バラハス空港ターミナル4とは?
- 設計:リチャード・ロジャース
- 住所:スペイン・マドリード
- 竣工:2005年
- 用途:空港
バラハス空港ターミナル4は、スペインの首都マドリードに位置する「バラハス空港」の第4ターミナルとして、2005年に竣工した空港建築である。
ターミナル4の設計は、イギリスを代表する世界的建築家「リチャード・ロジャース」が担当。
配置計画的には、直線ボリュームを横に並べた非常にシンプルな全体構成となっているが、立体的にみると、波のようにうねる屋根が特徴的な外観を示している。
さらに、その波形屋根は、内部に複雑な三次曲面の天井を生み出し、包み込むような優しい空間を生み出している。
一方で、この有機的な形態は、一つのユニットを連続する形で生み出されているため、増改築にも容易に対応できるようになっている。
バラハス空港ターミナル4の建築的特徴
スペイン・マドリードに建つ空港建築
スペインの首都・マドリードの北東端に位置する国際空港「バラハス空港」。
バラハス空港の2022年における国際線旅客数は世界第7位に位置しており、世界を代表する国際空港としても知られている。
バラハス空港の開港は1931年まで遡るが、その開港から約70年経った2005年に、世界的建築家「リチャード・ロジャース」の手によってバラハス空港ターミナル4は完成した。
リチャード・ロジャースの代表作
バラハス空港の設計を務めたのは、イギリスを代表する建築家「リチャード・ロジャース」である。
リチャード・ロジャースは、1977年に完成した「ポンピドゥー・センター」によって建築界にその名を轟かせ、その後も世界各地で数多くの前衛的な建築作品を手がけたことで知られる建築家だ。
構造や設備をファサードに表出させた機械的なデザインが特徴的な「ハイテク建築」のパイオニアとしても知られており、現代建築界を牽引した建築家としても知られている。
そんな、ハイテク建築家リチャード・ロジャースが設計したバラハス空港のデザインは、やはり、構造や設備が主役のようにも見える革新的なものとなっている。
直線状ボリュームの連なり
空港を利用したことのある方はわかると思うが、空港ターミナルは非常に迷いやすい。
搭乗口・待合場・保安検査場・フードコートなど、数えきれないほど様々な機能が入り混じる施設であるため、内部空間が複雑化してしまうのは致し方ない事ではある。
しかし、バラハス空港ターミナル4では、そんな問題を配置計画の単純化によって克服している。
上の航空写真を見るとわかる通り、バラハス空港ターミナル4は、直線状ボリュームを並列に並べるというシンプルな操作のみで全体計画が行われているのである。
一定のリズムで波打つ屋根
バラハス空港ターミナル4最大の特徴は、一定のリズムで規則的に波打つ屋根形状にある。
外観を見ただけだと、この波形屋根にどのような意味があるのかは理解しずらい。
しかし、この波形屋根によって自動的に生み出される内部空間を見ると、リチャード・ロジャースがどのような意図を持ってこのような特殊な形態を採用したのかがなんとなくわかってくる。
複雑な三次曲面をした内部空間
バラハス空港ターミナル4の外観に顕著に現れた波形屋根の形態は、内部空間では上の写真のような有機的な三次曲面天井を浮かび上がらせている。
さらに、この有機的な天井の仕上げには「竹ルーバー」が用いられており、その柔らかい形態と優しい素材感によって、親しみ深いターミナル空間を生み出している。
また、天井の中央部分には、トップライトやレフ版付き照明など、用途別に適した採光・照明方法が採用されている。
ユニット化された建築
有機的な屋根形状によって豊かな空間が生み出されているバラハス空港ターミナル4だが、実はこれらはすべて、ある一つのユニットによって生み出されている。
つまり、一つのシステム化されたユニット(構造・設備・意匠)を連続するという単純な操作によって、この豊かな空間は生み出されているわけである。
このような建築のユニット化は、数年後・数十年後に行われる可能性のある「増改築」の際に本領を発揮する。
この柔軟性の高さも、バラハス空港ターミナル4の特徴となっている。