建築

ラ・セーヌ・ミュージカル【坂茂】

ラ・セーヌ・ミュージカルとは?

photo by GraphyArchy,CC 表示-継承 4.0

ラ・セーヌ・ミュージカルは、パリ西部にあるセーヌ川の中洲であるセガン島に建てられた大規模な音楽複合施設である。

コンセプト「卵型ホールをシンボルに」

このことをコンセプトとして、設計を務めたのは日本の建築家坂茂ばんしげる

コンセプト通り、卵型の大きなホールと周りに設置された船の帆のような太陽光パネルが特徴的な外観を作り出している。

たけひこ
たけひこ

そんな、ラ・セーヌ・ミュージカルの特徴を今回ご紹介します!

坂茂とは?

  • 1957 東京に生まれる
  • 1977 南カリフォルニア建築大学
  • 1980 クーパー・ユニオン建築学部
  • 1982 磯崎新アトリエに在籍
  • 1985 坂茂建築設計設立
  • 1999 ニューヨークに事務所開設
  • 2004 パリに事務所開設
  • 2014 プリツカー賞受賞

坂茂とは、日本・パリ・ニューヨークに3つの設計事務所を持ち、世界中で活躍されている建築家である。

代表作としては、「静岡県富士山世界遺産センター」「ポンピドゥーセンターメス」「紙のカテドラル」などが挙げられる。

坂茂と紙管

坂茂氏は、トイレットペーパーの芯などに用いられる「紙管」を仮設建築に用いることでも知られている。

「紙管」は、紙製であるためどこでも生産できるという利点を生かし、被災地などの仮設建築に利用されている。

建築の特徴

左:オディトリア 右:グランド・セーヌ

ラ・セーヌ・ミュージカルの建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 川に浮かぶ船のような外観
  2. ガラスと木架構で包まれた「オディトリアム」
  3. 船の帆をイメージした太陽光パネル
  4. 「オディトリアム」の周りを囲む外廊
  5. 木材や紙管であふれる「オディトリアム」内部
  6. 6000人を収容する多目的ホール「グランド・セーヌ」
  7. 広場にある欧州最大規模の液晶スクリーン

川に浮かぶ船のような外観

photo by Jansola724,CC 表示-継承 4.0

ラ・セーヌ・ミュージカルの外観は、まるで川に浮かぶ大きな船のようだ。

鉄筋コンクリート造の土台が大きな船、その上にある太陽光パネルが帆のようである。

さらに、この大きな船の上に乗る卵型のホールが、光を反射し輝くことで、その船のシンボル性を作り出している。

ガラスと木架構で包まれた「オディトリアム」

ラ・セーヌ・ミュージカル最大の特徴である「オディトリアム」は、1150席を収容するクラシック音楽向け音楽ホールになっている。

このホールは、木材を六角形と三角形のパターンで組んだ架構、その周りを覆うガラスという構成になっている。

坂茂と木架構

この写真は、ホール内部から見た木架構である。

太い木材が六角形と三角形の規則的なパターンを繰り返し、全体を構成していることがわかる。

この木架構、実は坂茂氏の建築によく見られる構造である。

彼の代表作「ポンピドゥーセンターメス」でも同じような構造が採用されており、その時は中国の伝統的竹編み帽子を参考にしたと言っていた。

船の帆をイメージした太陽光パネル

photo by Fred Romero,CC BY 2.0

卵型ホールの一部を覆うようにして設置されている、約470枚の太陽光パネル。

これは、船の帆をイメージして設計された形状である。

さらに、このパネルはレールの上に設置されており、太陽の方位に合わせて自動的に移動する仕組みになっている。

また、移動に要する電力は太陽光パネルで生産する、内側のホワイエ空間の日よけともなる、など、環境負荷に配慮した構成になっている。

「オディトリアム」の周りを囲む外廊

卵型のホールは、木架構の外壁とモザイクタイルの外壁の二つによる、入れ子式となっている

その2つの壁の間を360度囲う外廊は、温かい木のぬくもりや明るい光が降り注ぐ魅力的な空間となる。

また、モザイクタイルは、光の当たる角度によってさまざまに色合いが変化。

時間や気候によって多様な表情を見せる空間がつくられている。

木材や紙管であふれる「オディトリアム」内部

photo by Jean-Pierre Dalbéra,CC BY 2.0

オディトリアム内部には、木材や、坂茂氏がよく用いる紙管が随所に使用されている。

内側の壁、バルコニー下の天井、第天井の六角形などには木材を。

その六角形の中の円や、客席部分には紙管が用いられている。

6000人を収容する多目的ホール「グランド・セーヌ」

photo by So_P,CC BY-ND 2.0

卵型ホールの横にある、コンクリートの建物内には、立ち見を含めて最大6000人収容する多目的ホール「グランド・セーヌ」が存在する。

ここは、ロック音楽のコンサートやテレビ番組の収録など、クラシック音楽を主とした「オディトリアム」とは対照的に、幅広い目的で使用されている。

また、この外にあるホワイエ(たまり場)空間の天井には、2種の塗料が用いられており、外廊同様、光の当たり方で色合いが変化するようになっている。

広場にある欧州最大規模の液晶スクリーン

photo by So_P,CC BY-ND 2.0

メインエントランス前の広場中央には、欧州最大規模となる液晶スクリーンが設置されている。

「施設内の観客だけでなく、誰もが音楽や文化を楽しめるような空間にしたい」

設計者である坂茂氏のこのような考えを基に設置されたのが、この巨大なスクリーンである。

建築物特徴

  • 所在地:フランス・パリ
  • 竣工 :2017年1月
  • 用途 :多目的ホール
  • 構造 :RC造 木造 S造
  • 階数 :地下1階 地上9階
  • 設計 :Shigeru Ban Architects Europe
  • 構造 :SETEC TPI
  • 施工 :Bouygues Bassinet IDE
  • 設備 :Artelia

施設概要

  • Tel  :0825 05 44 05 (0.15€/分)
  • 休館日 :1月1日、5月1日、7月20日~8月17日、12月25日
  • 料金  :大人料金:15,90€ 子供料金(~15歳):9,90€
  • 営業時間:11時~19時
  • URL  :La Seine Musicale : billetterie, agenda, infos…

最後に・・・

以上がフランスパリにあるラ・セーヌ・ミュージカルの特徴でした。

川に浮かぶ船のような外観と、シンボリックな卵型のホールが特徴的な、魅力あふれる建築だったと思います。

たけひこ
たけひこ

フランスパリを訪れる際は是非、ラ・セーヌ・ミュージカルに立ち寄ってみてください!

ご覧いただきありがとうございました。

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