静岡県富士山世界遺産センターとは?

静岡県富士山世界遺産センターは、2013年に世界文化遺産に登録された「富士山」を、歴史、文化などの観点から伝えていくために建てられた施設である。




富士山は古代より、噴火を繰り返すため人々から恐れられていた。
それと同時に神が宿る山として信仰の対象ともなっていた。
これらのことより、2013年「富士山ー信仰の対象と芸術の源泉」として価値が認められ、世界文化遺産登録を果たした。
設計を務めたのは建築家坂茂氏であり、次のことをコンセプトとして設計したという。
「富士の水の循環と反映」
建築の特徴としては、「逆さ富士」型をした建物が前面に設置された水盤に映し出されることで、富士山の虚像が出現する構成となっている。
このような特徴を持つ静岡県富士山世界遺産センターの詳細を今回ご紹介します!!
坂茂とは?
- 1957 東京に生まれる
- 1977 南カリフォルニア建築大学
- 1980 クーパー・ユニオン建築学部
- 1982 磯崎新アトリエに在籍
- 1985 坂茂建築設計設立
- 1999 ニューヨークに事務所開設
- 2004 パリに事務所開設
- 2014 プリツカー賞受賞
坂茂は、日本のみならずアメリカやフランスにも自身の事務所を構え、世界的に活躍される建築家である。
代表作としては、「ポンピドゥー・センター・メス」「紙のカテドラル」などが挙げられる。




坂茂氏が、建築によく用いる紙管。
紙管とは、トイレットペーパーの芯などに使われる紙の筒のことである。
坂茂氏は、紙管がどこででも生産が可能であるという利点を生かし、震災などで困っている人々に紙管の仮設施設などを提供する活動を行っている。
建築の特徴




静岡県富士山世界遺産センターの建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 逆さ富士型の実像 ×富士型の虚像
- 鳥居と水盤が作り出すアプローチ空間
- 日本らしい富士山を作り出す木組み
- 富士登山の疑似体験ができる螺旋状のスロープ
- 5階展望台から望む富士山
- 富士の水の循環と反映
- 夜になるとライトアップされる「逆さ富士」
逆さ富士型の実像 ×富士型の虚像




美しく力強い富士山を背景にどんな建築をつくるべきか?
単純に、山型をした屋根を設けるのはナンセンス。しかし、富士山ならではのシンボル性は必要。
このように考えた坂茂。そこで思い出したのが、子供のころに見た山中湖に映る「逆さ富士」だったという。




山中湖に映る「逆さ富士」は、季節、天候、時間などで、そのイメージが様々に変化する。
抽象的にイメージを変化させる富士山の虚像と、絶対的な実像。
坂茂氏は、この組み合わせをうまく利用して、富士山と呼応する建築を建てようと考えた。
その結果、建物を「逆さ富士」型にして、水盤に富士山の虚像を浮かび上がらせるという構成をとることとなった。
鳥居と水盤が作り出すアプローチ空間




富士山世界遺産センター内には、富士型の虚像を作り出す水盤と、浅間神社の中で最大となる鳥居が設置されている。




浅間神社とは、富士山をご神体とする神社のことである。
この神社は、全国の富士山が眺められる場所を中心に約1,300社ほど存在する。
その中でも総本宮とされているのが、写真にある浅間大社だという。
ここを訪れた観光客は、富士山を背景に鳥居をくぐり、水盤をぐるりと回り込むようにしてエントランスへ向かう。
この大胆なアプローチ空間も、この施設の魅力の一つである。
日本らしい富士山を作り出す木組み




さらに、富士山世界遺産センターは、建物を覆っている木組みも特徴的である。
この木組みは、6,973ピースものヒノキの部材を、3D加工マシーンによって削り出し、それを編み込むように組んでいる。
このヒノキの木組みによって、日本らしい富士山がつくられています!!
富士登山の疑似体験ができる螺旋状のスロープ




photo by JGDfgdfgf1 /CC 表示-継承 4.0
「逆さ富士」型をした建物の内部空間は、その形状に沿ってスロープが螺旋状に渡されている。
この全長193mに及ぶスロープを、富士山の映像と共に上っていくことで、富士登山の疑似体験ができる内部構成となっている。
富士山はきつくて登れないよという方は、こちらに行ってみるといいかもしれません(笑)
5階展望台から望む富士山




そして「逆さ富士」型の建物の頂上には、展望テラスが設けられており、そこからは周辺の街並みと巨大な富士山が望める絶景スポットとなっている。
また、テラスの手前側にある壁には、大きな開口部が設けられている。
この大きな開口部は「ピクチャーウィンドウ」と言って、実際の風景を窓という額縁に入れて、絵を鑑賞するかのように景色を楽しむことができるようになっている。
富士の水の循環と反映




坂茂氏は、富士山世界遺産センターの設計コンセプトとして次のことを挙げている。
富士の水の循環と反映
このコンセプトを基に、次のような工夫がこの施設ではなされている。
- 水盤の水に湧き水を利用
- エアコンの冷却水などに湧き水を利用
- 湧き水を減菌して、トイレの洗浄や散水用として利用
また、水の循環という面では、水盤の水が蒸発することで、富士山周辺の気候に帰っていく。
これらの過程によって、富士の水の循環と反映が実現されている。
夜になるとライトアップされる「逆さ富士」




富士山世界遺産センターの建物は、上の写真のように日没頃から22時までライトアップされる。
また、年末年始や祝日には普段と異なる色のライトアップがなされるようだ。
赤くライトアップされた上の写真の富士山は、今にも噴火しそうに見えます。
建築物概要
- 所在地:静岡県富士宮市宮町
- 竣工 :2017年11月
- 用途 :博物館
- 構造 :鉄骨造
- 高さ :18.56m
- 階数 :地上5階
- 設計 :坂茂建築設計
- 施工 :佐藤工業、若杉組など
- 構造 :Arup
- 設備 :Arup
施設概要
- Tel :0544-21-3776
- 休館日 :毎月第3火曜日 及び 施設点検日
- 料金 :大人300円 高校生以下70歳以上無料
- 営業時間:9:00 ~ 17:00
- アクセス:JR身延線富士宮駅から徒歩8分
- URL :【公式ホームページ】静岡県富士山世界遺産センター (mtfuji-whc.jp)
最後に・・・
以上が静岡県富士山世界遺産センターの特徴と魅力でした。
山中湖に映る「逆さ富士」からインスピレーションを受けた逆さ富士型の建物と、それに伴う富士型の虚像が魅力的な景観を作り出していました。
静岡を訪れる際は是非、富士山世界遺産センターに立ち寄ってみてください!!
ご覧いただきありがとうございました!
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