【建築紹介89】ロンシャンの礼拝堂:ル・コルビュジエ

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ロンシャンの礼拝堂とは?

ロンシャンの礼拝堂は、フランス東部のロンシャンという街に建つ礼拝施設であり、第二次世界大戦で破壊された礼拝堂を芸術性によって復活させようと試みた作品でもある。

設計を務めたのは、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ。

「音響的」な礼拝堂

このコンセプトを基に、有機的曲線を持ったファサードや屋根が、礼拝堂にふさわしい荘厳な空間を作り出している。

ル・コルビュジエとは?

ル・コルビュジエは、近代に生まれた新しい技術「鉄筋コンクリート」を巧みに利用し、近代建築の先駆者となった建築家である。

近代建築の三大巨匠(四大巨匠)
  1. ル・コルビュジエ(1887~1965年、スイス)
  2. ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969年、ドイツ)
  3. フランク・ロイド・ライト(1867~1959年、アメリカ)
  4. (ヴァルター・グロピウス(1883~1969年、ドイツ))

代表作としては、「サヴォア邸」「国立西洋美術館」「ユニテ・ダビタシオン」などが挙げられる。

さらに、ル・コルビュジエは建築家としてだけではなく、画家としても有名であり、「ピュリスム(1918~25年)」と呼ばれるフランスで展開された絵画運動の先導者としても知られている。

建築の特徴

ロンシャンの礼拝堂の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 有機的な建物形状
  2. 「重厚さ」と「軽快さ」の融合
  3. 壁と屋根の間のスリット
  4. 光がつくる荘厳な空間
  5. 光の落ちる3つの塔

有機的な建物形状

サヴォア邸ユニテ・ダビタシオンといった「近代建築の五原則」を基につくられたモダニズム建築とは、一線を画す形態を持つロンシャンの礼拝堂。

有機的な曲線を持つ正面ファサードは、カニの甲羅をモチーフに設計されたと言われている。

ル・コルビュジエの初期から見られた水平・垂直ラインの美しさとは対比的なロンシャンの礼拝堂は、「コルビュジエ後期の代表作」ともいわれている。

「重厚さ」と「軽快さ」の融合

ロンシャンの礼拝堂には、「重いものを軽く見せ、軽いものを重く見せる」という逆説的な建築技法が用いられている。

  • 重厚な壁 → 白く塗ることで軽快な見た目に
  • 薄い屋根 → 曲面的な反りによって重厚感を演出

このような操作がされた外観は、重厚感を基ながらもどこか軽快さを感じられる不思議なものとなっている。

壁と屋根の間のスリット

逆説的な表現が施された壁と屋根であるが、その両者の接続部分には約10㎝ほどのスリットが設けられており、内部に美しい光を取り入れる。

不思議なのは、薄く軽快な屋根を逆説的に重厚感のあるものに見せているのにも関わらず、その間のスリットによって屋根が浮かせ、再び軽快さを作り出しているということだ。

しかし、このスリットによって建築が重々しくなりすぎないように調節されているようであり、コルビュジエの美的センスを感じる。

光がつくる荘厳な空間

ロンシャンの礼拝堂の南側の壁面には無数の穴が開けられており、その開口部から色ガラスを通して光が入り込み、荘厳な空間を演出している。

さらに、単にランダムな大きさの開口部ではなく、分厚い壁に対して外側が小さく、内に行くほど大きくなる「漏斗状の開口部」となっている。

この構成によって光が拡散し、やさしい光が礼拝空間を優しく包み込む、荘厳な雰囲気を作り出している。

光の落ちる3つの塔

ロンシャンの礼拝堂には、北側に2つ、西側に1つの塔がそびえたっている。

この塔は、上部から光が落ちてくる採光塔になっており、その真下に位置する空間は、小礼拝堂として利用されている。

無数に開いた開口部から光が入るメインの礼拝堂とは雰囲気が異なり、より礼拝に集中できる落ち着いた空間がつくられている。

建築概要

  • 所在地:フランス ロンシャン
  • 竣工 :1955年
  • 用途 :礼拝施設
  • 構造 :RC造
  • 階数 :地上1階 (一部3階)
  • 設計 :ル・コルビュジエ
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