狭山の森礼拝堂とは?

狭山の森礼拝堂は、埼玉県所沢市の狭山湖畔霊園内に建つ、豊かな自然に囲まれた礼拝施設のことである。
設計を務めたのは、住宅から商業施設、チャペルなど幅広く活躍する建築家「中村拓志」。
「人々とともに、建築も祈る」
このようなコンセプトを基に、深い森とお墓の接続点に新たな祈りのための施設が完成した。
中村拓志とは?
- 1974 東京に生まれる
- 1999 明治大学大学院博士前期課程修了
- 1999 隈研吾建築都市設計事務所入所
- 2002 NAP建築設計事務所を設立
- 2007 情熱大陸出演
中村拓志は、1974年生まれ、2021年現在47歳の建築家である。
代表作としては、「東急プラザ表参道原宿店」「モンキーカフェ」「zozo本社屋」などが挙げられる。
個人事務所を設立する前は、木材をふんだんに使用した建築で知られる建築家隈研吾氏の設計事務所に勤務していたことでも有名である。
建築の特徴




狭山の森礼拝堂の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 樹木と一体になった建築
- 全面的な「合掌造り」
- 祈りを形にした建築
- 重なりあう251本の登り梁
- 風景を切り取る三角形の開口部
- 自然現象的な屋根仕上げ
樹木と一体になった建築




狭山の森礼拝堂は、深い森と墓群の境界部に位置する。
そのため、中村氏は木々に包まれ、森へ祈りをささげるような礼拝堂を想像した。
そこで、お墓側に植樹を施し、その樹木の広がりに合わせて建築の壁の上端部を内側に傾斜させることにしたという。
この操作によってつくられる建築形態は、日本伝統の住宅様式「合掌造り」のようになる。
全面的な「合掌造り」




さらに、この合掌造りは全方位的に展開されることとなる。
通常の合掌造りでは地震力に対応するため、傾斜した壁(屋根)以外に耐震壁を設ける。
しかし、この建築では全方位的に合掌造りを展開しているため、それぞれの屋根架構のみで鉛直力と地震力を負担できるようになった。
よって、屋根架構のみで建築を成立させているため、無駄のない洗練された形態が浮かび上がる。
祈りを形にした建築




こうしてできた礼拝堂の形態は、人々が祈りをささげる時に1本1本の指を合わせて祈るかのような形態になるという。
これこそが「人々とともに、建築も祈る」というコンセプトの意味である。
重なりあう251本の登り梁




「屋根」と「壁」両方の性質を併せ持つ傾斜した架構は、251本のカラマツ集成材によって構成されている。
この251本の木材は、長さと傾斜角がそれぞれ異なるため、正確なモデリングデータを基に高精度な技術で製作されている。
また、この木材は角が面取りされており、構造としてだけではなく仕上げ材としての役割も果たす。
風景を切り取る三角形の開口部




合掌造りを採用したことで受動的に現れた三角形の開口部。
この開口部も全方位的に展開されており、お墓の風景を切り取ったり森の自然を切り取ったりと、様々な風景を建築内部にもたらす。
自然現象的な屋根仕上げ




傾斜屋根の仕上げには、恒久性や耐久性などを考慮してアルミ鋳物板が採用されている。
また、この材料は1枚ごとに異なる琉痕・焼跡になっている。
これにより、自然界の不規則性といった要素が建築内に取り込まれ、周辺の森との親和性がつくられている。
建築概要
- 所在地:埼玉県所沢市
- 竣工 :2014年1月
- 用途 :礼拝堂
- 構造 :RC造、一部W造
- 階数 :地下1階 地上1階
- 設計 :NAP建築設計事務所
- 施工 :清水建設
- 構造 :Arup
- 設備 :Arup
- URL :http://www.boenf.org/architecture/sayama-chapel.html
最後に・・・
以上が狭山の森礼拝堂の特徴でした。
合掌造りという日本伝統の様式を採用しつつも、全く新しい形態を持ち、周辺の自然環境とも共存した魅力的な建築になっていたと思います。
是非一度、狭山の森礼拝堂を訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。
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