【建築紹介92】ポンピドゥー・センター【レンゾ・ピアノ+リチャード・ロジャース】

目次

ポンピドゥー・センターとは?

ポンピドゥー・センターは、フランスパリの中心部に建つ美術館や図書館、カフェなどからなる複合文化施設である。

設計を務めたのは、完成当初はまだ無名であった「レンゾ・ピアノ(イタリア)」と「リチャード・ロジャース(イギリス)」による建築家ユニット。

「今までにない画期的な建築物を」

このようなフランス政府の要請に対して、構造物や設備等をすべて建物の表層に配置し、デザインとして利用するという大胆な構成がとられている。

レンゾ・ピアノとは?

photo by Columbia GSAPP/CC 表示 2.0

レンゾ・ピアノの経歴

  • 1937年 イタリア・ジェノバに生まれる
  • 1964年 ミラノ工科大学卒業
  • 1965年 スタジオ・ピアノ設立
  • 1971年 ピアノ&ロジャース共同設立
  • 1981年 レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ設立
  • 1989年 RIBAゴールドメダル受賞
  • 1993年 プリツカー賞受賞
  • 2008年 AIAゴールドメダル受賞

レンゾ・ピアノは、1970年代に登場した革新的な建築思潮「ハイテク建築」のパイオニアとして知られる、イタリア・ジェノバ出身の建築家である。

1971年にイギリスの建築家・リチャード・ロジャースとともに参加した「ポンピドゥー・センター」のコンペで1等を獲得し、これまでの常識を覆すようなハイテク建築を手がけたことで、レンゾ・ピアノの名は世界に轟いた。

その後も世界各地でユニークな建築作品を数多く手がけ、プリツカー賞やRIBAゴールドメダルといった名だたる建築賞を総なめにしている。

ピアノの代表作としては、出世作である「ポンピドゥー・センター」はもちろんのこと、日本を代表する空港建築「関西国際空港旅客ターミナルビル」や、スイスに建つ「バイエラー財団美術館」など、多種多様な建築作品が挙げられる。

リチャード・ロジャースとは?

photo by National Assembly for Wales/CC 表示 2.0

リチャード・ロジャースの経歴

  • 1933年 イタリア・フィレンツェに生まれる
  • 1937年 イギリスに移住
  • 1954年 AAスクールで建築を学ぶ
  • 1962年 イェール大学大学院修士課程修了
  • 1962年 チーム4 設立
  • 1967年 チーム4 解散
  • 1971年 ピアノ&ロジャース 設立
  • 1977年 リチャード・ロジャース・パートナーシップ 設立
  • 1985年 RIBAゴールドメダル受賞
  • 2007年 プリツカー賞受賞
  • 2021年 逝去(88歳)

リチャード・ロジャースは、世界的に権威のある建築賞「RIBAゴールドメダル」や「プリツカー賞」などを総なめにする、イギリスを代表する建築家である。

1971年に行われた「ポンピドゥー・センター」のコンペで、レンゾ・ピアノとともに最優秀賞を受賞したことで建築界にその名を轟かせ、その後も世界各地で数多くの前衛的な建築作品を手がけている。

彼の代表作としては、建築界に革命をもたらした「ポンピドゥー・センター」や、ハイテク建築の象徴「ロイズ・オブ・ロンドン」、前衛的なドーム建築「ミレニアム・ドーム」などが挙げられる。

代表作のラインナップからもわかる通り、1970年代に登場した建築思潮「ハイテク建築」のパイオニアとして知られる建築家である。

ちなみにハイテク建築とは、モダニズムが機能主義のモチーフとした「機械」を、建築の意匠にも採用した建築様式のことであり、構造や設備といった通常は裏に隠す要素をファサードに表出させるという意匠的特徴がみられる。

建築の特徴

ポンピドゥーセンターの建築的特徴としては、次のような点が挙げられる。

  1. フランス大統領の構想から生まれた建築
  2. 歴史都市パリの中心部に建つ建築
  3. 街並みからの突出
  4. 建物と同等規模の広場
  5. デザインとしての設備管
  6. 柱のない大空間
  7. 象徴となるチューブ状の動線

