【建築紹介88】ユニテ・ダビタシオン:ル・コルビュジエ

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ユニテ・ダビタシオンとは?

ユニテ・ダビタシオンは、フランスのマルセイユに建つ、レストランや商店、幼稚園や体育館などあらゆる施設を併設した集合住宅である。

設計を務めたのは、近代建築を代表する建築家ル・コルビュジエ。

生活の全部が詰まった集合住宅

このコンセプトを基に、まるで豪華客船のように、人間の生活に必要なあらゆる施設を一つの建物に内包した超大型集合住宅となっている。

ル・コルビュジエとは?

ル・コルビュジエは、近代に生まれた新しい技術「鉄筋コンクリート」を巧みに利用し、近代建築の先駆者となった建築家である。

近代建築の三大巨匠(四大巨匠)
  1. ル・コルビュジエ(1887~1965年、スイス)
  2. ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969年、ドイツ)
  3. フランク・ロイド・ライト(1867~1959年、アメリカ)
  4. (ヴァルター・グロピウス(1883~1969年、ドイツ))

代表作としては、「サヴォア邸」「国立西洋美術館」「ロンシャンの礼拝堂」などが挙げられる。

さらに、ル・コルビュジエは建築家としてだけではなく、画家としても有名であり、「ピュリスム(1918~25年)」と呼ばれるフランスで展開された絵画運動の先導者としても知られている。

建築の特徴

ユニテ・ダビタシオンの建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 生活のすべてが賄える集合住宅
  2. 「近代建築の五原則」に基づいた構成
  3. 「モデュロール」を基にした住戸スケール
  4. メゾネットタイプの住戸
  5. 中層階にある商店フロア
  6. 豊かな屋上空間
  7. 色鮮やかな配色がされた外観

生活のすべてが賄える集合住宅

ユニテ・ダビタシオン最大の特徴は、この建物一つで生活のすべてが完結できるということである。

豪華客船をモチーフに

生活すべてが一つの建物で完結できるという構成は、豪華客船をモチーフにしているという。

豪華客船に客室のほかに、レストランや娯楽施設など多様な施設が備えられている。

この船の中ですべてが賄えるというシステムに注目し、集合住宅として反映させたのがユニテ・ダビタシオンである。

「近代建築の五原則」に基づいた構成

ユニテ・ダビタシオンの全体構成の基本となっているのは、1926年にル・コルビュジエが発表した「近代建築の五原則」である。

近代建築の五原則
  1. 自由な平面(プラン)
  2. 自由な立面(ファサード)
  3. 水平連続窓
  4. ピロティ
  5. 屋上庭園

これらの要素が建築に取り入れられ、近代建築を象徴するような集合住宅が完成している。

「モデュロール」を基にした住戸スケール

ユニテ・ダビタシオンの住戸部分のスケールは、「モデュロール」によって決められている。

モデュロール

モデュロールは、身長183㎝の人体を基準にした尺度のことである。

module(尺度)とSection d’or(黄金分割)をくっつけてModulorとした造語で、この尺度を規定したのもル・コルビュジエ自身である。

このモデュロールを基にして空間や家具を設計することで、おのずと動きやすく居心地のいい空間がつくられている。

メゾネットタイプの住戸

断面イメージ図

住戸部分の基本プランは、メゾネットタイプ(2層以上で構成される住戸)になっている。

さらに、2つのメゾネットタイプの住戸が中廊下を囲い込むように噛み合わされている。

この構成によって、すべての住戸が東西両方に開口部がを持ち、一日を通して陽差しを享受できるようになっている。

中層階にある商店フロア

「生活のすべてが賄える建物」を実現するために設けられた、中層階にある商店フロア。

ここには、商店やレストラン、郵便局などの施設が並べられており、住民が集まるにぎやかな場所となっている。

さらに、他のフロアと比べ天井高が高く、開口部の形状も違うこのフロアは、ファサードにリズムの変化を与えている。

豊かな屋上空間

「近代建築の五原則」の一つの項目である屋上空間には、様々な豊かな施設が備わっている。

  1. プール
  2. 幼稚園
  3. 集会などを行うステージ
  4. ランニングができるトラック

これらの施設が、「一つの建物内だけでの暮らし」という捉え方によっては閉鎖的な空間に豊かさを与えている。

色鮮やかな配色がされた外観

コンクリートの格子で形成された外観を彩る、鮮やかな側面壁。

赤・青・黄・緑といった原色の強い配色は、画家としても活動したル・コルビュジエ特有の色使いであり、これがファサードに様々な表情を与えている。

しかし、ユニテの側面壁に色を付けたのは、もともと予定していたものではなく、実はコンクリートの粗さを隠すためのものであったそう。

建築概要

  • 所在地:フランス マルセイユ
  • 竣工 :1952年
  • 用途 :複合施設
  • 構造 :RC造
  • 階数 :地上18階
  • 設計 :ル・コルビュジエ
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