森山邸とは?

森山邸とは、東京都内の閑静な住宅街に建つ、小さな集合住宅のことである。
設計を務めたのは、世界的にも活躍する日本の建築家西沢立衛。
コンセプト「明るい関係」
このコンセプトをもとに、周辺の住宅街にスケール感を合わせて分散配置された10棟の建物とその間の余白が相互に作用し合い、豊かな空間を作り出している。
西沢立衛とは?
- 1966 横浜市に生まれる
- 1988 横浜国立大学卒業
- 1990 同大学修士課程修了
- 1995 妹島和世と共にSANAA設立
- 1997 西沢立衛建築設計事務所設立
- 2010 プリツカー賞受賞
西沢立衛は、2010年に建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞した建築家である。
代表作としては「豊島美術館」「十和田市現代美術館」「千住博美術館」などが挙げられる。
また、西沢立衛は同じく日本を代表する建築家妹島和世と共に建築家ユニットSANAAを結成し、世界的にも活躍している。
建築の特徴

photo by 準建築人手札網站/ CC BY 2.0
森山邸の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 「集合住宅→専用住宅」に変化する建築
- 分散配置された小さな10の建物
- ワンルーム構成
- 内外の境界をなくす大きな開口部
- 内部化する外部空間
「集合住宅→専用住宅」に変化する建築

この建築のクライアントは、ローンを組んでこの集合住宅を購入しているため、その返済のために森山邸の一部を賃貸として貸し出す前提で建設を依頼した。
しかし、ローンを返済しきったら森山邸すべてを自宅にしたいという要望もあり、設計者である西沢立衛氏もその「集合住宅→専用住宅」という移り変わりが面白いと感じ設計に臨んだそう。
分散配置された小さな10の建物

- 「集合住宅→専用住宅」への変遷
- 敷地周辺の街並みのスケール感
この二つ要素を考慮して、建物は10の小さな建物に分け、それらの間に街並みと同様に余白を設けて分散配置する構成がとられた。
これによって、オーナーの住宅部分にも賃貸部分にも豊かな庭や独立性をもたらすことができる。
ワンルーム構成

さらに、それぞれの棟の内部空間にはほとんど間仕切壁が存在せず、ワンルーム空間となっている。
この構成によって、一つ一つの建物の四周に大きさ・形状が様々な開口部を設けることが可能となり、内部空間の豊かさにもつながっている。
内外の境界をなくす大きな開口部

自由な開口部が設けられる独立した分棟配置構成の建物に対して西沢立衛氏は、既製品の窓ではなく、通常よりも大きな窓をいくつも設置した。
これにより、昼間は内部空間に自然光がふんだんに取り込まれ、まるで外にいるような感覚に陥る。
さらに、この大きな開口部は外部空間にも影響を及ぼす。
内部化する外部空間


大きな開口によって内外の境界があいまいになったことで、外部空間にも内部空間と同じくらいものが置かれるようになる。
つまり外部空間の内部化が起こるということである。
この内部化は、単に開口部を大きくするだけでは起こらず、森山邸のように、内部空間と外部空間の面積比が同程度であることも重要な要素になってくる。
建築概要
- 所在地:東京都大田区
- 竣工 :2005年10月
- 用途 :専用住宅+賃貸住宅
- 構造 :S造
- 階数 :地上3階、地下1階
- 設計 :西沢立衛建築設計事務所
- 施工 :平成建設
- 構造 :ストラクチャード・エンヴァイロンメント
- 設備 :環境エンジニアリング
最後に・・・
以上が森山邸の建築的特徴でした。
周辺環境や将来像を考慮した結果生まれた、分散配置された建物とその間の余白空間は、すべての建物に豊かさをもたらしていました。

森山邸のI棟は、「もりやまていあいとう」という名で時間賃借が2021年から行われているため、興味を持たれた方は是非一度森山邸を実際に体験してみてください!
ご覧いただきありがとうございました。