ロンドン市庁舎(シティ・ホール・ロンドン)とは?
- 竣工:ノーマン・フォスター
- 住所:イングランド・ロンドン
- 竣工:2002年
- 用途:庁舎
ロンドン市庁舎(シティ・ホール・ロンドン)は、イギリス及びイングランドの首都・ロンドンにおける、最上位の地方自治体「大ロンドン庁」の本部として、2002年に建設された庁舎建築である。
この庁舎は、ロンドンと海を結ぶテムズ川の流域に位置しており、ロンドン最大の観光スポット「タワーブリッジ」がすぐ近くに佇んでいる。
建築の設計は、イギリスを代表作する建築家「ノーマン・フォスター」が担当。
スライスしたゆで卵を少しずつずらしたかのような独特な形態をしている本庁舎は、ロンドンのランドマークとして、多くの人々に親しまれている。
また、ガラス張りで透明性の高い建物の内部には、長さ500mにも及ぶ螺旋階段が展開されており、有機的な内部空間を形成している。
ロンドン市庁舎(シティ・ホール・ロンドン)の建築的特徴
ロンドン・テムズ川の流域に建つ庁舎建築
イギリスやドイツなどのヨーロッパ諸国に囲われる北海(North Sea)と、イギリスの首都であるロンドンを結ぶ形で大陸を横断する「テムズ川」。
その、イギリスを代表するテムズ川の流域に、ロンドンの行政を統括する「ロンドン市庁舎」は建っている。
すぐ近くには、ゴシック様式の2つの主塔を持つ「タワーブリッジ」も建っており、ロンドンを代表する観光スポットを形成している。
ノーマン・フォスターの代表作
ロンドン市庁舎の設計を務めたのは、イギリスを代表する建築家「ノーマン・フォスター」である。
ノーマン・フォスターは、イギリス・マンチェスターで労働者階級として生まれながら、建築家として大成し、一代貴族にまで成り上がった人物である。
そんなフォスターは、同じくロンドンのシンボル的存在である「30セント・メリー・アクス」の設計も行っており、世界各地でアイコニックな建築作品を手掛けている。
そして、ロンドン市庁舎もまた、ロンドンの一つのランドマークとなっており、彼の現代的で独特な建築スタイルが顕著に表れた作品となっている。
スライスしたゆで卵を少しずつずらしたような形
- スライスしたゆで卵を少しずつずらしたような形
- ダース・ベイダーのヘルメット
- ダンゴムシ
このように、ロンドン市庁舎は、その独特な形態から、様々な近似した形態のものに形容されている。この中でも、やはり一番ピンとくるのは「スライスしたゆで卵をすこしずつずらしたような形」ではないだろうか。
もはや大喜利のようにもなっているが、この独特な形態にはちゃんとした意味がある。
環境負荷に配慮した形態
ロンドン市庁舎の独特な形態には、もちろん、建築にランドマーク性を付加するという意味合いも込められているだろうが、他方では環境負荷に配慮した形態であるともいわれている。
例えば、四角形と球形では、同じ体積の場合、球形の方が表面積が小さくなる。
表面積が小さくなるという事は、太陽の光を受ける面積が小さくなるという事なので、当然熱負荷も下がる。
この原理を利用して、ロンドン市庁舎では、壁面を卵のような曲面で構成することによって、建物の表面積を可能な限り小さくし、エネルギー効率を最大化しているという見方もある。
また、卵型の南側部分は、上層に行くにつれ少しずつ前に張り出した構成となっているが、これによって、夏は高い位置から降ってくる強い日差しを遮断しつつ、冬は低い位置から差す日差しを適度に取り込むことができるようになっている。
このように、ノーマン・フォスターは、ただ建築を目立つ形にするのではなく、しっかりと環境にも配慮した設計を行っているため、世界中から高い評価を得ているのである。
全長500mに及ぶ有機的な螺旋階段
ここまでは、ロンドン市庁舎の外観的な部分しか解説してこなかったが、実はこの建築の最大の魅力は、内部空間にあると言っても過言ではない。
上の写真の通り、建物内部には、全長約500mにも及ぶ有機的な螺旋階段が設置されているのである。
フランク・ロイド・ライトの「グッゲンハイム美術館」を彷彿とさせるような螺旋構造は、10階建てのロンドン庁舎を1階から10階まで貫き、ダイナミックな空間体験を生み出している。