豊島美術館とは?

豊島美術館は、瀬戸内海の中でも緑豊かで、豊富な湧き水を持つ「豊島」に建てられた美術館である。
設計は、建築家西沢立衛氏とアーティスト内藤礼氏が共同で行い、次のことをコンセプトとした。
設計コンセプト「アート・建築・自然 三者の調和と連続」
このコンセプトを基に、水滴をイメージしたというコンクリートのシェルが内部に抽象的な空間を作り出している。
西沢立衛とは?
- 1966 神奈川県横浜市に生まれる
- 1988 横浜国立大学建築学科卒業
- 1990 同大学大学院修了
- 1995 妹島和世と共にSANAA設立
- 1997 西沢立衛建築設計事務所設立
- 1998 日本建築学会賞作品賞受賞
- 2006 日本建築学会賞作品賞受賞
- 2010 プリツカー賞受賞
- 2012 日本建築学会賞作品賞受賞
西沢立衛は、3度の「日本建築学会賞」や建築界のノーベル賞と呼ばれる「プリツカー賞」を受賞した建築家として知られている。
代表作としては、「十和田市現代美術館」や「軽井沢千住博美術館」などが挙げられる。
また、建築家妹島和世氏と共に建築家ユニット「SANAA」を結成し、世界中でも活躍されている。
内藤礼とは?
- 1961 広島県に生まれる
- 1985 武蔵野美術大学卒業
- 1997 「地上にひとつの場所を」ベネチア・ビエンナーレ国際美術展
- 2014 「信の感情」東京都庭園美術館
- 2020 「うつしあう創造」金沢21世紀美術館
内藤礼とは、「地上に存在することは、それ自体、祝福であるのか」という一貫したテーマを基に、様々な作品を手掛けるアーティストである。
金沢21世紀美術館やパリ日本文化会館など、日本の有名な美術館などで多くの作品を展示してきた。
今回の豊島美術館は、建築そのものが内藤礼さんの作品ともなっています!!
建築の特徴

豊島美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 水滴をイメージした有機的な建築
- 盛土を型枠としたコンクリートシェル構造
- くねくねとしたアプローチ空間
- 2つの穴から自然を取り込む「アートスペース」
- 床から水が湧き上がる内藤礼作「母型」
- 自然を可視化する「リボン」
- 豊島美術館に隣接する「カフェ&ショップスペース」
水滴をイメージした有機的な建築

photo by Kentaro Ohno,CC BY 2.0
「自然・建築・アートの共存」を実現するためにはどのような建築がいいか。
この問題に対して西沢立衛氏は、水滴のような自由曲線による建築とすることで、周囲の起伏のある地形と連続しつつ、内藤礼氏の作品とも調和できると考えた。
しかし、、、、
- 水滴のような建築をつくるために、どのようにコンクリートを打設するか。
- 大きなコンクリートの塊をつくると、存在感が大きすぎるのではないか。
このような、問題を解決するための方法として、盛土を型枠とする方法をとった。
盛土を型枠としたコンクリートシェル構造

盛土をつくりたい建物形状に整形し、その上に鉄筋を組みコンクリートを流し込む、というような特殊な構法を採用することで、水滴のような建築が実現した。
この構法は、船舶のスクリュープロペラからヒントを得たという。

スクリュープロペラは滑らかな形態が特徴的である。
これ、実は砂の型枠によって成形されており、この方法をコンクリートに応用しようと考えた。
この珍しい構法によって、水滴形状のコンクリートシェルを作り出し、その後上部にあけられた2つの穴から中の土をかき出した。
くねくねとしたアプローチ空間

豊島美術館へと向かう、くねくねとしたアプローチ空間もこの美術館の魅力である。
くねくねと舗装された道は、一度丘を経由してから豊島美術館にたどり着くようになっており、途中瀬戸内海の美しい眺めや、豊島の豊かな自然を感じられるように工夫されている。
さらに、周囲になされた植栽も、豊島内に自生する植物を選んでいるため、島と調和した美術館となっている。
2つの穴から自然を取り込む「アートスペース」

盛土型枠によって作り出された「アートスペース」は、約40×60mにも及ぶ無柱空間となっている。
また、この「アートスペース」の天井には2つの大きな穴が開けられているが、そこには窓は嵌められていない。
この2つの大きな穴から、日光や雨、風、鳥の鳴き声などの自然を取り入れることで、コンセプト通り「自然と建築の調和」がなされている。
さらに、「アートスペース」の床には小さな穴が無数にあけられ、そこから水が湧き上がってくる。
床から水が湧き上がる内藤礼作「母型」

豊島美術館の床には、直径2㎜の小さな穴が186カ所に設けられており、そこからは井戸を掘ってくみ上げた天然水が湧き上がる。
その湧水が、傾斜した床を徐々に流れていき、1日かけてある一点に小さな「泉」を作り出す。
これを実現するために、床には撥水材を塗り、水をはじくようになっている。
また、この建築と一体となったアート作品によって、コンセプトの「アート×建築×自然の調和」が完遂されたということになる。
自然を可視化する「リボン」

さらに、アートスペース天井にあけられた二つの穴には、細い紐のようなリボンが取り付けられている。
これも内藤礼氏による作品である。
このリボンが、穴から取り入れられた風によってなびくことで、目に見えない自然を可視化し、より自然を感じられるような空間を作り出している。
豊島美術館に隣接する「カフェ&ショップスペース」

豊島美術館の横には、同じように水滴型をした、小さなカフェ&ショップスペースが設置されている。
カフェでは、豊島さんの食材を使ったロールケーキやジュースなどが楽しめる。
ショップでは、豊島美術館に関するオリジナルグッズや書籍などが売られている。

内部は、天井に小さな穴が開けられているが、光の抑えられた落ち着く空間となっている。
アートスペースでは、天上の開口部にガラスははめ込まれていなかったが、こちらの開口にはガラスが設置されている。
建築物概要
- 所在地:香川県小豆郡土庄町豊島
- 竣工 :2010年9月
- 用途 :美術館
- 構造 :鉄筋コンクリート造
- 階数 :地上1階 一部地下1階
- 高さ :4.670m
- 設計 :西沢立衛建築設計事務所
- 構造 :佐々木睦朗構造計画研究所
- 施工 :鹿島建設
- 設備 :鹿島建設
施設概要
- Tel :0879-68-3555
- 休館日 :火曜(3〜11月)火曜から木曜(12〜2月)
- 料金 :1,570円 15歳以下無料
- 営業時間:10〜17時(3〜10月) 10~16時(11~2月)
- URL :https://benesse-artsite.jp/art/teshima-artmuseum.html
最後に・・・
以上が瀬戸内海の自然豊かな豊島に建つ「豊島美術館」の特徴でした。
豊島の自然、内藤礼氏のアート作品、西沢立衛氏の建築が一体となった魅力的な美術館だったと思います。
瀬戸内海付近を訪れる際は是非、豊島美術館に立ち寄ってみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。