みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。
今回は、モダニズムを代表する住宅建築「ファンズワース邸」の建築的特徴について解説していきたいと思います。
アメリカイリノイ州の大自然の中に建つミース・ファン・デル・ローエの代表作です。
是非最後までご覧ください。
ファンズワース邸の建築的特徴
アメリカイリノイ州・プラノに建つ住宅建築

ニューヨーク・ロサンゼルスに次ぎ、アメリカ3位の人口を抱える巨大都市・シカゴ。
シカゴは1871年に発生した大火事をきっかけに、世界でいち早く高層ビルが建てられ始め、世界の近代化を象徴する都市へと成長していった。
そんな高層建築が建ち並ぶシカゴから西へ80㎞ほど進んだ位置、自然豊かなフォックス川流域にファンズワース邸は建っている。
シカゴの病院に勤務する女性医師エディス・ファンズワースの週末住宅として建設されたファンズワース邸は、その洗練された構成などからモダニズム建築の代表作として知られている。
ミースによるモダニズムの代表作

ファンズワース邸を設計したのは、近代建築三大巨匠の一人として名高いドイツ出身の建築家「ミース・ファン・デル・ローエ」である。
生まれはドイツだが、ナチスドイツのによる戦争の激化に伴いアメリカに亡命し、1944年にはアメリカの市民権を獲得。1969年に亡くなるまでアメリカを中心に設計活動を行った。
ミースは、モダニズム建築(近代建築)の先駆者として知られており、そんな彼の代表作と言える建築作品が、今回紹介するファンズワース邸なのである。
Less is moreを具現化した建築

ミースの建築思想を端的に示した言葉がある。
それが「Less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」である。
これは、ミースの思想にとどまらず、19世紀末に誕生した建築運動「モダニズム」を象徴する言葉としても広く建築界に刻み込まれている。
そして、この思想を最も顕著に具現化した作品がファンズワース邸である。
西欧諸国でこれまで建てられてきた装飾的な歴史主義建築とは打って変わって、ファンズワース邸では可能な限り無駄な要素(装飾)を排し、最低限の要素(構造体や建具)だけで豊かな建築空間を作り出している。
ユニバーサルスペースとしての内部空間

「ユニバーサルスペース」もまた、ミースが提唱した建築理念の一つである。
ユニバーサルスペースとは簡単に言うと、最低限の構造体(床・壁・天井・柱など)でできた広々とした空間のことである。
現代のオフィスビルなんかは、基本的にユニバーサルスペースの積層で成り立っている。
今でこそユニバーサルスペースは当たり前の要素になってしまったが、建築が煉瓦や石などによる組積造でできた時代には、このような大空間はなかなか作り出せなかった。どうしても構造的に壁が多くなってしまうためである。
しかし、鉄骨造や鉄筋コンクリート造といった画期的な構造がモダニズムの時代に登場したことで、このような大空間が実現可能となり、そこで生み出されたフレキシブルな空間をミースはユニバーサルスペースと呼んだのである。
そして、ファンズワース邸もまたユニバーサルスペースとして内部空間が形成されている。
洪水に備えた高床式の構成

ファンズワース邸は、床が地上から「1.5m」ほど持ち上げられた高床式も特徴の一つとなっている。
これは単純に、すぐ近くを流れるフォックス川の氾濫に備えた形ではあるのだが、結果的にこの高床式の構成がファンズワース邸をより洗練されたものにしている。
高床式じゃなかった場合のファンズワース邸を想像していただきたい。
おそらくずいぶんと鈍臭い外観になっていたことだろう。
ファンズワース邸は、ミースの思想だけでなく、敷地条件や周辺環境などあらゆる要素を加味した上で生まれた奇跡の建築作品だと言えるのではないだろうか。
建物前面に設けられたデッキ

前述した通り、ファンズワース邸は地上から1.5mほど持ち上げられた位置に床がある。
そのため、地上と床の間には階段とデッキが設けられているのだが、これがまたファンズワース邸のいいアクセントになっている。
全面ガラス張りであるため、元々外と内の境界が曖昧な建築ではあったのだが、このデッキやデッキに繋がるピロティ空間があることのよって、より外と内の親和性が高まっている。
ファンズワース邸の建築データ
- 設計:ミース・ファン・デル・ローエ
- 住所:アメリカ合衆国イリノイ州プラノ
- 竣工:1951年
- 用途:週末住宅