【建築特徴】ガレージ現代美術館|レム・コールハース

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ガレージ現代美術館とは?

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ガレージ現代美術館は、ロシアの現代美術作品を展示するための施設として、2008年首都モスクワに設立された美術館である。

元々は既存のバスガレージを改築して開館した美術館であるが、2015年にモスクワのゴーリキー公園内に建っていた廃墟を改築し、そこに美術館機能を移転している。

この移転の際の改築設計は、世界的建築家レム・コールハース率いる建築設計事務所「OMA」が担当した。

OMAは、20年以上放置されていたコンクリート造の廃墟を、既存構造を生かしながらも建物全体に半透明の被膜をかぶせることで、現代美術館へと生まれ変わらせている。

現代的なファサードながらも、内部には過去の記憶(廃墟の記憶)を残した魅力的な建築作品となっている。

ガレージ現代美術館の建築的特徴

モスクワの廃墟を改修して生まれた美術館建築

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ロシアの首都モスクワに存在する緑豊かな都市公園「ゴーリキー公園」。

この公園内には、元々レストランとして人々に親しまれていたにもかかわらず、1990年代に放棄されてからは20年以上、廃墟と化したコンクリート造の建築物が存在していた。

一方で、2008年に既存のバスガレージを改築する形で設立された「ガレージ現代美術館」は、バスガレージの明け渡しが決定していたため、移転先を探さなければならない状態に陥っていた。

この両者が不思議な縁で巡り合うことになる。

ガレージ現代美術館は、ゴーリキー公園という集客を見込めそうな好立地に建つあの廃墟に、移転先として白羽の矢を立てたのである。

そして、その廃墟の美術館への改築設計は、世界的建築家レム・コールハース率いる「OMA」に委託された。

レムコールハース(OMA)の代表作

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ガレージ現代美術館の改築設計を担当した「OMA」は、世界的建築家レム・コールハースが1975年に設立した建築設計事務所である。

オランダ・ロッテルダムで生まれたOMAは、今やニューヨーク・北京・香港にも拠点を設け、世界的に活動の領域を広げている。

そんなOMAの代表作には「中国中央電視台本部ビル」や「シアトル中央図書館」など前衛的な作品が数多く存在するが、ガレージ現代美術館もその代表作の一つとして知られている。

既存構造を覆う半透明被膜

ガレージ現代美術館は、既存のコンクリート造の建物全体を囲うように、半透明の被膜が四周に巻き付けられている。

この被膜は、耐久性・耐衝撃性に優れていながら透明度も高いという優秀なプラスチック素材「ポリカーボネート」を二重に重ねる形で構成されている。

さらに、ファサードの1階部分は、ポリカーボネートではなくガラス張りにすることによって、公園と建物内部の連続性を強化している。

上方にスライドしたファサードパネル

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ガレージ現代美術館のファサードには、一部半透明被膜が上方にスライドした部分が存在する。

このスライドしたパネルの内部には、2層吹き抜けの広々としたロビー空間が展開されており、そこには大型のアート作品が展示されている。

つまり、このロビーの部分のファサードをスライド式にすることによって、公園と美術館の視覚的なつながりを強化しているわけである。

既存構造を生かした内部空間

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ガレージ現代美術館は、廃墟をリノベーションして美術館に転用しただけあって、廃墟時の無骨さが残ったような内部空間が展開されている。

天井面には、コンクリートの梁材が露出しているし、一部壁面には、廃墟時から存在していたレンガ壁やタイル壁を保存していたりもする。

この無骨で荒々しい表情は、新築の建物では決して表現できないものであろう。

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