな展示空間のようにもなる。
交流ゾーン




photo by pat_ong,CC 表示 2.0
シアターや市民ギャラリー、託児室などがある市民交流の場。無料で出入りできる。
上の写真のように、交流ゾーンには様々な「デザイナーズチェア」が設置されて、市民がゆっくりと休憩できる場になっている。
また、外周部の壁が前面ガラス張りになっているため、外の自然豊かな景色も眺められる、魅力的な空間となっている。
美術館ゾーン




主に展覧会を行うための場。有料となっている。
美術館ゾーン展示室と中庭などによって構成されており、展示室は美術館特有のホワイトキューブ状になっている。
内部の照明は、中庭からの採光を考慮し抑えられているようにも見える。
建物を貫く「貫通廊下」




円形建物の中に不規則のように点在する部屋だが、このような貫通する廊下を設けられるように考えて配置されている。
この貫通廊下によって、建物中央にまで光や外の景色を取り込むことが狙いである。
光を取り入れる「中庭」




さらに、建物内には4つの大きな中庭が配置されている。
これは、大きな建物内部に光をもたらしつつ、展示と展示の間の気分を切り替えるという役割も果たしている。
多種多様な恒久展示作品
この美術館には内外問わず、あちらこちらに恒久展示作品が散りばめられている。
スイミングプール (レアンドロ・エルリッヒ)




中庭の一つに設置されているスイミングプール。
水が奥深くまで溜まっているように見えるが、実際は透明のガラスの上に10cmほどしか水が張られていない。
これにより、上からは水の中に人がいるように見え、下からはプールの中にいるような不思議な体験ができる。
雲を測る男 (ヤン・ファーブル)




これは、アメリカの『終身犯』という映画からインスピレーションを受けて作成された作品である。
鳥類学者の主人公が、研究の自由を奪われ「今後は何をして過ごすのか」という質問に対して「雲でも測って過ごすさ」と答えたというシーンを基にしている。
緑の橋 (パトリック・ブラン)




ガラスの廊下を囲うようにして設置されている「緑の橋」。
白を基調とした内部空間に豊かな変化をもたらしている。
ラッピング (LAR/ フェルナンド・ロメロ)




photo by Yoshihide Urushihara,CC BY-SA 2.0
建物の外に設けられた、子どもが中に入ることのできる作品。風船を内側から6方向に押し出した形をイメージして制作されている。
材料は、パイプとメッシュを用いているため、開放的で軽やかなパビリオンとなっている。
カラー・アクティヴィティ・ハウス (オラファー・エリアソン)




色の三原色(シアン・マゼンタ・イエロー)を用いた曲面ガラスが中心に向かって渦巻き状に設置された作品。
見る場所や角度、天気によってさまざまに見え方が変化し、一風変わった体験ができる空間となっている。
アリーナのための クランクフェルト・ ナンバー3 (フロリアン・クラール)




建物の外の芝生に設置された12個のラッパ状の作品。
2個ずつでペアとなり、一方で声を出すと、地中でつながるもう一方のラッパまで音が繋がる「伝声管」となっている。
しかし、隣同士がペアというわけではないため、どこから声が聞こえてくるのか分からないのが魅力である。
様々なデザイナーズチェア
金沢21世紀美術館には、多種多様なチェアが設置されているが、これらはSANAAやデザイナーによる作品でもある。
フラワーチェア




ラヴィットチェア




ドロップチェア




建築物概要
- 所在地:石川県金沢市広坂
- 竣工 :2004年9月
- 用途 :美術館
- 構造 :S造 RC造 SRC造
- 階数 :地下2階 地上2階
- 高さ :14.9m
- 設計 : 妹島和世+西沢立衛/SANAA
- 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
- 施工 :竹中工務店など
- 設備 :イーエスアソシエイツ
施設概要
- Tel :076-220-2800
- 休館日 :年末年始など
- 料金 :展覧会により異なる
- 営業時間:展覧会ゾーン「10:00~18:00」交流ゾーン「9:00~22:00」
- アクセス:JR金沢駅からバスにて約10分
- URL :https://www.kanazawa21.jp/
最後に・・・
以上が21世紀の美術館の在り方を提案した「金沢21世紀美術館」の特徴でした。
様々な作品が交流ゾーンにまで配置され、まさに市民に開かれた美術館になっていたと思います。
金沢市を訪れる際は是非、立ち寄ってみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。
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