30セント・メリー・アクス(ガーキン)とは?
- 設計:ノーマン・フォスター
- 住所:イギリス・ロンドン
- 竣工:2003年
- 用途:オフィス
30セント・メリー・アクスは、イギリスロンドンの金融中心地である「シティ・オブ・ロンドン」のシンボルになっている、高さ約180mを誇る超高層オフィスビル建築である。
セント・メリー・アクス通り30番地に建つビルであることが名前の由来になっているが、その他にも、建物形状がキュウリに見えることから「ガーキン(小さいキュウリ)」という愛称で呼ばれることもある。
この象徴的な建物の設計を行ったのは、イギリスを代表する建築家「ノーマン・フォスター」である。
フォスター建築らしい、ハイテク建築的な外観を形成しているガーキンは、20世紀末ごろから世界中で増加し始めた「アイコン建築」の象徴的存在としても知られるようになる。
一方で、その特異さ故に外観ばかりが言及されがちだが、フォスターはガーキンにおいて、ビル風緩和や光熱費の削減、労働環境の最適化など、環境にも配慮した設計を行っていることは見落としてはいけない事実である。
30セント・メリー・アクス(ガーキン)の建築的特徴
ロンドンの金融中心地に建つ超高層ビル
イギリス・ロンドンの中心に位置する「シティ・オブ・ロンドン」という地区は、銀行や証券取引所などの金融機関が数多く集まる、イギリスの金融中心地となっている。
そんな街に、ぽつんと異様な形態をした超高層ビルが佇む。
そう、それが「30セント・メリー・アクス」である。
まるで、キュウリのようにも見える特異な形態をしたそのビルは、小さなキュウリを意味する「ガーキン」という愛称で親しまれ、ロンドンの象徴的存在としても知られている。
このシンボリックな建築を設計したのは、イギリスを代表する建築家「ノーマン・フォスター」である。
ノーマン・フォスターの代表作
ノーマン・フォスターは、イギリス・マンチェスターに労働者階級として生まれながらも、1999年には「一代貴族」にまで成り上がった、イギリスを代表する建築家である。
1970年代に登場した「ハイテク建築」の先駆者として名をはせたフォスターは、その後も世界各地で数多くの大規模プロジェクトを手掛け、今もなお建築界の第一線で活躍している。
ノーマン・フォスターの代表作には、ハイテク建築の象徴「香港上海銀行・香港本店ビル」や、世界的博物館を改修した「大英博物館グレート・コート」などが挙げられ。
そして、それらの代表作と共に、フォスター建築としてよく名が挙げられるのが「30セント・メリー・アクス」なのである。
アイコン建築の代表作
20世紀末頃からだろうか、建築界では「アイコン建築」と呼ばれる、街並みからは逸脱した、象徴的な形態を持つ建築物が世界各地に建てられるようになった。
フランク・ゲーリーの「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」や、アラブに建つ世界一高い建造物「ブルジュ・ハリファ」などがそのいい例だろう。
もちろん、アイコン建築には賛否両論の意見がある。
ビルバオ・グッゲンハイム美術館は、そのアイコニックな建物によって、衰退していた街に活気をもたらしたことで有名であり、これはアイコン建築の成功例だと言えよう。一方で、同じフランク・ゲーリーの作品でも、チェコ・プラハの歴史地区に建つ「ダンシング・ハウス」は、歴史ある街並みの調和を害しているとして批判の意見も多い。
そして、今回解説している「30セント・メリー・アクス」もまた、賛否両論が分かれている建築作品である。竣工当初は、イギリスの景観論争を引き起こすほど議論の対象にもなった建築物だが、優れた建築物であるとして、スターリング賞やエンポリス・スカイスクレイパー賞などの名だたる建築賞も多数受賞している。
環境にも配慮した建築
30セント・メリー・アクスが、高い評価を得ている理由の一つには、環境にも最大限配慮した建築物であるというのが大きい。
例えば、キュウリのようなその独特な形態は、ビル風の緩和にも寄与しているし、直方体のビルに比べ周囲に対する威圧感も緩和することができる。
さらに、このビルでは、様々な最先端の省エネルギー技術が採用されており、一般的なタワービルの半分ほどのエネルギーしか必要としていない。
これらの、徹底した環境への配慮が、30セント・メリー・アクスの高い評価につながっているのである。
優れたデザイン性
ここまで、30セント・メリー・アクスについていろいろな特徴を述べてきたが、それらは一度置いておいて、デザインの面にも着目してみたい。
上の写真は、30セント・メリー・アクスの玄関部分を映したものである。
玄関部分だけガラスが取り払われ、白い斜材が浮き彫りになり、スタイリッシュな外観を生み出している。
シンプルに、デザイン性でも優れた建築作品であることがわかる。