紀尾井清堂とは?

紀尾井清堂は、千代田区紀尾井町にある、機能や用途を考えずに建てられた建築物である。
設計を務めたのは、日本を代表する建築家内藤廣。
テーマ「機能のない建築」
このテーマを基に、資本主義的な価値を持ったビルが立ち並ぶ千代田区に、建築的価値のみしか持っていない建築物が完成した。
内藤廣とは?
- 1950 横浜市に生まれる
- 1974 早稲田大学理工学部卒業
- 1976 早稲田大学大学院修了
- 1979 菊竹清訓建築設計事務所勤務
- 1981 内藤廣建築設計事務所設立
- 2003 東京大学教授
内藤廣とは、多くの公共建築や文化施設などを手掛ける、日本を代表する建築家である。
代表作としては、「海の博物館」「牧野富太郎記念館」「旭川駅」などが知られ、屋根天井などに木材をふんだんに使用した建築を多く手がける。
また、建築に関する著書も多く手がけており、文筆家・思想家としても知られている。
建築の特徴

紀尾井清堂の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。
- 機能のない建築
- 宙に浮かぶコンクリートキューブ
- コンクリートキューブを支える4本の柱
- 建物を覆うガラススクリーン
- 洞窟内のようなキューブ下空間
- 4層吹き抜けのキューブ内部空間
- 内部に光をもたらす9つのトップライト
機能のない建築

「思ったようにつくってください、機能はそれに合わせて後から考えますから」
建主である「一般社団法人 倫理研究所」はこのような要求を設計者である内藤廣氏に出した。
内藤氏と倫理研究所は、20年ほど前に内藤氏が手がけた「富士高原研究所」以来の付き合いであり、その信頼関係によって今回の前代未聞の建築が実現した。
宙に浮かぶコンクリートキューブ

紀尾井清堂は、15m角の鉄筋コンクリート造のキューブが、4本の柱によって3.6m程空中に浮いた構成となっている。
重量感のあるコンクリートキューブが最も際立つ方法を探った結果、このような構成になったという。
さらに、コンクリートキューブの正面には外部階段が設けられており、内部の木であふれる空間が外に漏れ出し、人々の興味を引く。
コンクリートキューブを支える4本の柱

15m角のコンクリートキューブは、4本の柱のみで持ち上げられている。
この柱は、正方形から六角形に断面が変化する、複雑な多面体形状をもつ。
この末広がりの形状は、上部の重量感あるコンクリートキューブを支えるのに合理的な形状であるそう。
建物を覆うガラススクリーン

コンクリートキューブ全体を覆うガラススクリーンは、上から鉄骨の支持材を突き出し、そこからガラスを吊り下げるといった方法を採用している。
そのため、方立てといった視線を遮るものがなくなり、コンクリートキューブの形状がはっきりと外部からでも確認できるようになっている。
さらに、ガラスとガラスの間には隙間が設けられており、ガラスとコンクリートで挟まれた空間に光だけでなく風ももたらしている。
洞窟内のようなキューブ下空間

半地下であるキューブ下の空間は、素材の粗さが目立つ内装仕上げによって、洞窟のような雰囲気がつくられている。
柱や天井のコンクリートは、スギ板を型枠とすることで、木の材質感がコンクリートに映り込み、温もりと粗さを兼ね備えた空間をつくっている。
床や壁は、島根県の「石州瓦」の生産過程で生じる廃材を再利用しており、荒々しい材質感が魅力的な雰囲気を作り出している。
4層吹き抜けのキューブ内部空間

コンクリートキューブの内部は、4層吹き抜けとなっており、床や壁の木材によって温もりを感じる空間が形成されている。
また、柱や梁は半地下空間と同様にコンクリート打ち放しになっているため、木材とコンクリートのコントラストが際立ち、落ち着いた雰囲気をつくっている。
内部に光をもたらす9つのトップライト

4層吹き抜け空間の上部を見上げると、9つのトップライトから眩い光が落ちてきている。
このトップライトが、コンクリートの壁で囲われて暗い雰囲気になってしまいそうな内部空間に豊かな光をもたらしている。

さらに、この9つに分けられたトップライトに合わせて、内部の照明も点々としたランダム性のあるものとなっている。
建築概要
- 所在地:東京都千代田区紀尾井町
- 竣工 :2020年12月
- 用途 :なし
- 構造 :RC造、S造、PC造
- 高さ :20.560m
- 階数 :地上5階
- 設計 :谷口建築設計研究所
- 施工 :前田建設工業
- 構造 :KAP
- 設備 :森村設計
施設概要
「奇跡の一本松の根」展
令和4年3月11日~令和5年2月9日(予定)
- Tel :03-3264-2279
- 営業時間:10:00〜16:00
- 開館日 :火・木・土曜日
- URL :https://www.rinri-jpn.or.jp/news/16815/
- アクセス:JR四ツ谷駅(麹町口)より徒歩10分
- 料金 :無料
最後に・・・
以上が紀尾井清堂の特徴でした。
コンクリートキューブが宙に浮いたような構成と、木のぬくもりを感じる内部空間の対比が魅力的な建築作品になっていたと思います。

是非一度、紀尾井清堂に訪れてみてください!!
ご覧いただきありがとうございました。