【建築特徴】ケ・ブランリ美術館|ジャン・ヌーヴェル

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ケ・ブランリ美術館とは?

photo by Romary/CC 表示 2.5
  • 設計:ジャン・ヌーヴェル
  • 住所:フランス・パリ
  • 竣工:2006年
  • 用途:美術館

ケ・ブランリ美術館は、ヨーロッパ以外の地域(アフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ)の美術品や資料を展示するための施設として、2006年フランス・パリに開館した美術館である。

本美術館は、フランス・パリの象徴であるエッフェル塔の足元に計画され、建物の周囲にはフランスのランドスケープ・アーキテクト「ジル・クレモン」がデザインした庭園が広がっている。

建築の設計は、フランスを代表する現代建築家「ジャン・ヌーヴェル」が担当。

建物全体は、1階部分がピロティ空間として空洞化されており、人々の流れや風の流れが建物によって途切れないような構成となっている。

さらに、ケ・ブランリ美術館のファサードには多様性があり、太陽が当たる南側は鱗のようなルーバーで覆われているのに対して、北側はガラス面から複数の箱が飛び出したような異質な外観を呈している。

前衛的建築家ジャン・ヌーヴェルが手がけた建築作品の中でも、特にユニークな特徴を持つ建築物である。

ケ・ブランリ美術館の建築的特徴

ヨーロッパ以外の地域にフォーカスを当てた美術館

ヨーロッパの一部の人間の間には「西洋文明は他の文明とは比較にならない格別な文明だ」などといった、ヨーロッパ中心主義的な思想が蔓延している。

この偏見に満ちた思想に反対するための施設として、2006年フランス・パリに、ヨーロッパ以外の地域にフォーカスを当てた美術館「ケ・ブランリ美術館」が開館した。

この美術館では、ヨーロッパ以外の地域(アジア・オセアニア・アフリカ・アメリカ)における、古代から現代の美術品や資料などを展示している。

エッフェル塔の足元に位置する敷地

誰もが知るフランス・パリのシンボル的建造物「エッフェル塔」。

1889年から姿・形を変えることなくパリの街に力強く佇むエッフェル塔の足元、セーヌ川の流域にケ・ブランリ美術館は位置している。

建築の設計を務めたのは、フランスを代表する建築家「ジャン・ヌーヴェル」である。

ジャン・ヌーヴェルの代表作

photo by Christopher Ohmeyer/CC 表示-継承 2.0

ジャン・ヌーヴェルは、プリツカー賞やRIBAゴールドメダルなど、世界的権威のある建築賞を総なめにするフランス出身の建築家である。

1987年にパリに竣工した「アラブ世界研究所」で彼の名は一躍世界に轟き、その後も世界各地で前衛的な建築作品を数多く手がけている。

さらにジャン・ヌーヴェルは、ガラスと光を巧みに操る現代建築家として知られており、ケ・ブランリ美術館でもガラスによって魅力的な光の空間を生み出している。

人や風の流れを連続させるピロティ空間

ケ・ブランリ美術館は、長方形型の大きな敷地の中央に建物が建ち、その周囲を緑豊かな庭園が取り囲む構成になっている。

そして、敷地中央に建つ建物の1階部分は、大きなピロティ空間として空洞化されており、人の流れや風の流れなどに連続性をもたらしている。

さらに、建物を持ち上げている柱は、太さや位置がランダムに設定されており、まるで森の中の木立を思わせる。

建物周囲に広がる庭園

photo by Als33120/CC 表示-継承 4.0

ケ・ブランリ美術館の建物周囲を覆う、緑豊かな庭園。

この庭園は、世界的に有名なフランスのランドスケープ・アーキテクト「ジル・クレモン」がデザインしている。

ジル・クレモンは、時がたち庭園の植物が成長していくにつれて、収蔵作品の故郷の原風景が蘇るようなランドスケープデザインを行っている。

庭園と街の間を隔てるガラス面

ケ・ブランリ美術館の北側、ジル・クレモンの庭園と前面道路の境目には、透明度の高いガラス面が設置されている。

正直、ここにはガラス面を設置せず、庭園を街に対して解放したほうが街並みの連続性が生まれ良い気もする。

しかし、このガラス面があるからこそ、敷地内の美術館に興味・関心が湧きあがる気もする。

どちらがいいのかは、人それぞれの感性次第なのかもしれない。

ガラス面から突出する箱

ケ・ブランリ美術館最大の特徴は、ガラス面からカラフルな箱型のボリュームが突出した北側ファサードであることは間違いないだろう。

箱型ボリュームは、サイズもばらばらだし、飛び出し具合もそれぞれ異なっている。

一体このボリュームは何のために存在しているのだろうか?

この答えは、建物の中を見ると明らかになる。

突出する箱の正体は「展示箱」

photo by Ninara/CC 表示 2.0

上の写真は、北側ファサードを内部から見たものである。

ファサードから突出していた箱型ボリュームは、内部には突出しておらず、その代わりに箱内部への入口のようなものが開けられていることがわかるだろう。

この箱の中、実は展示空間になっている。

広々とした展示空間とは対照的に、小さの箱の中では、作品と人間が1対1で対面し、作品の世界観に浸れる鑑賞空間が展開されているのである。

ジャン・ヌーヴェルにしかできない、ユニークな空間演出方法である。

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