シアトル中央図書館とは?
- 設計:レム・コールハース/OMA
- 住所:アメリカ・シアトル
- 竣工:2004年
- 用途:図書館
シアトル中央図書館は、海・山脈・森などの大自然に囲まれるアメリカ・ワシントン州最大の都市「シアトル」に建つ図書館建築である。
建築の設計は、世界的建築家レム・コールハースが代表を務める建築設計事務所「OMA」が担当。
建物全体は、ガラスの被膜で覆われた多面体によって構成されており、直方体のビルが立ち並ぶシアトルの街の中でも一際存在感を放っている。
また、シアトル中央図書館には閉架書庫が存在せず、すべての書籍を「ブック・スパイラル」と呼ばれる特殊な開架書庫に収蔵している。
このブック・スパイラルでは、アメリカのデューイ十進分類法に基づいて000~999に分類された本が、螺旋状に連続する4層の書架空間に順番に並べられるという、非常に単純明快な体系方法が確立されている。
シアトル中央図書館の建築的特徴
シアトルに建つ図書館建築
海・湖・山・森など、豊かな自然を有するワシントン州最大の都市「シアトル」。
AmazonやMicrosoft、Starbucksなどの世界的企業の本社が多数位置することでも知られる大都市シアトルには、シアトル中央図書館というアイコニックな形態をした図書館建築が建っている。
多面体のガラススキンで覆われたこの図書館の設計は、世界的建築家レム・コールハースが代表を務める設計事務所「OMA」が担当している。
レム・コールハース(OMA)の代表作
レム・コールハースは、様式や既成概念にとらわれない前衛的な設計スタイルで知られる、オランダ・ロッテルダム出身の世界的建築家である。
そんなコールハースが設立した建築設計事務所「OMA」は、ロッテルダム・ニューヨーク・北京・香港という4つの大都市に事務所を設け、世界的に活動を展開している。
シアトル中央図書館は、数えきれないほど存在するOMAの作品の中でも代表作に位置付けられており、他に例のない前衛的な形態やプログラム構成などによって、世界的にも高い評価を得ている。
5つ本を無造作に積み上げたかのような形態
上の図は、シアトル中央図書館の断面概略図である。
箱型の建築ボリュームが隙間をあけながら5つ積み上げられており、まるで本を無造作に積み上げたかのような全体構成になっていることがわかる。
左右に建築ボリュームがズレているのは、周辺環境や法律規制、眺望、採光など、もろもろの建築条件に適合させた結果である。
そして最後に、ズレた5つの建築ボリュームには、隙間を縫い合わせるようにガラススキンが覆いかぶせられ、これによって多面体のアイコニックな建築物が完成している。
魅力的なアトリウム空間
5つの建築ボリュームをつなぎ合わせるようにして設置されたガラススキン。
このガラススキンの下には、上の写真のような、光であふれる魅力的なアトリウム空間が展開されている。
さらに、このアトリウム空間は建物内に複数箇所存在しており、場所によって閲覧室やカフェ、情報センターなど、比較的フレキシブルな機能が割り振られている。
耐震と採光を両立するガラススキン
建物と街の間を仲介するように設置されたガラススキン。
実はこのガラススキンは、採光や眺望などを内部に届ける役割の他にも、耐震性を担う構造体としての役割も付加されている。
そういわれてみると、確かにガラス面は鉄骨の骨組みによってかなり頑丈そうな作りになっていることがわかる。
明快な図書空間を実現するブック・スパイラル
図書館は迷宮である。
いくら本に番号を振って分類分けしても、日々増加する膨大な蔵書を明快にまとめ上げるのはなかなか難しい。
さらに、ほとんどの図書館では開架書庫だけでは抱えきれなくなった蔵書を、閉架図書に移動させ利用者が容易にアクセスできないようにしてしまう。
このような問題に対してレム・コールハースは、アメリカのデューイ十進分類法に基づいて000~999に分類された本を、螺旋状に連続する4層の書架空間に順番に並べていくという新しい体系方法を生み出した。
この空間のことを「ブック・スパイラル」と呼ぶ。
ブック・スパイラルのような、本の分類だけに頼らない図書館の在り方は、建築界に大きな衝撃をもたらした。