建築家ミース・ファン・デル・ローエとは?
ミース・ファン・デル・ローエの経歴
- 1886年:ドイツ・アーヘンに生まれる
- 1905年:ブルーノ・バウル事務所勤務
- 1908年:ペーター・ベーレンス事務所勤務
- 1912年:ベルリンで事務所設立
- 1915年:第一次世界大戦参戦
- 1930年:バウハウス第3代校長就任
- 1933年:ナチスによりバウハウス閉鎖
- 1938年:アメリカ・シカゴに亡命
- 1938年:アーマー大学(現イリノイ工科大学)主任教授
- 1959年:RIBAゴールドメダル受賞
- 1960年:AIAゴールドメダル受賞
- 1969年:逝去(83歳)
ミース・ファン・デル・ローエは、「ル・コルビュジェ」「フランク・ロイド・ライト」と共に近代建築の三大巨匠の1人として知られる、モダニズムを代表する建築家である。
ミースが残した「Less is more(より少ないことは、より豊かなことである)」という言葉は、モダニズムの思想を端的かつ象徴的に表した言葉として、建築界で語り継がれている。
ミースの代表作品としては、住宅建築の傑作「ファンズワース邸」や、現代の超高層ビルの走り「シーグラムビル」、モダニズム建築の代表作「バルセロナ・パビリオン」などが挙げられる。
また、モダニズムの源流となった教育機関「バウハウス」の3代目校長を務めたことでも知られており、理論と実践の両面からモダニズムと向き合った建築家であったことがわかる。
1959年にはRIBAゴールドメダル、1960年にはAIAゴールドメダルという世界的権威のある建築賞を受賞した後、1969年にその壮絶な人生に幕を閉じた。
ミース・ファン・デル・ローエの代表作品6選
1.ファンズワース邸
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:アメリカ合衆国イリノイ州・プラノ
- 竣工:1951年
- 用途:週末住宅
- URL:建築詳細ページ
ファンズワース邸は、摩天楼発祥の地として知られるアメリカの都市・シカゴから西へ80㎞ほど進んだ位置、自然豊かなフォックス川流域に建つ住宅建築。
近代住宅建築の最高傑作として知られると共に、ミースの代表作の一つにも名を連ねる名作住宅である。
建物全体は、洪水対策のために地上面から1.5mほど床面が持ち上げられており、非常に軽快な外観を形成
また、建物の内部空間は、ミースが提唱した建築思潮「ユニバーサル・スペース」を体現したようなフレキシブルな空間となっており、彼のエッセンスが詰まった作品であることが見て取れる。
建築詳細ページ
2.バルセロナ・パビリオン
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:スペイン・バルセロナ
- 竣工:1929年(1986年に復元)
- 用途:パビリオン(現・記念館)
- URL:建築詳細ページ
バルセロナ・パビリオンは、1929年にスペイン・バルセロナで開催された「バルセロナ万国博覧会」のドイツ館として建設されたパビリオン建築である。
この建築は、万博のパビリオン(仮設建築)として建設され施設であるため、万博終了後にはすぐに解体されてしまった。
しかし、モダニズム建築の特徴を象徴的に表したミースの代表作として高い評価を得ていたため、ミース生誕100周年に当たる1986年に当時の姿のまま正確に復元され、現在は「ミース・ファン・デル・ローエ記念館」として公開されている。
ミースの初期の代表作であると共に、モダニズムの傑作としても知られる建築作品である。
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3.シーグラム・ビルディング
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ+フィリップ・ジョンソン
- 住所:アメリカ・ニューヨーク・マンハッタン
- 竣工:1958年
- 用途:オフィスビル
- URL:建築詳細ページ
シーグラム・ビルディングは、1958年にアメリカの都市・マンハッタンに建設された、高さが約157mにも及ぶ超高層ビル建築である。
建築の設計は、近代建築三大巨匠のひとり「ミース・ファン・デル・ローエ」と、モダニズム・ポストモダンを牽引した建築家「フィリップ・ジョンソン」の2人が共同で行われた。
この建築は、モダニズムが追求した「ユニバーサルスペース」「インターナショナルスタイル」「機能主義」といった概念をほぼ完璧に具現化しており、モダニズム建築の極致とも言われている。
さらに、シーグラム・ビルディングは、現在世界各地の都市で展開されている超高層ビルのプロトタイプ(原型)になったことでも知られており、現代社会に大きな影響を与えたとされている。
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4.トゥーゲントハット邸
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:チェコ共和国・ブルノ
- 竣工:1930年
- 用途:邸宅
- URL;建築詳細ページ
トゥーゲントハット邸は、チェコ第2の都市としてして知られる観光地「ブルノ」に建つ住宅建築である。
この邸宅は、ミースの代表作であると共に、近代建築の特徴を顕著に表したモダニズムの最高傑作としても知られており、2001年にはユネスコの世界遺産にも登録されている。
敷地は、ブルノの傾斜地に位置しており、その傾斜に沿うように、白く純粋な形状をした3階建ての建物が建てられている。
建物内部には、コルビュジェが提唱した「近代建築の五原則」の一つ「自由な平面」を具現化するなど、近代建築家・ミースのエッセンスが詰まった構成となっている。
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5.ベルリン国立美術館・新ナショナルギャラリー
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:ドイツ・ベルリン
- 竣工:1968年
- 用途:美術館
- URL:建築詳細ページ
ベルリンの中心地に、複数の棟に分散する形で存在している「ベルリン国立美術館」。
そんなベルリン国立美術館群を構成する建物の一つに『新ナショナルギャラリー』と呼ばれる近代建築が存在する。
新ナショナルギャラリーは、8本の十字柱、グリッド状の梁、建物全面を覆うガラス、という最小限の要素によって構成されており、モダニズムが追求したユニバーサルスペースを見事に具現化している。
また、この建築はミースが亡くなる前年に竣工したことでも知られており、彼のエッセンスが詰まった最高傑作としても名高い。
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6.イリノイ工科大学・クラウンホール
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:アメリカ・イリノイ州・シカゴ
- 竣工:1956年
- 用途:大学施設(建築学科のスタジオ)
- URL:建築詳細ページ
アメリカ合衆国イリノイ州・シカゴの中央部に位置する、私立の理工系研究大学「イリノイ工科大学」。
このイリノイ工科大学のキャンパス内には、建築学科のスタジオとして建設された「クラウンホール」という近代建築が存在している。
ミースは、ナチスの独裁政権から逃れるためアメリカに亡命した後、イリノイ工科大学・建築学科の主任教授に就任。加えて、同大学のキャンパス全体計画を担当している。
そのため、イリノイ工科大学内にはミースが設計した建物が複数存在するのだが、その建築群の中でも特に高い評価を得ているのが、このクラウンホールなのである。