ちひろ美術館・東京とは?

ちひろ美術館は、東京都練馬区石神井に建つ、絵本作家「いわさきちひろ」の作品を展示する美術館である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家内藤廣。
コンセプト「旧館の記憶をつなぐ」
このコンセプトを基に、1977年から増築を繰り返していた旧館を踏襲したような建築が作り出されている。
いわさきちひろ とは?

いわさきちひろは、「子どもの幸せと平和」をテーマに多くの絵本や挿絵、紙芝居などの作品を手掛けた絵本画家である。
代表作には、「おふろでちゃぷちゃぷ」「あめのひのおるすばん」などが挙げられる。
ちひろ美術館・東京は、いわさきちひろの自邸跡地に建てられ、ちひろが22年間絵を描き続けた場所でもあるため、その雰囲気を残した建て替え計画によって改築された。
内藤廣とは?
- 1950 横浜市に生まれる
- 1974 早稲田大学理工学部卒業
- 1976 早稲田大学大学院修了
- 1979 菊竹清訓建築設計事務所勤務
- 1981 内藤廣建築設計事務所設立
- 2003 東京大学教授
内藤廣とは、多くの公共建築や文化施設などを手掛ける、日本を代表する建築家である。
代表作としては、「海の博物館」「とらや赤坂店」「島根県芸術文化センター」などが知られ、屋根天井などに木材をふんだんに使用した建築を多く手がける。
また、建築に関する著書も多く手がけており、文筆家・思想家としても知られている。
建築の特徴

ちひろ美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 増築を繰り返した旧美術館
- 旧館を継承する分棟配置
- 分棟の間に設けられた庭
- 以前からあったケヤキの木
- トタン屋根を想起させる外壁
- 木に包まれたように感じる内部空間
- 長野県安曇野に建つ分館
増築を繰り返した旧美術館

ちひろ美術館の旧館は、1977年から段階的に増築を繰り返し、建て替えが決定した時には、かなり複雑な迷路のような美術館となっていた。
さらに、その複雑さは平面形状だけでなく、立面でも床の高さがばらばらであった。
そのため、バリアフリー化が進む社会に対応するために建て替えが決定したが、旧館の魅力的な複雑性をどのように継承するかも課題となった。
旧館を継承する分棟配置

旧館の複雑性を継承するために、新館は2・3階建ての4つの棟による分棟構成がとられた。
その4つの棟は、ガラス張りの渡り廊下によって結ばれており、一体性がつくられている。
さらに、その分棟の間には緑豊かな庭が、前面道路に面した東側と敷地奥の西側に2つ配されており、旧館の雰囲気を継承しながらも、新たな魅力を持つ新館となっている。
分棟の間に設けられた庭

分棟の間に設けられた緑豊かな東側の庭は、前面道路側に「ハ」の字型に開かれている。
そのため、外から見ても内から見ても緑であふれる魅力的な美術館がつくられている。
さらに、東側の庭に建つ大きな3本のケヤキの木は、旧館の時代からあったもので、以前の記憶を想起させる要素となっている。
トタン屋根を想起させる外壁

ちひろ美術館の外壁には、昔ながらの「トタン屋根」を想起させる、落ち着いた赤い色が特徴的なステンレス鋼板が張られている。
その鋼板は、主に2階以上の部分に張られており、1階部分はガラス張りになっている。
この構成によって、中庭に開いた建物となり、内部に光や緑の豊かさが入り込む。
木に包まれたように感じる内部空間

ちひろ美術館の内部空間には、木に包まれた空間を演出する工夫がなされている。
- スギの木目が映ったコンクリート打ち放しの壁
- ナラの古材を再利用した床板
このような構成によって、木のぬくもりを感じる空間がつくられている。
さらに、内藤建築の特徴でもある天井の架構は、梁を並べるように配置したRC造の「ジョイストスラブ」となっている。
長野県安曇野に建つ分館

ちひろ美術館の設計を務めた内藤廣氏であるが、実はこの設計の数年前に長野県安曇野にある分館「安曇野ちひろ美術館」の設計も務めていた。
この美術館の評判もあって、本館の建て替えの設計者にも任命された形である。
分館では、豊かな周辺環境・広大な敷地を生かして、1日滞在型の美術館をつくっている。
建築概要
- 所在地:東京都練馬区下石神井
- 竣工 :2002年6月
- 用途 :美術館
- 構造 :S造、SRC造
- 階数 :地上3階
- 高さ :9.950m
- 設計 :内藤廣建築設計事務所
- 施工 :戸田建設東京支店
- 構造 :空間工学研究所
- 設備 :明野設備研究所
施設概要
- Tel :03-3995-0612
- 営業時間:10:00~17:00
- 休館日 :月曜日、年末年始など
- URL :https://chihiro.jp/tokyo/
- アクセス:西武新宿線上井草駅下車徒歩7分
- 料金 :
大人 | 中高生 | 小学生 |
800円 | 500円 | 300円 |
最後に・・・
以上がちひろ美術館・東京の特徴でした。
旧館の雰囲気を継承しつつも、新たな魅力を持つ美術館がつくられていたと思います。

是非一度、ちひろ美術館・東京を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。