国立新美術館とは?
国立新美術館は、様々な美術館を手掛けた建築家黒川紀章氏が設計した最後の美術館である。そのため黒川紀章のすべてが詰まった作品といっても過言ではないだろう。
国立新美術館は、一般的な美術館とは違い、収集品を持っていない。その代わりに、企画展・公募展といったアクティブな展示がなされている、世界でも類を見ない施設である。
これは、21世紀になり、美術品のデジタルデータ化が進んだ時代に対する、美術館の新しい在り方の一つを提示した作品ともなっている。

また、国立新美術館は映画「君の名は」で登場し話題ともなりました!!
黒川紀章とは?
- 1934年 愛知県海部郡蟹江町にて生まれる
- 1953年 東海高等学校卒業
- 1957年 京都大学工学部建築学科卒業
- 1957年 東京大学大学院建築学専攻修士課程進学
- 在学中 黒川紀章建築都市設計事務所を設立
- 1959年 メタボリズムを提唱
- 1960年 世界デザイン会議に参加
- 2007年 東京都知事選挙、参院選に立候補
- 2007年 参院選2か月後に死去
黒川紀章は、中銀カプセルタワービルや広島市現代美術館などの有名作品を手掛けた建築家である。
学生時代は丹下健三の研究室で学び、のちに建築的理論「メタボリズム」を提唱する。
さらに、黒川紀章は建築家だけではなく文筆家や政治活動家、さらにはバラエティー番組などにも出演するなど、活動の幅が広い。

そんな黒川紀章の晩年の代表作国立新美術館について今回は紹介します!!
建築概要
- 所在地:東京都港区六本木7-22-1
- 竣工 :2006年5月
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄骨造 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 階数 :地下2階 地上6階 塔屋1階
- 高さ :33.269m
外観の特徴
国立新美術館の外観の特徴としては次のような点が挙げられる。
- オープンエリアと展示エリアの明確な分離
- ガラスのルーバー
- 有機的な曲線のカーテンウォール
曲面ガラスカーテンウォール

この美術館のコンセプトは「森の中の美術館」である。
そのため、ファサードを山や波などの有機的な曲線をイメージしたガラスカーテンウォールによって囲うことで、周囲の緑や光を感じる内部空間としている。
ガラスのルーバー

ガラスカーテンウォールには紫外線や太陽熱をカットするための水平ルーバーが取り付けられている。これは、紫外線や太陽熱を100%カットするという設計条件によって用いられたものである。
ルーバーは、ドットをプリントしたフィルムをサンドイッチにした二重ガラスで構成されており、これによる紫外線などをしっかりとカットしている。
オープンエリアと展示エリアの明確な分離

ガラスカーテンウォールによる光のあふれるオープンエリアとは対照的に、展示空間は壁によって閉じられた空間となっている。
これは、上の写真に顕著に表れている。手前は曲線的なガラスカーテンウォールであるが、奥は箱型の空間となっていることがわかる。
この明確な分離によって、美術館と光のあふれる空間という相反する空間を共存させている。
内観の特徴

内観の特徴としては次のような点が挙げられる。
- 逆円錐形の意匠
- 広々としたアトリウム空間
- 機能的な展示室
逆円錐形の意匠

国立新美術館内には逆円錐型の意匠が見られるが、これは黒川紀章が好んで使用した形状としても知られている。この円錐に合わせカーテンウォールの曲線も定められている。
この円錐の内部はトイレや設備、上部にはカフェやレストランが設置されている。
広々としたアトリウム空間

この広々とした大空間には、ガラスカーテンウォールによって緑や自然光が入り込み、内部にいても外にいるようにも感じられる、中間領域が作り出されている。
左端に見える壁は、木材が張り付けられ、日本古来の照明である行灯(あんどん)をイメージした「光かべ」となっていて、落ち着いた空間を作り出している。
機能的な展示室

写真左の「光かべ」の奥に展示室が収まっている。全部で7つからなり、そのうち一つは企画展示室として8mの天井高を持っている。
また、公募展・企画展を中心とするこの美術館では、作品の搬出入の動線が重要な課題となったが、1,000㎡の展示に対して一台ずつのトラックが作品の搬出入をできるように動線が計画された。
最後に・・・
以上が建築家黒川紀章が設計した最後の美術館である国立新美術館でした。
曲線が美しいガラスカーテンウォールが特徴的な、自然を感じられる魅力的な美術館であったと思います。

黒川紀章さんは他にも、名古屋市美術館など美術館作品をたくさん手掛けているため、是非他の作品もご覧ください!!
閲覧していただきありがとうございます。