建築

アスペン美術館【坂茂】

アスペン美術館とは?

photo by Bkthomson16/CC 表示-継承 4.0/

アスペン美術館は、アメリカでもっとも有名なスキーリゾート地であるコロラド州に建つ、現代美術館である。

設計を務めたのは、国内外で活躍する日本の建築家坂茂である。

設計コンセプト「アスペンらしい建築」

このコンセプトを基に、スキー体験をするかのような動線計画によって、本美術館は設計された。

たけひこ
たけひこ

そんな、アスペン美術館の特徴を今回ご紹介します!!

坂茂とは?

  • 1957 東京に生まれる
  • 1977 南カリフォルニア建築大学
  • 1980 クーパー・ユニオン建築学部
  • 1982 磯崎新アトリエに在籍
  • 1985 坂茂建築設計設立
  • 1999 ニューヨークに事務所開設
  • 2004 パリに事務所開設
  • 2014 プリツカー賞受賞

坂茂とは、日本・パリ・ニューヨークに3つの設計事務所を持ち、世界中で活躍されている建築家である。

代表作としては、「静岡県富士山世界遺産センター」「ポンピドゥーセンターメス」「紙のカテドラル」などが挙げられる。

坂茂と紙管

坂茂氏は、トイレットペーパーの芯などに用いられる「紙管」を建築に用いることでも知られている。

「紙管」は、紙製であるためどこでも生産できるという利点を生かし、被災地などの仮設建築に利用されている。

建築の特徴

photo by Jimmy Baikovicius/CC BY-SA 2.0/

アスペン美術館の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 街と調和する外観
  2. スキー体験的動線計画
  3. 木が編み込まれたような格子状の外観
  4. 3層吹き抜けの大階段
  5. 大空間をつくる木造スペースフレーム
  6. 随所に用いられた紙管

街と調和する外観

photo by Jimmy Baikovicius/CC BY-SA 2.0/

この敷地の周辺には、レンガや木のファサードでできた四角形の茶色を基調とした建物がたくさん並んでいた。

そのため、坂茂氏はこのように考えた、、、

この街並みのコンテクストと調和するような建築を建てよう!

この考えによってできた建物は、単純な箱型で、木材を編んだような茶色い外観となっている。

木が編み込まれたような格子状の外観

アスペン美術館の特徴的な外観をつくる、帯状の木材を格子状に編み込んだようなファサード。

実は、これは木材ではなく、「プロディマ」と呼ばれる再生紙を接着剤で固め、表面に薄いベニヤ板を張った材料になっている。

ここで木材を使用しなかったのは、外部に露出するために必要な耐久性能と不燃性能の条件が厳しかったためである。

スキー体験的動線計画

スキーリゾート地として有名なアスペン。敷地の周辺の建物の屋上からは、アスペンの山々とスキーゲレンデが見渡せる。

これを見た坂茂氏は、スキー体験をするような動線計画を持つ美術館にしようと考えた。

一般的な美術館の動線計画
  • 道路入口ロビーギャラリー
本美術館の動線計画
  • 道路 入口展望エレベータ屋上下階ギャラリー または
  • 道路 外部大階段屋上下階ギャラリー

スキーでは、まずリフトで山の頂上に登り、周囲の景色を楽しみ、スキーで滑っていく。

本美術館でも、まず外部階段か展望エレベータによって屋上まで登り、周囲の景色を楽しみ、下の階にあるギャラリーへと降りていく。

このスキーと同様の体験ができる構成によって、アスペンらしい美術館が完成した。

3層吹き抜けの大階段

前面道路の格子状のファサードに沿って、内部には3層吹き抜けの大階段が設けられている。

この大階段を屋上まで上がってから、下階にあるギャラリーに降りていく構成となる。

さらに、この大階段は、1/3程が内部空間、ガラスカーテンウォールを挟んで2/3程が外部空間となっている。

ここでは、木や紙管などに包まれた暖かい空間になりつつ、光のあふれる空間ともなっている。

大空間をつくる木造スペースフレーム

photo by Jimmy Baikovicius/CC BY-SA 2.0/

3階の天井には、大空間を作り出すために、木造のスペースフレームが採用されている。

スペースフレーム

スペースフレームとは、トラス架構などを連続させてつくられる「立体的な骨組み」のことである。

スペースフレームは、写真のように、工場などで柱の少ない大空間を必要とするときに用いられる。

3階はカフェスペースとなっているが、半分が屋外、もう半分は屋内空間になっている。

その屋内をフレキシブルな空間とするために、木造のスペースフレームが用いられ、ファサードの木質的な素材と呼応して、柔らかい空間を作り出す。

さらに、この木造スペースフレームは、金物を使用しないでつくられている。

これは、「せっかく木造架構を考えても、金物を使用したら台無しになる」という、坂茂氏の細部に対するこだわりの現れである。

随所に用いられた紙管

photo by Jimmy Baikovicius/CC BY-SA 2.0/

坂茂氏が建築に頻繁に用いる「紙管」。

アスペン美術館でもこの「紙管」が随所に用いられている。

例として、階段横の内壁には、ガムテープの芯のような紙管が敷き詰められており、木材のように暖かい空間をつくっている。

photo by Jimmy Baikovicius/CC BY-SA 2.0/

さらに、内部にあるベンチにも紙管が用いられている。

紙管は、厚さによっては建物の構造材としても利用できる素材であるため、このようなベンチへの利用も可能になっている。

建築概要

  • 所在地:アメリカ コロラド州
  • 竣工 :2014年8月
  • 用途 :美術館
  • 構造 :RC造 木造 S造
  • 高さ :16.027m
  • 階数 :地下1階 地上3階
  • 設計 :坂茂建築設計
  • 構造 :KL&A Inc.
  • 施工 :Turner
  • 設備 :Beaudin Ganze Consulting Engineers

施設概要

最後に・・・

以上がアスペン美術館の特徴でした。

街並みのコンテクストと調和した外観を作り出す木質ファサードと、屋上階天井の木造スペースフレームに包まれた、魅力的な建築だったと思います。

たけひこ
たけひこ

アスペンを訪れる際は是非、アスペン美術館に立ち寄ってみてください!!

ご覧いただきありがとうございました。

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