建築

ツォルフェライン・スクール【SANAA】

ツォルフェライン・スクールとは?

photo by August Fischer/CC BY-ND 2.0

ツォルフェライン・スクールは、ドイツのエッセンという街に建つ、デザインとマネージメントの学校である。

ツォルフェライン

ツォルフェラインとは、かつて炭坑で栄えたエッセンの街に存在する工業地帯の名称である。

ツォルフェライン一帯は現在、ユネスコの世界遺産として登録されている。

設計を務めたのは、日本の建築家SANAA。

ツォルフェラインには、炭坑のためにつくられた巨大な建物が多く残り、それらの建物と炭坑遺跡が作り出す景観に調和するよう巨大なキューブ状の建物が計画された。

たけひこ
たけひこ

そんな、ツォルフェライン・スクールの特徴を今回ご紹介します!!

SANAAとは?

  • 1995 SANAAを設立
  • 1996 日本建築学会賞作品賞受賞
  • 2006 日本建築学会賞作品賞受賞
  • 2010 プリツカー賞受賞

SANAAは、建築家妹島和世と西沢立衛によって結成されたユニットであり、世界的に権威のある賞「プリツカー賞」を受賞し注目を集めている。

代表作としては、「金沢21世紀美術館」「ルーブル・ランス」などが挙げられる。

ガラスやアルミパネル、パンチングメタルなどスタイリッシュな素材を多用し、周囲と溶け込むような建築を多く手がける。

建築の特徴

photo by Spyrosdrakopoulos/CC 表示-継承 4.0

ツォルフェライン・スクールの建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 一辺約35mのキューブ状建物
  2. 断熱材のないコンクリート打ち放し
  3. 断熱を担うアクティブインシュレーション
  4. 内部に多様な空間をつくる窓群
  5. 天井高の異なる各層と3本のコア
  6. 屋根に穴が開けられたルーフガーデン

一辺約35mのキューブ状建物

photo by Rainer Halama/CC 表示-継承 2.5

ツォルフェライン・スクールは、1辺が約35mのキューブ状の形態をしている。

これは、かつて炭坑のためにつくられた「外装がレンガの大きな建物」と調和するための構成。

SANAAは「ルーブル・ランス」のように、周囲の景観と調和する低層の建築が多いが、ここでは高層の建物が作り出す印象的な景観と調和するために、大きな建物をつくっている。

断熱材のないコンクリート打ち放し

photo by Hpschaefer/CC 表示-継承 3.0

ツォルフェライン・スクールは、内外共に、コンクリート打ち放しになっている。

コンクリート打ち放し
安藤忠雄作「住吉の長屋」

コンクリート打ち放しの代表作として安藤忠雄設計の「住吉の長屋」が挙げられる。

しかし、コンクリート打ち放しだと、断熱材を入れなければ、夏は暑く、冬は寒い空間になってしまう。

実際に「住吉の長屋」でも、断熱材がないため、住居としてはかなり過酷な熱環境となっている。

しかし、ツォルフェライン・スクールでは、地熱を利用したアクティブインシュレーションという断熱を担う仕組みが用いられている。

断熱を担うアクティブインシュレーション

photo by David Kasparek/CC BY 2.0

本施設の外壁には、「直径25㎜のパイプ」が400㎜間隔でコンクリート内に打ち込まれている。

このパイプの中に、地熱で温められた地下水から「熱交換した真水」を流すことで、断熱効果が得られ、内部の熱環境を調節している。

この地熱を利用したアクティブインシュレーションによって、断熱層を必要としないため、薄いコンクリートの壁をそのまま内外装の仕上げとすることができてる。

内部に多様な空間をつくる窓群

photo by August Fischer/CC BY-ND 2.0

本施設の最大の特徴である、大きな壁面に無数に設けられた四角い窓群。

この窓群は、室内の図書館やオフィスなどの用途、外に見える風景などを考慮した配置になっている。

また、大きな開口をひとつ設けるのではなく、四角い窓を複数配置することよって、内部には光であふれる場所や暗く落ち着いた場所など、多様な空間がつくられている。

この多様な空間性によって、大学で行われる様々な活動に対応しようとした。

天井高の異なる各層と3本のコア

photo by August Fischer/CC BY-ND 2.0

建物内部の構成としては、各層で用途に合わせて天井高が異なり、それを階段やエレベータを収める3本のコアなどで支えている。

写真は2階のスタジオであるが、天井高は約10mほどある大空間になっている。

また、10m近い1層分の長さを持つカーテンが右端にあり、カーテンを閉めると無数の四角い光が浮かび上がる。

屋根に穴が開けられたルーフガーデン

photo by Alena Hanzlová/CC 表示-継承 3.0

屋上階(5階)は、屋根にも穴が開けられており、窓などは設けられていない。

さらに、写真にある手すりに囲われた内側は吹き抜けとなっており、下の階(4階)には6つの中庭空間がつくられている。

建築概要

  • 所在地:ESSEN GERMANY(ドイツ)
  • 竣工 :2006年7月
  • 用途 :デザイン学校
  • 構造 :鉄筋コンクリート造
  • 高さ :34m
  • 階数 :地下1階 地上4階 塔屋2階
  • 設計 :妹島和世+西沢立衛/SANAA
  • 構造 :SAPS / Sasaki and Partners
  • 施工 :SCHÄFER BAUTEN GmbH
  • 設備 :TRANSPLAN / TRANSSOLAR

最後に・・・

以上がツォルフェライン・スクールの特徴でした。

周囲の景観に合わせた大きな建物と、その大きな壁面に設けられた無数の窓が作り出す多様な内部空間が特徴的な建築だったと思います。

たけひこ
たけひこ

是非一度、ドイツのツォルフェライン・スクールに訪れてみてください!!

ご覧いただきありがとうございました。

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