【建築解説】日生劇場(日本生命日比谷ビル)|村野藤吾

みなさんこんにちは、本サイト「建築LIFE」を運営しているたけです。

今回は、昭和期に建てられた複合施設「日生劇場(日本生命日比谷ビル)」の建築的特徴を解説していきたいと思います。

村野藤吾の代表作です。

是非最後までご覧ください。

目次

日生劇場(日本生命日比谷ビル)の概要

photo by Wpcpey/CC 表示 4.0
  • 設計:村野藤吾
  • 住所:東京都千代田区有楽町
  • 竣工:1963年
  • 用途:オフィスビル・劇場
  • URL:公式ページ

日生劇場は、オフィスと劇場という全く異なる機能を併設した、日比谷公園沿いに建つ複合施設である。

建物全体の名称が「日本生命日比谷ビル」、その中に入る劇場の名称が「日生劇場」となっている。

建築の設計は、昭和期に活躍した日本人建築家「村野藤吾」が担当。

建築の外壁は全面的に粗目の花崗岩で覆われており、モダニズムが主流だった時代に建てられた建築とは思えないような荘厳な佇まいをした建築物となっている。

設計者:村野藤吾とは?

  • 1891 佐賀県に生まれる
  • 1910 小倉工業学校機械科卒業
  • 1910 八幡製鐵所に入社
  • 1913 早稲田大学理工学部電気工学科入学
  • 1915 同大学の建築学科に転学
  • 1918 渡辺節建築事務所入社
  • 1929 村野建築事務所設立
  • 1949 村野・森建築事務所に改称
  • 1984 逝去

村野藤吾は、昭和期に活躍した日本を代表する建築家である。

代表作としては「新歌舞伎座」「日生劇場」「丸栄本館」などが挙げられ、ホテル・劇場・教会・美術館など多種多様な建築作品を残している。

また、村野藤吾は特に百貨店などの商業施設を数多く手がけたことでも知られており、現在の商業建築界に多大なる影響を与えたと言われている。

日生劇場(日本生命日比谷ビル)の建築的特徴

劇場とオフィスを併設した複合施設

photo by Wiiii/CC 表示-継承 3.0

日生劇場(日本生命日比谷ビル)は、劇場とオフィスという全く異なる機能をひとつの建物に併設した珍しい複合施設である。

しかも、劇場は不特定多数の人が集まる場だが、オフィスは特定の人しか集まらない場であるため、両者はまったく対照的な機能特性を持っている。

この機能的条件に対して村野藤吾は、1階部分を街に対して開かれたピロティとすることで、2つの機能の調和を図っている。

ピロティ空間として開放された1階

ご覧の通り、日生劇場のファサードは全体的に重厚感のある外壁で覆われているのだが、1階部分だけは柱のみのピロティ空間になっていることがわかる。

1階というのは、人と建物が最も関わる位置である。

その1階を開放することによって、あらゆる機能や人々を受け入れられるおおらかな空間を作り出したというわけだ。

商業的観点から言うと1階は最も重要なエリアなのだが、そこをあえて特定の機能を持たないピロティにしているというのは、都市計画的にもかなり大胆な計画である。

外壁全体を覆う粗目の花崗岩

日生劇場はなんといっても、その重厚感のあるファサードが印象的である。

日生劇場が建てられたのは1963年。建築界ではコンクリートが主流の時代だ。

そんな時代のさなかに、村野藤吾は石材を用いたこれほど重厚感のある建築物を作り出しているのである。

今更になって西洋の歴史主義に戻るのかと批判的な意見もあったようだが、1964年には日本建築学会賞作品賞を受賞しており、建築界における日生劇場の評価は総合的に高かったことがわかる。

陰影を作り出すバルコニー

粗めの花崗岩によってつくり出された建物の質感、陰影のあるファサードをより強調しているのが、規則的に設けられたバルコニー空間である。

現代の建物(特にオフィスビル)では、大体の場合、ファサードの最前面にガラス面を設置してしまう。

もちろん悪いことではないのだが、これだとファサードに陰影が生まれにくくなり、のっぺりとした印象を受ける。

一方で、日生劇場では、ガラス面よりも前面にバルコニーを設置することによって、堀の深いファサードを作り出し、風格のある佇まいを演出している。

豪華絢爛な内部空間

photo by Wpcpey/CC 表示 4.0

上の写真は、ガラスと柱で覆われた1階玄関ホールの様子である。

ご覧の通り、大理石の床や幾何学的な模様でできた照明、赤い絨毯が引かれた螺旋階段など、豪華絢爛な空間構成となっている。

ちなみに、村野藤吾は階段建築の名手としても知られており、村野藤吾建築では度々、有機的な曲線を描く螺旋階段が登場する。

日生劇場にももちろん存在しているので、訪れる際には注目しておきたい。

以前はライトの旧帝国ホテルが隣接していた

日生劇場の竣工当時、すぐ隣にはフランク・ロイド・ライトが設計した「帝国ホテル」が建っていた。

現在は、ライトの旧帝国ホテルは解体され、玄関部分など建物の一部が愛知県犬山市の「明治村」に保存されているらしい。

とはいえ、隣接する帝国ホテルを村野藤吾が意識しないわけもなく、外壁の粗目の素材感などは帝国ホテルを参考にしたのではないだろうか。

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今回はこれで以上になります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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