建築

鈴木大拙館【谷口吉生】

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photo by chinnian/CC BY-SA 2.0

鈴木大拙館とは?

photo by 金沢市/CC BY 2.1 jp

鈴木大拙すずきたいせつ館は、金沢出身の仏教哲学者「鈴木大拙」の書籍・原稿・写真などを展示するために建てられた博物館である。

設計を務めたのは、モダンな建築を手掛けることで有名な建築家谷口吉生。

仏教哲学者の作品を展示するという特殊性を、日本伝統の空間構成を用いて建築に落とし込むことで、豊かな空間を形成している。

たけひこ
たけひこ

そんな、鈴木大拙館の特徴をご紹介します!!

鈴木大拙とは?

鈴木大拙すずきたいせつは、金沢市出身の仏教哲学者であり、渡米後、講演や英文の著作によって日本の「禅」文化を世界中に広めた人物として知られている。

100冊に及ぶ著作により、禅の日本語音訳である「ZEN」を世界中に広めた。

そんな、世界的に著名な仏教哲学者の考えを広く伝える場として開設されたのが「鈴木大拙館」である。

谷口吉とは?

  • 1960 慶應義塾大学卒業
  • 1964 ハーバード大学大学院修了
  • 1965 丹下健三研究室所属
  • 1983 谷口建築設計研究所所長
  • 2021 文化功労者

谷口吉生たにぐちよしおは日本を代表する建築家であり、父谷口吉郎も昭和期を代表する建築家として知られている。

代表作としては、「GINZA SIX」「豊田市美術館」「法隆寺宝物館」などが挙げられる。

谷口吉生氏の作品は、水平・垂直ラインの美しいものが多く、モダニズム建築を彷彿とさせるスタイルは国内外から高く評価されている。

ニューヨーク近代美術館

このシンプルなスタイルが影響してか、谷口氏はあまりコンペに参加しないことでも有名である

しかし、珍しくコンペに参加して勝ち取った「ニューヨーク近代美術館MoMA」でも、その洗練されたスタイルを貫いているところがかっこいい。

建築の特徴

photo by chinnian/CC BY-SA 2.0

鈴木大拙館の特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 3棟・3つの庭の構成
  2. 3棟をつなぐ回廊空間
  3. 出入口機能を持つ「玄関棟」
  4. 石垣に隠れた「展示棟」
  5. 水の中に浮かぶ「思索空間棟」
  6. 「床」の空間を意識した構成

3棟・3つの庭の構成

photo by 金沢市/CC BY 2.1 jp

鈴木大拙館は次の3棟によって構成されている。

  1. 玄関棟
  2. 展示棟
  3. 思索空間棟

さらに、3棟それぞれに面して「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」が配され、自然と共生した建築空間がつくられる。

3棟に機能を分散配置した理由は、一つのモニュメンタルな建築になるのを避け、鈴木大拙という人柄にふさわしい控えめな佇まいとするためであった。

3棟をつなぐ回廊空間

photo by chinnian/CC BY-SA 2.0

3つに分散した棟は、外部と内部が中央の壁を隔てて対になった回廊によって結ばれている。

  • 内部通路:玄関棟から展示棟に向かう往路であり、薄暗く落ち着いた雰囲気を持つ。
  • 外部通路:展示棟から思索空間棟に向かう復路であり、外に開かれた開放的な空間。

この対照的な回廊空間を移動しながら、移り変わる景観を楽しむことができる。

出入口機能を持つ「玄関棟」

photo by 金沢市/CC BY 2.1 jp

来館者がまず入る玄関棟には、出入口機能や事務管理機能が収められている。

外観はシンプルな黒の「縦格子」と「庇」によって構成されており、背後のコンクリートと絶妙なバランスを取り合い、魅力的なファサードを形成している。

石垣に隠れた「展示棟」

photo by kajikawa/CC 表示 3.0

鈴木大拙館と隣に広がる斜面緑地の間に設けられている高さ4.2mの石垣。

実はこの石垣の裏側に展示棟が収められている。

このような構成にすることで、見掛け上の規模を軽減し、住宅地に隣接する建築としてボリューム感を抑えている。

水の中に浮かぶ「思索空間棟」

鈴木大拙館の最大の魅力でもある「水鏡の庭」に浮かぶ「思索空間棟」。

この棟は、四方に開口部を持つ正方形の空間となっており、漆喰塗の白壁と大きく張り出した庇がスタイリッシュな外観を作り出している。

内部には、床几しょうぎと呼ばれる日本で古くから使用されている腰掛が並べられており、組み合わせ方によって、茶席の場や講義の場など、様々な用途に対応できるようになっている。

「床」の空間を意識した構成

photo by Micra/CC 表示-継承 3.0

鈴木大拙館の内部空間は、日本伝統の「床」「床の間」を意識した空間構成となっている。

狭い生活空間を独占する無の空間「床の間」。

しかし、掛け軸や生け花など、最小の設えによって床の間は住宅の中の小美術館へと姿を変える。

この無限の可能性を感じさせる床の間の構成が、本館でも様々な箇所に用いられている。

建築概要

  • 所在地:石川県金沢市本多町
  • 竣工 :2011年7月
  • 用途 :博物館
  • 構造 :RC造、S造
  • 高さ :8.139m
  • 階数 :地上1階
  • 設計 :谷口建築設計研究所
  • 施工 :清水・豊蔵特定建設工事共同企業体
  • 構造 :構造計画プラス・ワン
  • 設備 :森村設計

施設概要

一般65歳以上高校生以下
310円(260円)210円(210円)無料

最後に・・・

以上が鈴木大拙館の特徴でした。

周辺環境に合わせて3棟に分散した建物と、その間に配置された3種類の庭が豊かな空間をつくる、魅力的な建築だった思います。

たけひこ
たけひこ

是非一度、鈴木大拙館を訪れてみてください!!

ご覧いただきありがとうございました。

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