十和田市現代美術館とは?

十和田市現代美術館は、青森県十和田市に建つ、22人のアーティストによるコミッションワーク(デザイナーがクライアントから依頼されて作成した作品)を中心にした美術館である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家西沢立衛。
「美術と街の融合」
このコンセプトを基に、作品ごとに分割された展示棟が街に投げ出されるように配置され、街に美術品が置かれたような風景を作り出す。
西沢立衛とは?
- 1966 横浜市に生まれる
- 1988 横浜国立大学卒業
- 1990 同大学修士課程修了
- 1995 妹島和世と共にSANAA設立
- 1997 西沢立衛建築設計事務所設立
- 2010 プリツカー賞受賞
西沢立衛は、2010年に建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した建築家である。
代表作としては「豊島美術館」「森山邸」「千住博美術館」などが挙げられる。
また、西沢立衛は同じく日本を代表する建築家妹島和世と共に建築家ユニットSANAAを結成し、世界的にも活躍している。
建築の特徴

十和田市現代美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 街に投げ出された展示室
- アートのための家
- 同時並行的につくられた「アート作品」と「建築」
- 美術と街をつなぐ大きな開口
- 展示室をつなぐガラスの回廊
街に投げ出された展示室

この美術館の展示室は、一つの大きな建物に収められているのではなく、様々なボリュームに分割され一定の距離感を保ちながら分散配置されている。
さらに、分散配置された建物は、街に投げ出されたかのように様々な方向に向けられている。
これによって、街の中にアート作品が無造作に点在したような状態となり、街自体が美術館のようにも見えてくる。
アートのための家

22人のアーティストによって、この美術館のためだけに制作されたコミッションワーク。
これらの作品は、分割された展示室一つに対して、一つのアート作品が収められている。
つまり、展示室の一つ一つが、単一のアート作品のためだけにつくられているということである。
この関係は、ある家族のためだけにつくられる家と同じ関係であり、いわばこの展示室は「アートのための家」と比喩することができる。
同時並行的につくられた「アート作品」と「建築」

一つの建物に一つのアート作品を収めるという構成に加え、それらは同時並行的につくられたということも、この美術館の特徴である。
同時並行によって両者の制作進めることで、アート作品に建築を合わせることもできるし、反対に建築に合わせてアート作品をつくることもできる。
実際に、アート作品に合わせて建築のボリュームや開口部の大きさを調整しながら設計を進めたそう。
美術と街をつなぐ大きな開口

街に投げ出されたかのように分散配置されたそれぞれの展示室には、街に対して大きな開口部を持っている。
この大きな開口部によって、中の様子やアート作品が街ににじみ出て、まるで街の中の出来事のように美術館内で起こっていることが伝達する。
この大きな開口部こそが、コンセプトである「美術と街の融合」の実現を手助けしている。
展示室をつなぐガラスの回廊


また、分散配置されそれぞれが独立した展示室は、透明度の高い「ガラスの回廊」によって接続されている。
この回廊は、回遊的な動線によって人々の行動を誘発し、作品から次の作品へ移る際に気持ちをリセットするといった役割を果たす。
さらに、春や秋といった快適な時期には回廊のガラスを開けることができるため、途中で外に出て休憩することなども可能になっている。
建築概要
- 所在地:青森県十和田市
- 竣工 :2008年3月
- 用途 :美術館
- 構造 :S造
- 階数 :地上1階 一部2階
- 設計 :西沢立衛建築設計事務所
- 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
- 設備 :環境エンジニアリング
- URL :https://towadaartcenter.com/
最後に・・・
以上が十和田市現代美術館の建築的特徴でした。
街に投げ出されるように分散配置された展示室が街とアートを接続する魅力的な建築になっていたと思います。

是非一度、十和田市現代美術館を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。