【建築紹介90】ラ・トゥーレット修道院:ル・コルビジェ

目次

ラ・トゥーレット修道院とは?

ラ・トゥーレット修道院は、フランス第二の都市リヨンに建つ、僧房や研究室、礼拝堂からなる施設である。

設計を務めたのは、モダニズムを代表する建築家ル・コルビュジエ。

1960年に竣工したこの建物は、「ロンシャンの礼拝堂」と共に、ル・コルビュジエ後期の代表作として知られている。

ル・コルビュジエとは?

ル・コルビュジエは、近代に生まれた新しい技術「鉄筋コンクリート」を巧みに利用し、近代建築の先駆者となった建築家である。

近代建築の三大巨匠(四大巨匠)
  1. ル・コルビュジエ(1887~1965年、スイス)
  2. ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969年、ドイツ)
  3. フランク・ロイド・ライト(1867~1959年、アメリカ)
  4. (ヴァルター・グロピウス(1883~1969年、ドイツ))

代表作としては、「サヴォア邸」「ロンシャンの礼拝堂」「ユニテ・ダビタシオン」などが挙げられる。

さらに、ル・コルビュジエは建築家としてだけではなく、画家としても有名であり、「ピュリスム(1918~25年)」と呼ばれるフランスで展開された絵画運動の先導者としても知られている。

建築の特徴

ラ・トゥーレット修道院の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. コルビュジエのエッセンスを詰め込んだ作品
  2. 中庭を取り囲む修道院
  3. 傾斜を生かした建築
  4. ピロティ × コンクリートの塊
  5. 「光と色」がつくる荘厳な礼拝空間
  6. トップライトのある祭壇

コルビュジエのエッセンスを詰め込んだ作品

ラ・トゥーレット修道院は、ル・コルビュジエが過去に行った設計での経験を生かして建てられた建築といわれている。

修道院とは、修道僧が生活しながら祈りをささげる場である。

このように、修道院はコルビュジエが過去に設計した施設を併せ持った空間であるため、「コルビュジエのエッセンスが集結した建築」とも呼ばれている。

中庭を取り囲む修道院

ラ・トゥーレット修道院は、100の僧房、研究室、礼拝堂などからなる施設であり、それらが中庭を囲うように配置されてる。

北側に礼拝堂が配され、それ以外の施設は中庭を囲うように「コ」の字型に並べられ、そのすべてが中庭を囲う回廊によってつなげられている。

この構成は、フランスにある「ル・トロネ修道院」を参照したと言われている。

ル・トロネ修道院

人里離れた丘のふもとに建つル・トロネ修道院。

中世の時代に建てられた建築であり、石のみでつくられ、装飾を排したシンプルな構成が特徴的。

建物の構成は、中央の大きな庭を囲うように、回廊空間と諸施設が配されている。

傾斜を生かした建築

東側エントランス部分
photo by Fred Romero/CC BY 2.0

ラ・トゥーレット修道院は、西側が下がった傾斜地に建てられている。

そのため、最も高いところにある東側部分にエントランスを設け、その高さを3階と設定し、それより上階には僧房、下階には礼拝堂や研究室などが収められている。

ピロティ × コンクリートの塊

ラ・トゥーレット修道院は、礼拝堂のある北側部分とそれ以外の部分が空間だけでなく、外観でも対比的に表現されている。

  • 礼拝堂 → コンクリートの塊
  • その他 → ピロティのある建物

この対比的な表現によって空間的変化や雰囲気の違いを作り出している。

さらに、ここのピロティは建物のサイズ感に対してかなり細いものになっている。

この構成は、サヴォア邸にも似た構成が見られ、コルビュジエの様々な建築の融合が感じられる。

「光と色」がつくる荘厳な礼拝空間

北側に配されたコンクリートの塊の中にある礼拝空間は、光と色によって豊かな内部空間がつくられている。

  • 天井   :四角形のトップライト
  • 壁上部  : スリット状の開口部
  • 壁下部  :色ガラスの入った開口部

これらの構成は、ロンシャンの礼拝堂にもみられる構成であり、コンクリートの空間に光と色によって多様な表情を映し出す。

トップライトのある祭壇

礼拝堂横にある祭壇の上部には、「光の大砲」と呼ばれる3つのトップライトが設けられている。

このトップライトは、円筒型をしており、その側面がコルビュジエの特有の原色の彩色によって塗られている。

ここに光が落ちると、側面に光が当たることで色鮮やかな色が浮かび上がり、空間に多様性をもたらす。

建築概要

  • 所在地:フランス リヨン
  • 竣工 :1960年
  • 用途 :修道院
  • 構造 :RC造
  • 階数 :地上5階 
  • 設計 :ル・コルビュジエ
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