【建築紹介96】落水荘【フランク・ロイド・ライト】

目次

落水荘とは?

落水荘とは、アメリカペンシルべニア州の郊外の山の中に建つ、住宅作品のことである。

設計を務めたのは、近代建築の三大巨匠の一人として有名な建築家フランク・ロイド・ライト。

「滝の上に建つ家」

このような他に類を見ないような自然と調和した構成が、世界中の人々の興味を引き、ライトの代表作としてその名を広く轟かせている。

フランク・ロイド・ライトとは?

  • 1867 アメリカに生まれる
  • 1885 ウィスコンシン大学入学
  • 1893 事務所設立
  • 1959 死去(91歳)

フランク・ロイド・ライトは20世紀を代表する建築家であり、「ル・コルビュジエ」「ミース・ファン・デル・ローエ」と共に「近代建築の三大巨匠」として有名である。

代表作としては、「ロビー邸」「帝国ホテル」「グッゲンハイム美術館」などが挙げられる。

「プレーリースタイル」や「有機的建築」といった自然と調和する建築的概念を数多く発表し、世界各地で多くの建築作品を残している。

建築の特徴

滝の上に建つ家

落水荘(Fallingwater)は名前からもわかるように、落水(滝)の上に荘(住宅)が乗っかったような構成となっている。。

「滝の見える家にしてくれ」

この住宅の施主であるカウフマンは、最初このような要求をライトに出していた。

しかし、この要求に対してライトは、滝を住宅の下に設置することで、見るものではなく音や雰囲気で感じるものにしてしまったのである。

この構成に対して、カウフマンも最初は戸惑い、却下しようとしたそうだが、結局ライトに説得されたという。

浮世絵に影響を受けた建築

この滝と住宅が調和したような構成は、葛飾北斎の浮世絵「木曾海道小野ノ瀑布」に影響を受け設計されたと言われている。

そもそもライトは「浮世絵収集家」としても有名であり、日本を訪れた際には相当な数の浮世絵を買いあさったともいわれている。

そんな日本文化に興味を持っていたライトが浮世絵に影響を受けて建てた作品だからか、落水荘もどこか日本を感じるような外観になっている。

水平ラインを強調するテラス

photo by Ruhrfisch/ CC 表示-継承 3.0

滝に目を引かれる作品であるが、建物自体もとてもインパクトのある構成となっている。

そのインパクトを作り出しているのが、各階に設けられ、それぞれが滝の方向に大きく張り出しているテラスである。

このテラスによって建物の水平ラインが強調されスタイリッシュな外観が形成されつつ、内外をつなぐ役割も果たしている。

この水平ラインを際立たせる構成をライトは「プレーリースタイル(草原様式)」と名付けている。

プレーリースタイル
プレーリースタイルの代表作「ロビー邸」

プレーリースタイルとは、屋根などを水平に伸ばすことで水平ラインを強調した構成が特徴的なデザイン様式である。

この構成によって、内部空間と外部空間がシームレスにつながり、アメリカの広大な草原に建築が溶け込むといったことをイメージしているという。

天井の低い内部空間

photo by Jeremy Weate/ CC BY 2.0

落水荘の内部空間は、天井高が約2.5mとアメリカの標準的な住宅と比較するとかなり低く抑えられている。

この構成によって内部空間に安心感や親密感がもたらされている。

さらに、天井はテラス前の部分に段差が存在し、そこでもう一段階高さが低くなっている。

外への意識を促す開口部

テラスに出る開口部の高さが低く抑えられていることで空間に様々な変化がもたらされている。例えば、、、

  1. 水平ラインのさらなる強調
  2. 窓の外に対する求心性の向上

などが挙げられる。特に二つ目の要素は絶大であり、大きな開口だと視線が拡散し外に集中できないが、小さな開口だと視線が一点に集中する。

この効果をうまく使った建築が日本にもあるが、それが安藤忠雄氏設計の「秋田県立美術館」である。

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建築概要

  • 所在地:アメリカペンシルべニア州郊外
  • 竣工 :1936年
  • 用途 :住宅
  • 構造 :RC造
  • 階数 :地上3階、地下1階
  • 設計 :フランク・ロイド・ライト
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