フランス大統領の構想から生まれた建築

フランス第19代大統領「ジョルジュ・ポンピドゥー」
photo by André Cros/CC 表示 4.0

1968年フランスで起こった、学生を中心とする反体制運動「五月革命」。

ポンピドゥーセンターは、この運動の影響を強く受けて建てられた施設である。

「衰退したフランスを芸術文化によって復活させよう」

五月革命の翌年、大統領に就任したジョルジュ・ポンピドゥーは、このような構想を基に芸術文化の中心となるような施設の建設を決めた。

そこで建てられたのがポンピドゥーセンターであり、施設の名称に大統領の名前が入っているのもこの構想が原因となっている。

歴史都市パリの中心部に建つ建築

ポンピドゥーセンターは、「ルーブル美術館」や「ノートルダム大聖堂」などがある歴史都市パリの中心部に建っている。

この敷地を決定したのも大統領であるポンピドゥーであり、

  • モニュメント性を高められる場所
  • アクセスの良さ

これらのことを考慮したうえで敷地が決められたという。

街並みからの突出

さらに、ポンピドゥーセンターは、周辺の街並みより高さが倍ほど高くなっており、街から突出している。

パリでは大体30メートル程の高さ制限があったが、ポンピドゥーセンターは大統領がその制限をなくしたことによって、高層の建物となっている。

これによって、モニュメント性を高めようという狙いである。

実は、ノートルダム大聖堂など、パリのモニュメントとなっている建物はほとんどが街並みから突出している

建物と同等規模の広場

photo by Thomas Roessler/CC 表示-継承 3.0

大統領は、ポンピドゥーセンターの設計者を選ぶ国際コンペで「広大な広場を設けること」というような条件を出していた。

国際コンペでこの広大な広場をしっかりと設計案に取り入れていたのが、レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースによる案だけであった、という噂もある。

パリには大きな広場はいくつもあるが、ほとんどがある特定のモニュメントを見るために設けられたものである。

しかし、ポンピドゥーセンターの広場は、モニュメントのためではなく人々が集まるための場所として計画されているというのが特質する点である。

デザインとしての設備管

ポンピドゥーセンターという建物自体の特徴としては、ファサードに表出した設備配管が挙げられる。

通常内側に隠す設備配管を、ここでは大胆に表に出して、外観のデザイン要素として利用しているのである。

この構成をとった理由としては、次のような点が挙げられる。

  • 今までにないデザインを求めたため
  • 内部空間を広くとるため

当時この構成は画期的なアイデアであったが、「工場みたいだ」といった批判も当然多くみられた。

柱のない大空間

設備配管が外に出されたことで広くなった内部空間は、構造的にも広くなるような工夫がなされている。

実は、ポンピドゥーセンターの内部には柱がなく、外側の構造体だけで「160ⅿ×50ⅿの床」が支えられているのである。

この大空間を実現しているのが、次の二つの要素である。

  • ブレースのついた鉄骨の柱
  • 50ⅿに及ぶトラス梁

ここで用いられているトラス梁は、元々19世紀のドイツのエンジニアが考えた「橋梁システム」を参照しており、それをポンピドゥーセンターでは何層にも重ねている。

象徴となるチューブ状の動線

ポンピドゥーセンターのファサードをさらに特徴づけている「チューブ状のエスカレーター」。

このように動線がチューブ状のガラスによって囲われていることで、単調なファサードに動きがもたらされている。

さらに、ガラス張りになっていることで、パリの街並みを望みながら上階へ上がるという魅力的な体験も可能となっている。

建築概要

  • 所在地:Place Georges-Pompidou, 75004 Paris
  • 開館 :1977年
  • 用途 :美術館、図書館
  • 構造 :鉄骨造
  • 階数 :地上7階、地下3階
  • 設計 :レンゾ・ピアノ、リチャード・ロジャース

施設概要

  • Tel    :050-5541-8600
  • 営業時間:11時~21時
  • 開館日 :毎火曜日と5月1日は休館 
  • URL  :ホームページ(日本語)
  • 料金  :通常料金 : 14 € 割引料金 : 11 € +1 € 管理費
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