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とらや赤坂店【内藤廣】

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とらや赤坂店とは?

南青山通りからみる

「とらや」赤坂店とは、港区赤坂の南青山通り沿いに建つ、老舗和菓子屋「とらや」赤坂店舗のことである。

とらやとは?

「とらや」は、約500年の歴史を持つ、京都で創業した老舗和菓子屋。

1869年の東京遷都に伴い、京都の店をそのまま残し、東京にも進出を果たした。

東京進出では、港区銀座に「とらや東京店」をオープンしたのち、同年に現在の港区赤坂に移転し現在に至る。

設計は、10年以上前から「とらや」の仕事に関わっていた建築家内藤廣である。

過去には静岡の「とらや工房」、京都の「とらや京都店」なども手掛けている。

建築の概要としては、建物を覆う扇形の大屋根、木材をふんだんに使用した内部空間などが特徴的。

たけひこ
たけひこ

このような歴史・特徴を持つ「とらや赤坂店」を今回ご紹介します!!

内藤廣とは?

  • 1950 横浜市に生まれる
  • 1974 早稲田大学理工学部卒業
  • 1976 早稲田大学大学院修了
  • 1979 菊竹清訓建築設計事務所勤務
  • 1981 内藤廣建築設計事務所設立
  • 2003 東京大学教授

内藤廣ないとうひろしとは、多くの公共建築や文化施設などを手掛ける、日本を代表する建築家である。

代表作としては、「海の博物館」「島根県芸術文化センター」などが知られ、屋根天井などに木材をふんだんに使用した建築を多く手がける。

また、建築に関する著書も多く手がけており、文筆家・思想家としても知られている。

建築の特徴

玄関口

「とらや」赤坂店の建築の特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 高さの低いコンパクトな構成
  2. 敷地形状に合わせた扇形の建物
  3. ヒノキを格子状に組んだ壁
  4. 木材に囲われた暖かい空間
  5. 左官職人による黒漆喰仕上げの壁
  6. 木の陰影が魅力的な扇形の大屋根
  7. 細部にこだわった仕上げ

高さの低いコンパクトな構成

南青山通り向かい側からみる

東京では近年、バブル時代を彷彿とさせるほど再開発事業が加熱し、経済効率を第一に考えた超高層ビルばかりが建てられている

赤坂の「とらや」でも当初は、内藤廣と鹿島建設の共同設計で10階建ての建物を建設する予定であった。

しかし、「とらや」の改築を世間に発表したところ、「とらや赤坂店」での様々な思い出や経験などの反響が数多く寄せられた。

そこで内藤廣氏はこのように考える。「何がとらやに必要で何が不要なのか、今一度整理しなおし、あるべき姿のとらやを建てるべきだ」

その結果、本社機能は外に出し、店舗機能だけを備えたコンパクトな「とらや」が完成した。

敷地形状に合わせた扇形の建物

「とらや赤坂店」の建つ敷地は、青山通り沿いに位置し、扇形の形状をしている。

この特異な敷地形状を生かして、通りに面する部分をガラス張りとし、外部に開いた構成をとった。

また、ガラス面に沿って各階を繋ぐ階段が設けられているため、内部の活動が外部に浮き出てくるような魅力的な空間となっている。

ヒノキを格子状に組んだ壁

地下1階ギャラリースペース

地下1階には、和菓子や日本文化に関する展示を行うギャラリーが設けられている。

格子状の壁
ギャラリースペースの壁

ギャラリー内の壁は、ヒノキを立体的に組んだ、格子状の構成が魅力的である。

これは、職人さんが2万ピースものヒノキを一つ一つ手作業で組んだと言う。

この手の込んだ立体的な壁により、暖かみのあるギャラリー空間がつくられている。

木材に囲われた暖かい空間

地下一階へ降りる階段から見る

地下一階に降りる階段とその奥に待ち受ける廊下部分は、ヒノキなどの木材に囲われた暖かい空間となっている。

また、この木材による空間を最大限に生かしているのがきれいな照明である。照明の配置や光の強さが不適合では、ここまで豊かな空間は作れない。

たけひこ
たけひこ

床や壁など一部を木材にした内部空間はよく見ると思いますが、ここまで全方位を木材で覆っている空間は珍しいですね!!

左官職人による黒漆喰仕上げの壁

2階売り場

「とらや赤坂店」の内部には、黒漆喰仕上げの壁がいたるところに点在している。

特に注目したいのが、2階売店の正面に配置されている、とらやのロゴの入った壁である。

「とらや」に深さと奥行き、威厳がほしい

この考えをもとに、内藤廣は熟練の左官職人である久住章氏に黒漆喰壁の仕上げを依頼した。

その要望と期待に対して、久住氏をはじめとする左官職人による黒漆喰の壁は、素人目にはわからないムラを理由に5回も剥がして塗り直した末に完成した。

木の陰影が魅力的な扇形の大屋根

3階菓寮

「とらや赤坂店」の最大の特徴が、扇形の大屋根である。

扇形の大屋根
3階端から見る

この大屋根は、奥行きのある構成とトップライトからの光による美しい陰影が魅力の一つ。

その陰影を木材という暖かみのある素材で受け止めることによって、豊かな空間がつくられている。

さらに、1階から続く階段部分の吹き抜けによって、この大屋根が建物全体を優しく包み込んでいるようでもある。

細部にこだわった仕上げ

エントランス右手にある階段

先ほど述べた、黒漆喰の壁が5回も塗り直されたことからも想像できるかもしれないが、この建築は細部へのこだわりがすごい。

例えば、上の写真を見るだけでも、階段の手すりや窓サッシ、階段一段一段の間など細かい部分にも木材が使われている。

こだわりのある建具や什器
地下一階廊下

「とらや赤坂店」の什器じゅうき(住宅で言う家具)は、改築に伴いすべて新しく制作したと言う。

さらに、建具も木調で統一するなど徹底した細部へのこだわりである。

たけひこ
たけひこ

これらを見ると、プロジェクトに関わった方たちの熱意が伝わってきます!!

建築物概要

  • 所在地:東京都港区赤坂
  • 竣工 :2018年8月
  • 用途 :売場、喫茶など
  • 構造 :S造 SRC造 RC造
  • 高さ :25.64m
  • 階数 :地下1階 地上4階 塔屋1階
  • 設計 :内藤廣建築設計事務所
  • 施工 :鹿島建設
  • 設備 :森村設計
  • 構造 :KAP

施設概要

最後に・・・

以上が内藤廣設計「とらや赤坂店」の特徴と魅力でした。

内藤廣さんはもちろんですが、プロジェクトに関わった方々の「とらや」に対する思いや熱意がひしひしと伝わってくる作品になっていました。

たけひこ
たけひこ

機会があれば是非「とらや赤坂店」に訪れてみてください!

ご覧いただきありがとうございました!!

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