カーサ・ダ・ムジカ(Casa da Musica)とは?
- 設計:レム・コールハース
- 住所:ポルトガル・ポルト
- 竣工:2005年
- 用途;コンサートホール
カーサ・デ・ムジカは、街全体が世界遺産にも登録されているポルトガルの都市「ポルト」の中心地に建つコンサートホール建築である。
カーサ・デ・ムジカの建設にあたっては、国際的な建築事務所5社による非公開コンペが行われ、そのコンペを勝ち抜いたレム・コールハース率いる「OMA」が設計を担当した。
建築は、まるで大きな岩石のような多面体の構成が特徴となっており、コンクリート打ち放しの仕上げがより一層の重厚感を建築に付与している。
また、あえて建物を敷地の中央にポツリと孤立させ、その周囲に広場を展開することによって、シンボル性や視認性を高めている点も高く評価されている。
さらに、この特徴的な多面体による形態は、内部に多様な空間を生み出し、まるで冒険するかのような魅力的な空間体験を来館者に提供している。
カーサ・ダ・ムジカ(Casa da Musica)の建築的特徴
世界遺産「ポルト歴史地区」に建つコンサートホール
国名の由来にもなったことで知られる、ポルトガルの都市「ポルト」。
首都リスボンに次ぐ、ポルトガル第二の都市として知られるこの街は、中世以降に建てられた歴史的な建造物が多数存在することから、「ポルト歴史地区」として街全体が世界遺産にも登録されている。
そんな歴史のある街の中心部、いくつもの道路が交わるロータリーに面した位置に、特異な形態をした建築物が建っている。
そう、その建物こそが今回紹介するコンサートホール「カーサ・デ・ムジカ」である。
レム・コールハース(OMA)の代表作
カーサ・デ・ムジカの建設にあたっては、世界的な建築事務所5社による非公開コンペが実施された。
その中で、最優秀賞を獲得したのが、世界的建築家レム・コールハース率いる建築事務所「OMA」。
OMAは、ロッテルダム・ニューヨーク・北京・香港という4つの大都市に拠点を置き、世界中で前衛的な建築作品を数多く手がける大手建築事務所である。
OMAの代表作には「中国中央電視台本部ビル」や「シアトル中央図書館」など、世界的に物議をかもした前衛的な作品が数多く名を連ねるが、その中の一つにカーサ・デ・ムジカも含まれる。
大きな岩石のような形態
カーサ・デ・ムジカはなんといっても、多面体による大きな岩石のような形態が最大の特徴となっている。
この特殊な形態は、コンサートホールという極一部の人々にしか利用されない施設を、どのような形態にしたら、もっと街の人々との間に豊かな関係性を育めるのかを試行錯誤した結果として生まれた形態となっている。
確かに、これだけシンボリックな建物があれば、自然と内部にも興味を持つことは間違いないだろう。
また、このような岩石のような形態を見ると、所沢に建つ隈研吾建築「角川武蔵野ミュージアム」を思い出す人も多いかもしれない。
広場の中央にポツリと佇む岩石
カーサ・デ・ムジカがここまでシンボリックに見えるのは、決して形態だけの問題ではない。
OMAは、敷地全体に広く建物を建てるのではなく、あえて敷地中央にポツリと建物を孤立させ、その周囲を広場とすることで建物のシンボル性や視認性を高めているのである。
さらに、その広場は街と建物の緩衝の役割を果たし、自然と人々が集まる豊かな空間を生み出している。
また、広場の一部が丘のように隆起しているのも面白い。
内部に展開される多様な空間
外形の非対称性を見てもわかる通り、建物内部には一つとして同質の空間が存在しない。
ある空間は壁面が斜めっていたり、またある空間には柱が斜めに貫通していたり、またまたある空間には波打つガラスの壁面が存在していたりもする。
この多様な空間は、外形が岩石のように非対称形だからこそ生まれ得たものであり、モダニズム建築のような箱型建築では決して生まれることのなかった空間であろう。
多様な空間をつなぎ合わせるスキップフロア
階段の踊り場にあたる部分を空間として展開させる「スキップフロア」。
今や住宅などにも用いられることが多くなったスキップフロアの構成は、カーサ・デ・ムジカの建物内部にも適用されている。
カーサ・デ・ムジカの内部に展開される多様な空間は、このスキップフロアとして連続しているのである。
これによって、建物内部にはまるで洞窟の中を探検するかのような魅力的な空間体験が生まれ、音楽鑑賞以外の楽しみも来場者に提供している。