【建築紹介111】由布院駅舎:磯崎新

目次

由布院駅とは?

由布院駅は、温泉地として有名な湯布院町の玄関口となるように建てられた駅舎である。

設計を務めたのは、日本のみならず世界的にも著名な建築家「磯崎新」。

単なる通過点としての駅舎ではなく、街の歴史・文化を伝える役割を持ちながら、なおかつ湯布院町のシンボルともなる建築が要求された。

これらの要求に対して磯崎は、礼拝堂をイメージした大きな吹き抜けを持つ魅力的な駅舎を完成させている。

磯崎新とは?

photo by Manel Armengol/ CC 表示-継承 2.0
  • 1931 大分県大分市に生まれる
  • 1954 東京大学工学部建築学科卒業
  • 1967 日本建築学会賞作品賞
  • 1975 著書『建築の解体』
  • 2019 プリツカー賞受賞

磯崎新は、「建築の解体」を始めとする著書や実際の建築物によって、自身が持つ建築論を世に発信し続けている建築家である。

代表作としては、「北九州市立美術館」「ロサンゼルス現代美術館」などが挙げられる。

2019年には、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞し、長年の功績が世界中で再認識された。

建築の特徴

由布院駅の建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. 礼拝堂をイメージした構成
  2. 黒塗りの木材を使用した外観
  3. 高さ12mの吹き抜けを持つ中央コンコース
  4. 左右に伸びるヴォールト屋根
  5. ホーム端にある足湯

礼拝堂をイメージした構成

由布院駅はイタリアの礼拝堂をイメージして設計されたと言われているが、このことを知ると随所に礼拝堂的な構成が見えてくる。

例えば、中央のヴォールト屋根と大きな吹き抜けを持つ塔はまさに礼拝堂的である。

さらに面白いのが、この構成を黒塗りの木材でつくり上げているということである。

つまり、西洋的要素と日本的要素の融合もこの建築の魅力の一つであるのだ。

黒塗りの木材を使用した外観

先ほど述べたようにこの建築は木造で建てられており、その外壁をさらに黒く塗っているため落ち着いたクールな外観が特徴的である。

木造を採用したのは、湯布院町という自然豊かな街という背景を考慮してのことだと言う。

一方で、黒い外観とは対照的に内観は白色を基調としている。

この両者の対比も意外性があり、魅力的な空間の要素となっている。

高さ12mの吹き抜けを持つ中央コンコース

駅舎中央にそびえたつ塔の内部空間は、高さ12mの大きな吹き抜け空間となっている。

さらに、その空間は集成材による交差ヴォールト屋根によって覆われており、光の落ちる豊かな内部空間が形成されている。

実はこの塔、計画当初は約20mの高さで設定していたが、周辺の自然環境や条例などを考慮した結果、12mまで高さが抑えられたという背景も持つ。

左右に伸びるヴォールト屋根

中央の塔(コンコース)を基点に左右に伸びるヴォールト屋根。

この下の空間は、駅事務室と待合室になっている。

この待合室は、待合場としてはもちろんイベントスペースや展示スペースとして活用できるくらい大きな空間として確保されている。

これによって、駅特有の「待ち時間」というものを有効活用できる駅舎となっている。

ホーム端にある足湯

photo by ほっきー/ CC 表示-継承 4.0

由布院駅には、由布という温泉地に建つ駅舎ということから、ホームの端に足湯が設置されている。

この足湯によっても、駅特有の「待ち時間」というものを有効的かつ豊かな時間にすることができる。

建築概要

  • 所在地:大分県大分郡湯布院町
  • 竣工 :1990年12月
  • 用途 :駅舎
  • 構造 :木造枠組壁工法
  • 階数 :地上1階
  • 設計 :磯崎新アトリエ
  • 施工 :大林組
  • 構造 :川口衞構造設計事務所
  • 設備 :環境エンジニアリング

最後に・・・

以上が由布院駅の建築的特徴でした。

湯布院町という街との調和や、礼拝堂をイメージしたという荘厳な空間など、今までにないような駅舎の構成が魅力的な建築になっていたと思います。

是非一度、由布院駅を訪れてみてください!!

ご覧いただきありがとうございました。

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