【建築解説】つくばセンタービル|磯崎新

みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。

今回は、磯崎新の代表作「つくばセンタービル」の建築的特徴について解説していきたいと思います。

ポストモダニズムの代表作でもあります。

是非最後までご覧ください。

目次

つくばセンタービルの建築的特徴

筑波研究学園都市の中核施設として建てられた複合建築

東京の過密緩和を図ることを目的として、大学や研究機関といった首都機能の一部を茨城県つくば市に移転する都市計画「筑波研究学園都市」。

この都市計画の中核をなす施設として1983年に建設されたのが、今回紹介するつくばセンタービルである。

そんなつくばセンタービルには、ホテル・コンサートホール・公民館・銀行など様々な機能が併設されており、筑波研究学園都市の中核であると同時に、つくば市の中核施設にもなっている。

磯崎新・ポストモダニズムの代表作

photo by Manel Armengol/ CC 表示-継承 2.0

つくばセンタービルの設計は、日本を代表する建築家「磯崎新」が担当した。

磯崎新は1980年代頃世界的に流行した建築運動・ポストモダニズムの先駆者として知られており、1975年に出版された彼の著書『建築の解体』は、ポストモダニズムの到来を予期した作品として、今でも建築界におけるバイブル的存在となっている。

そして、1983年というポストモダニズム真っ只中に建てられたつくばセンタービルもまた、ポストモダニズム建築の代表作として知られている。

ポストモダニズム建築としてのつくばセンタービル

ポストモダニズム建築は、19世紀末に登場した建築運動「モダニズム」の反動として生まれた潮流である。

モダニズムでは、過去の様式にとらわれて装飾性を重視した歴史主義建築を完全否定し、鉄やコンクリート、ガラスといった材料で極限まで装飾を排した建築が数多く生み出されてきた。

ミースの『ファンズワース邸』や、コルビュジエの『サヴォア邸』などはモダニズム建築の代表作である。

しかし、先進的なモダニズム建築も時がたつにつれ、その簡素で機械的な風貌に疑問の声が上がり始め、再び過去の様式を引用した装飾建築が建てられ始める。

その過去の西洋建築様式の装飾をまとった姿こそ、ポストモダニズム建築最大の特徴なのである。

つまり、ポストモダニズムの代表作でもあるつくばセンタービルは、西洋の過去の様式を随所に取り入れた建築作品なのである。

具体的な部分を見てみよう。

ローマの「カンピドリオ広場」を引用した中央広場

イタリアローマの「カンピドリオ広場」

つくばセンタービルは、大きな中央広場を囲うようにして、L字型に2つの棟が配置された構成になっている。

そして、その中央広場のデザインは、イタリアローマに16世紀頃に造られた広場「カンピドリオ広場」のデザインを引用している。

磯崎新は、ミケランジェロが設計したカンピドリオ広場の床の模様のパターンや、アプローチ構成などを反転する形で引用しており、よく見ると地面の模様の色が反転していることがわかる。

このように、過去の西洋の建築様式を引用した構成が、つくばセンタービルの特徴となっている。

霞ヶ浦の形状を型取った「カスケード」

岩に囲まれた段状に展開されるカスケード

つくばセンタービルの中央広場には、カスケードと呼ばれる人工的に作られた滝が存在する。

このカスケード、実は上から見ると茨城県にある日本で2番目に大きい湖「霞ヶ浦」と同じような形状をしている。

このカスケードがあることで、中央広場がより一層豊かな空間となり、つくば市の街に滞在性のあるパブリックスペースを提供している。

磯崎新らしい純粋幾何学形態の引用

photo by Otherde/CC 表示 3.0

磯崎新は、正三角形・正方形・立方体格子など、純粋幾何学形態を建築に用いることでも有名である。

例えば彼の代表作「北九州市立美術館」などはいい例だろう。

そして、つくばセンタービルでも同様に、建築全体があらゆる幾何学的形態の集積の上に成り立っている。

つくばセンタービルの建築データ

  • 設計:磯崎新
  • 住所:茨城県つくば市吾妻1-10-1
  • 竣工:1983年6月
  • 用途:ホテル・コンサートホール・店舗など
  • URL:Wikipedia
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