みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。
今回は、香川県丸亀市に建つ「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」の建築的特徴について解説していきたいと思います。
画家・猪熊弦一郎の作品を常設展示している現代美術館です。
是非最後までご覧ください。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の建築的特徴
画家・猪熊弦一郎の美術館
1902年に香川県高松市で生まれ、幼少期を丸亀市で過ごした洋画家・猪熊弦一郎。
壁画や包装紙のデザイン、抽象画、彫刻など様々な創作活動を行ってきた猪熊弦一郎だが、そんな彼の作品を専門的に取り扱っている美術館が故郷・丸亀市に存在する。
そう、それが今回紹介する「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」なのである。
1993年に逝去した猪熊弦一郎だが、彼の残した作品はここ丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にしっかりと収蔵・展示され、今もなお多くの人々に愛されている。
駅前に建つ現代美術館
全国的にも珍しいのだが、猪熊弦一郎現代美術館はなんと、丸亀駅のすぐ隣に建てられている。
通常の場合、駅前広場は人通りが多いため、商売エリアとして商業施設や飲食店などが立ち並ぶことがほとんどなのだが、そんなエリアにこれほど大きな美術館建築が堂々と建てられているのである。
「丸亀市は商売だけでなく、芸術の街としても発展していくぞ」と言う、丸亀市の強い意志を感じるような敷地設定だ。
そして、その丸亀市の強い意志を引き継ぐ形で美術館の設計を務めたのが、世界的建築家谷口吉生である。
設計者は世界的建築家・谷口吉生
谷口吉生は、日本のみならず海外でも活躍する世界的建築家である。
代表作としては「葛西臨海水族園」や「豊田市美術館」などが挙げられ、スタイリッシュな外観を持った建築作品を数多く手がけている。
また、父・谷口吉郎も昭和期に活躍した有名建築家であり、帝国劇場や東京国立博物館・東洋館といった日本を代表する建築作品を数多く残している。
谷口吉生建築は、水平垂直ラインを強調した構成や、ダイナミックな空間のシークエンスなどが魅力となっており、そのスタイルから美術館建築を数多く手がけている。
駅前に対して開いた「門型のファサード」
美術館全体は、線路に沿う形で細長く伸びたチューブ状の構成となっている。
そして、そのチューブの先端部分が丸亀駅前広場に面する形で配置され、その部分だけが門型に大きく開かれているのである。
この門型の部分だけを見ると、まるで野外劇場のようにも見える構成だ。
門型部分に関しては、谷口吉生建築らしく、水平垂直ラインが鋭く強調されており、スタイリッシュな外観を作り出している。
ファサードを印象付けるアート作品
門型ファサードの奥にある大きな壁面には不思議な絵が描かれており、その前面にも不思議な彫刻作品が設置されている。
実はこれ、すべて猪熊弦一郎自身がこの美術館のためにデザインした美術作品である。
このように、アート作品を建築のファサードに表出させることによって、街と建築、建築とアート、アートと街の相互的な関係性を育むきっかけを作り出しているのである。
屋上広場やカフェに繋がる大階段
猪熊弦一郎がデザインした壁画の横には、上階へと繋がる不思議な大階段が伸びている。
実はこの階段を上った先には、カフェや屋上広場といったパブリックスペースが設置されており、誰でも気軽に立ち寄れる都市的な空間が展開されている。
ちなみに、美術館への入り口は三後の黒い壁の部分になっており、かなり控えめな構成となっている。
これも谷口吉生建築の特徴の一つでもある。
内部に繋がりをもたらす吹き抜け空間
美術館内部は、1階がエントランスホールになった大きな吹き抜け空間を中心にして展開されている。
そのため、階ごとに分節された展示空間やエントランス空間に緩やかなつながりが生まれ、施設全体として一体感を持つおおらかな空間が作り出されている。
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の建築データ
谷口吉生の代表作
今回はこれで以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。